春休み1日目
三題噺もどき―はっぴゃくよんじゅうご。
窓の外は程よく晴れている。
きっと気温も高いのだろう。
夏と勘違いしかねないほどに。
「……」
この部屋にはあまり光は入ってこない。
だから、カーテンを開いたところでほんの少し薄暗い。
まぁ、コレくらいが丁度よく、私は居心地がいい。
「……」
部屋の隅に置かれた机に向かっている。
目の前には壁があり、一面を有孔ボードが覆っている。
フックをかけてカレンダーをかけたり、キーホルダーや缶バッジなどを飾ったりしている。
季節感はあまり気にしていないので、浴衣を着たキャラクターがいたり、和服を着たキャラクターがいたりとさまざまである。もう少し整理したいところだが、そんな気にもなれない。
手の届く高さの位置には、メモなどを貼れるように隙間を開けている。
「……」
そのスペースに何かが入ることはあまりないのだけど。
今日だってそこは空白だ。
貼るようなメモなんてそうないからな……学校があるうちならまだしも、宿題のメモだったり、毎回配られるテスト範囲の一覧だったりを貼っていることはあるけれど。
今日から春休みだから。
「……」
春休みとは言え、軽く宿題は出ているのだけど、それももうほとんど終わっているようなものだから……メモも何もない。
先週の副教科の担任が、今日は自習だから好きなことしてとかあったから……その時にほとんど終わらせてしまった。
「……」
おかげで暇を持て余している。
暇になると、余計な不安が襲って着たり、余計なことを考えたりしてしまうから、好きではない。
何のために春休みってあるんだろうか。
たいした日数もないのに……せいぜい1,2週間くらいだ。ちょっと長めのゴールデンウィークって感じだろうか。
「……」
そのゴールデンウィークって言うのもあまり好きではない。
何せ嫌いな祖母がこちらに来て、好き勝手してくることが確定しているので。
デリカシーの無い、うるさいだけのおばさんなんて誰が好きなんだ……一緒に居てイライラするだけなのに。アレが身内というのがホントに信じられない。
「……」
昨年の、あの事があってから。
尚更そう感じた。
真っ黒な正装を着ないといけなくなったあの時。
「……」
あの祖母という生き物は、私たちとは別の世界で生きているのではないかと思う。田舎の狭い地域でしか生活したことがないから、そうなのかもしれないけれど……。それはそれ。
自分の娘があの状態になっているのに、余計なことしか言わないのは何なのだろう。
義理の息子の位置にある、私の父が……。
どうして、あんな余計なことをぺらぺらと話せるのだろう。
「……」
あの祖母の姉妹もそうだ。
来なくていいと言ったのに勝手に来た上に、帰りは送ってくれだの、あそこにつれていけだの。よくそんなことができる。
ただでさえ嫌いだったのに、更に嫌いになった。
もう二度と、祖母の家に行きたいと思わなくなった。
景色が綺麗でいい場所だったのに。
「……」
その点、一応は他人である、あの子は、一緒に居て苦痛を感じることはない。
何かを話さないと、という、焦燥感に駆られるようなこともない。
一緒に居て何かに気をつかいすぎないといけないという事もない。
程よく、近くに居て、程よく、呼吸がしやすい。
「……」
昨年のあの一週間が開けた後。
下手に気をつかうようなことはせずに、いつも通りにしてくれたのは、あの子だけだった。
それがどれだけ、嬉しかったか。変に気遣われても、泣きたくなるだけだもの。
学校で、そんなことはしたくない。
今でこそ、戻っているけれど、最初の頃は腫れ物扱いに拍車がかかったような状態だった。
「……」
あの子に救われたことは、たくさんある。
あの子を、傷つけたかもしれない事も、ある。
それでも、あの子は変わらずいてくれた。
「……」
「……」
「……」
あーあ。
さっさと春休み終わらないかな。
お題:不安・浴衣・正装




