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隣の席の知らない女子

20年振りくらいに小説を書き始めてみました。

よくある、どこでも見るようなファンタジーの開幕です。

どうぞよしなに。

受験戦争も間際という季節。

単語帳を片手に3年B組の教室に入ると俺の席の隣に知らない女子が座っていた。


「(誰だ? 転校生か? こんな時期に?)」


そんなことを考えつつも俺は自分の席に行く。


「よっす、吉田ー」


なんて気安く声をかけてくるのは我が少ない友人田中角栄(たなかかくえい)

ふざけた名前だとは思うが本人曰く『両親が偉人になって欲しい』と思って付けた名前なのだと。

そう言われてしまうと何も言えない。

いつだって親の心は期待と愛に満ちているものだ。

そんな田中は昨日見たMyTubeが面白かったとかなんとか言っている。

いや、そんなことはどうでもいい。

それよりもっと大きな事件があるだろう。


「田中、あの子は誰だ?」


一応、本人には聞こえないように隣の子を指して尋ねてみる。


「転校生が来るとか何も聞いてないよな?」


「はぁ? 何を言ってるんだ、転校生なんてどこにいるんだよ」


「何を言ってるんだはこっちのセリフだ、俺の隣に座ってる子だよ」


髪はセミロングで毛先は寝癖なのか少しウェーブがかった鴉の濡れ羽色。

少しとろんとした表情でどこを見ているのか分からないが、(はた)から見ている分には美少女に類されるだろう。

というか普通にかわいい。

そんな美少女がある朝いきなり自分の席の隣に座っていたら気になるのも当然だ。


しかしそんな俺を訝しむような目で見る田中は驚くべきことを()かしやがった。


「吉田、まさかお前……佐藤さんのことを言ってるんじゃないよな?」


「佐藤さん……?」


なんだ? まるで知ってて当然とでも言うような口振りじゃないか。


「佐藤さーん、聞いてやってくれよ。吉田のやつ佐藤さんのことを知らなーいとか言うんだぜ?」


おいおい、ずいぶんと距離が近いな? 田中の友達だったか?

いや田中の言い方からして俺も知ってるはずの関係のようだ。

どこかで記憶を失ったか、俺?

などとSF染みたことを考えると隣の席の美少女顔が俺を覗き込んできた。


「私のこと忘れちゃった? 寂しいな」


う、この美少女顔でそう言われると胸に来るものがある。

マジで忘れてるのか?

この受験シーズンにド忘れ癖(しかも隣の席の女子の顔すら忘れるほどの)はキツいぞ!

と焦り始めていたら佐藤さんとやらは何やらペンライトをこちらに向けている


「なんだそれ」


しかし佐藤さんは何も言わずカチリとペンの頭を押し込み、同時にペン先から(まばゆ)い光が発射される。


「まぶしっ!? 何するんだよ!」


「大丈夫? えぇと、吉田くん」


驚いて椅子から転げ落ちた俺に手を差し伸べる佐藤さん。

その手に掴まりつつ俺は質問を投げかける。


「今のは何だったんだ?」


急に目にペンライトを当てられて目がどうにかなったらどうしてくれるんだ。

これから受験も控えているというのに冗談はやめてほしい。


「今の? って何?」


「とぼけないでくれ、今のペンライトだよ」


「覚えてるの?」


きょとんとした顔で佐藤さんが固まっている。


「さすがに今されたことくらい……」

覚えてるに決まってる……と言いかけたところで隣にいる田中は力無く項垂(うなだ)れているのに気付く。

更には教室の他の誰も、先ほどの強烈な閃光に気付いていないかのように過ごしている。


「おかしいな……『記憶痴漢くん』が効かないなんて初めて……」


「記憶痴漢くん……?」


何を言ってるんだ、佐藤さん(この女)は……?


「うん、この記憶痴漢くんを使えば人の記憶を置換できるの。痴漢に遭ったみたいな衝撃だから、『記憶痴漢くん』」


何を言ってるのか分からない。というか痴漢に遭った衝撃ならむしろ記憶に残るだろ。


「おぉー、ナイスツッコミ……!」


「え、俺、口に出てたか!?」


「うん、バッチリ」


「記憶痴漢くんが効かないなら初めましてだね。私はベンデーン座黒星雲(こくせいうん)の第十四惑星プティバセット星からやってきましたシューガです」


「よろしくね、地球人さん」


はは……プティ……? 何だって?

ちっとも分からないし、分かりたくもないが……コイツの言うことが全て本当だとしたら……俺は宇宙人と邂逅(かいこう)したことになるのか?

受験生には少しヘビーじゃないか、この状況……


混乱している俺の横で田中は未だに力無くボーッと突っ立っていた。

はい、ボーイミーツガール回でした。

週に一回は更新できるように頑張ります。

佐藤さんの好きな食べ物はシュガーマーガリンパンです。

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