第四章~医者?~
ハァ・・・だるい・・・
やわらかい日差しの中、意識が薄れそうになった。
第四章~医者?~
「ハァ・・・ハァ・・・」
熱い吐息が漏れる。
「ツバサ君?息・・・荒いよ?大丈夫・・・?」
黄色い潤んだ瞳が、オレを覗き込む。
「ハァ・・・あ・・・うん・・・平気だよ?」
とは言っても、オレの目に写る景色は、ユラユラとゆれている・・・
(ヤバイかもしれない・・・)
「そう?大丈夫そうには見えないんだけど・・・?」
心配そうにシルキーはオレを見つめた。
「平気だよ・・・平気・・・・・・だいじょう・・・ぶ・・・・・・」
(ドサッ)
そこで、オレの意識が途切れた。
「ツバサ君?ツバサ君!?・・・」
返事はない。聞こえるのは、ハァ・・・ハァ・・・という吐息だけだった。
(サアァァ・・・)
シルキーは、一気に血の気が引いてくのを感じた。
「医者ァァァ!!!」
悲鳴に近い、シルキーの声が響く・・・
(バサッバサッ)
シルキーは火炎鳥の姿になり、ツバサを背に乗せ、空を飛んでいた。
だが、まだ上手く力を使えないシルキーは、近くの街に着く前に、もとの姿に戻ってしまった。
「うう~・・・そんなぁ~・・・どうしたらいいのぉ・・・?」
シルキーの瞳からは、ボロボロと、涙が滴り落ちた。
「ツバサ君が死んじゃうよぉ!お医者さあぁぁん!」
シルキーは、ヒックヒックと喉を震わせ、必死に叫んだ。
「医者を探しているの?」
そこにいたのは、
ストレートの金髪を肩まで伸ばし、シルキーを写す瞳は、
深い緑に染まっている。
とても神秘的な女性だった。
「ヒック・・・だぁれ?うっあなた?」
声を絞り出し、シルキーは聞いた。
「私はラルド=サイレント
学者 兼 医者よ」
ラルド、と名乗る女性はフフッと微笑むと、横になっている
ツバサの額に手を当てた。
「すごい熱・・・放っておいたら危ないわね。」
微笑んだのとは逆に、今度は、苦虫を噛み潰したような表情をして、
シルキーを見た。
「あなた、名前は?それと、この子の名前。」
シルキーは、ラルドを見て、真剣な顔つきで名乗った。
「あたしはシルキー=オリビアです。
こっちは、ツバサ。名字は、教えてもらっていません。」
「そう。シルキーちゃんにツバサちゃんね?
状況は大体分かったわ。私の家へ来なさい。」
そう言うと、ラルドは、ツバサを抱き上げ、歩き出した。
「(ツバサちゃん?)あっありがとうございます!!」
ラルドがツバサの事を女の子のように呼んだ事を、シルキーは不思議に思ったが、
ツバサの事で必死だったシルキーは、何も聞かずに、
ラルドの後を着いていった。
そこは、目指していた街の外れにある、かなり立派な家だった。
「ここ?ですか・・・?」
「ええ。そうよ。そしてシルキーちゃん?悪いけど、
ツバサちゃんをベットまで運んでくれないかしら?色々と準備があるからね。
結構重症だし、なるべく、手早くしたいのよ。ベットは、
玄関を上がって、右側に並んでいる二つの部屋の左側よ。お願いね。」
ラルドはそう言って、シルキーにツバサを託すと、ツカツカと歩いていき、
ここから見える、一番奥の部屋へ入っていった。
「それにしても広いなぁ。
って、そんな事いってる場合じゃなかった!急がなきゃ!」
ツバサを抱き直し、シルキーは、ラルドに言われた通りの部屋へ、ツバサを運んだ。
「ほえぇ・・・なんだかちょっとなぁ・・・」
その部屋は、病院の治療室と言ったらいいのか、謎の液体や道具などが、
部屋のあちこちに、おいてあった。
整頓されていて、清潔だし、標本や、そういった類いの物が置いてある訳ではないが、
なんかちょっと・・・正直言ってかなり不気味だった。
そこにあったベットにツバサを寝かせ、シルキーはその隣にあったイスに腰掛けた。
ツバサの様子を見ると、相変わらず、荒く息をしていた。
「ツバサ君・・・」
(ガチャッ)
ドアが開く音が響いた。
「遅れてごめんなさい。今から、応急処置を施すから、シルキーちゃんは、
外で待っててちょうだい」
ラルドに言われた通り、シルキーは部屋を出た。
(カチカチ)
時計の音が響く中、シルキーはとても不安だった。
ツバサの様子が気になるのもあるが、もう一つ、
ラルドとツバサのいる部屋から、強力な魔力を感じるのだ。
「どうして魔力を感じるんだろ?ラルドさんは、部屋の中でなにをしているのかなぁ?」
ついに我慢仕切れなかったシルキーが部屋の扉をゆっくりと、少しだけ開いた。
「ええっ?」
そこにいたのはさっきまでのラルドとはまた違った、冷酷な目をそたラルドだった。
そして、ツバサの額に手を置き、ブツブツと静かに何かを唱えていた。
「呪文かなぁ?」
その光景は、明らかに、ラルドが魔法を使っているようにした見えなかった。
「何でラルドさんが魔法なんか使っているの・・・?魔法とは、別の何かなのかなぁ?」
その時、
(ドカッ)
「いだっ!」
ラルドが勢い良く開いた扉が、シルキーの顔面にヒットした。
「あら、シルキーちゃん?そこにいたの、ごめんなさい気付かなかったわ。
大丈夫?」
「ふぁい!らいじょーぶれす!」
シルキーの顔は、真っ赤だった。
「・・・・・・舌が回ってないわよ・・・?」
「ツバサちゃん、今は眠っているわ。シルキーちゃん
?様子を見に行ってあげれば?」
「ふぁい!あいがとーございばす!」
相変わらず、舌が回らないシルキー。
「うーん・・・ちゃんと喋れるようになってから、いったらどう?」
しばらくして、シルキーは、気になっていたことを、
聞いてみる事にした。
「ラルドさん、今日はありがとうございました。ですが、
一つお聞きしたい事があるんですが・・・」
シルキーは、正直いうとかなり不安だった。
本当に魔女だったら、自分は、殺されてしまうかもしれない。
「どうしたの?何でも聞いてちょうだい?」
そして、ついにシルキーは、口を開いた。
「あなた、魔女ですか?」
「・・・・・・・・・・・・」
一瞬ラルドの頬がピクッと反応した。
それと同時に、とてつもない殺意を感じた。
すると、ラルドは、まるで蛇のような恐ろしい顔で、シルキーを睨んだ。
「勘がいいわね、小娘」
その一言に場の空気が一瞬で、凍りついた。
四章終