勇者ご令嬢 レットの物語
星の女神が見守る世界。
その世界の片隅、小さく目立たない村に、レットという若者の男性がいた。
男性には三つ年下の弟ディーがいたが、その弟は年齢にそぐわない見た目と精神をしていた。
大人と呼んでもいい年だったが、とてもそうは見えない。
「にいちゃ! おかえり!」
けれど、レットは自分を純粋に慕ってくれる弟が可愛くて仕方がなかった。
両脇に手をさしこんで高い高いができる体重も、舌足らずな言葉使いも愛おしかった。
とはいえ、いつまでもそのままにはしておけない。
何事もなければ、両親もレットも先にこの世を去るのだから。
残された弟の事を考えれば、何らかの手は打たなければならなかった。
そう思ったレットは、様々な医者に弟を見せた。
しかしどの医者も首を横に振り、原因が分からないとため息をこぼすばかり。
万策尽きたかに思われたが、そんなレットに神様が手を差し伸べた。
星の光の女神が、レットの弟ディーの異変を診て、治す方法があると教えてくれたのだ。
そのためにはディーをつれて、星降りの丘という場所に向かい、次元の歪みに近付かなくてはならないという。
喜んだレットは、さっそくディーをつれて旅に出た。
「喜べ、ディー。今度こそ、お前も俺のように大きくなれるかもしれないぞ」
「ほんとか!? にいちゃ! おれ、おっきくなったらにいちゃみたいになりたい!」
「そうかそうか! でも成長しても俺の事を嫌いにならないでくれよ。兄離れなんて言葉を実感するのはいつになるかな」
「にいちゃを嫌いになんてなるわけないよ! おれ、にいちゃのこと大好きだから!」
ディーは兄と旅ができる事に喜んでいた。
兄であるレットも、ディーの成長に希望が見いだせるようになって嬉しかった。
そこからの二人の旅路は幸せな物だった。
いつもお留守番をしていたディーは世界の様々な姿をみて、瞳を輝かせた。
だが、二人は星降りの丘にはたどり着けなかった。
幼いディーが幼いままだったのは、世界が滅んだあと、新し世界を生み出すためだったからだ。
その世界には将来危機が訪れ、破滅する可能性があったのだ。
ディーがその役目を放棄してしまうと、それは自然に他の誰かが継がなくてはならない事になる。
だからディーは、自分は成長しない事を選んだのだった。
その話をディーは夢の中で神様から聞いて決断をした。
ディーは、レットの前から姿を消した。
レットはディーを探し回ったが、見つける事はかなわなかった。
そのまま行方不明になるデイーだが、後にレットの故郷に危機が訪れる。
その際、レットは故郷に駆け付けるのだが、彼がどんなんに心を砕いても故郷を救う事はできなかった。
生まれ育った場所は消え去り、その場にかけつけたディーも死亡してしまった。
その後にレットは神様に再会し、運命を呪う言葉を吐いた。
星降りの丘に向かう前、ディーが神様と話をした事もレットは分かっていた。
どこかに姿をくらましていたディーが、故郷にかけつけた理由も神様が話をしたからだと分かっていた。
だから、怒りをぶつけた。
神様はそんなレットに「今までどこにいたんですか」とつぶやいた。
その声音は小さくか細い。
その言葉でレットは、神様の今までの言動が本意ではなかったのだと分かってしまった。
神様は人に平等に接しているが、想いや愛情がないわけではないのだと悟った。
レットは神様を責められなくなってしまい、どこに怒りと悲しみをぶつければ良いのか分からなくなってしまった。
そんな彼は、年をとり大人になり、そして出会った。
弟のディーと同じように成長の止まった子供と。
レットは今度こそ、その子供を守ろうと誓った。
その決意が果たされるかどうかは、まだ運命しか分からないことだった。




