第2話
俺が目を開けるとアルミラージは消えていた。
「かわいい見た目とは違って、ヤバイやつやつだ…」
俺は遅れて出てきた冷や汗を拭う。あの時確実に死んでいた。今でも死ぬ感覚を思い出すことができる。なのになんで今ピンピンしてるのかって?それはチートスキルの1つ【セーブ&ロード】のお陰なのだ!
説明しよう!【セーブ&ロード】とは、いつでもどこでもセーブとロードができる最強能力。オートセーブ付きで、1秒毎にセーブされてるぞ☆さらにスロットは数えるのが嫌になるくらい馬鹿多いからどのセーブスロットを消そうか悩む必要もない!死んでしまった場合は無数のセーブデータから戻りたいデータを選べるようになって、セーブしてから1秒前に戻ることができる。
短く纏めると人生のやり直しが利くってわけ。死んでもやり直せるとか、実際に体験してみると笑っちゃうくらい最強だな。
「まっ、あの兎にだけ気をつけて行けば問題ないか」
俺は歩を進める。死なないと分かれば楽勝過ぎる。しかしその楽観的な考えは、自然界では通用しないことをこの後体感する。
俺の後方から木々が折れるような破裂音と、重く低い地響きが鳴り響く。嫌な予感しかしない。
嫌な予感しかしないが、怖いもの見たさで後ろを振り替える。揺れる森の中から出てきたのは、ゾウよりも大きい猪が鼻息荒く出てきた。唸り声だけで身体がビリビリと痺れて、吐き出された鼻息で身体が吹っ飛びそうだ。
「わ、わぁ大きい身体ですね~。たくましい~…じゃあ僕はこれで」
褒めれば相手は自己肯定感に包まれて油断するに決まっている。照れている間に何事もなかったかのようにその場を抜け出せば、あら不思議。誰も不幸になることがありません。
ぶるぅぁぁあ!!
僕が動いた瞬間に咆哮しながら前足で地面蹴り上げるの止めて貰っていいですか?それ確実に臨戦態勢って感じがするんですよ。
「やっぱりダメ?」
その後、俺の肉片は宙に花を咲かせ、ものの数十秒で人生2回目の死を迎えた。
「くっそ痛いんだぞ死ぬってぇ!!」
ロードから目覚めると猪が後ろを向いていた。丁度いい、気づかれる前にチート能力を1つ使ってみよう。
「【強制睡眠】!」
発動とともに淡い水色の魔方陣が猪を包む。その瞬間、あれほど猛っていた猪がこてんっと転んだかと思うと、目を綴じて寝息をたてている。恐る恐る指でつついてみるが反応はない。よくよく見ると倒れた猪の上に4:59とカウントダウンされていく数字がある。
「まじで寝てる…しかもあの一瞬で。上の数字は数々のエロゲーから推測するに寝ている時間だろうから、5分間寝ているってことだな。それまでは何をされても起きないはず。これを使えば異世界美少女に悪戯して、起きたらあれ?なんか変な感じ…なんか臭い匂いがするけど、嫌いじゃない…かもプレイができるって訳だなぁ!テンション上がるぅ!」
EGSまじ最高!身を守るのはもちろん、現実じゃできなかったあんなこと、こんなことを実現できてしまうではないか!異世界美少女たちよ待っていろ!
ハイになっていると、またしても茂みがガサゴソと揺れる。さっきの猪と比べるとかなり小さい。まあ、チート催眠能力もあるし、最初のアルミラージでも、なんでも来ても問題はないだろ。さっさと来てみやがれ!
意気込んだ俺の肩を透かすように、現れたのは小さな猪、元の世界で言えばうり坊だった。
今対峙していた猪が母親だったのか、可愛い鳴き声で心配そうに駆け寄っていく。なんか罪悪感を感じちゃうなぁ。
「あー…眠ってるだけだから安心しな。後3分くらいで目を覚ますよ」
言葉は通じないだろうが、言わないと後味が悪い気がした。あんな寂しそうな声を出されたら、荒んだ俺の心も痛んでしまう。
俺は後ろを向くとその場を後にしようとした。俺が背中を見せたタイミングでうり坊が突進してきたのだ。
「…へぶぁっ!?」
間抜けな声を出しながら強制空中散歩を執行される。まだ子どもで非力だったのが幸いか、ふっとんだ俺は生きている。
「うおおおお!なんでぇ!?子どもだからダメージにならなかったのか!?」
あの雑魚ステで生き残ってることが驚きなよだが、生きていた方が怖いこともある。うり坊タックルが生み出した慣性の力は徐々に消えていき、お空の上から自由落下が始まる。
「おっ、おっ、おっおっおおおお!」
人生初スカイダイビングをこんな形で体験するなんて予想してなかった!落ちるの普通に怖い!めっちゃ怖いぃぃぃ!
落ちていく先には木々がぽっかりと空いた所に、そこそこ大きな湖が見える。着水ならワンチャン生き残れるかも…と、思ったのも束の間。近付くにつれて、丁度いいところに人が立っているのが見え始めた。
「たぁぁぁ!すぅぅぅ!けぇぇぇ!てぇぇぇ!」
このままでは人に直撃して共倒れになってしまう。俺は必死に声を出して注意を引き付ける。あわよくば助けてくれることを願って。
そして湖に立っている人は気付いた様子で俺の方を見る。そしてその人の正体がはっきりと見えた。なんと女だった。しかも服を着てないように見える。水浴びをしているところだったのだろうか。エロゲーの中なら興奮するところだが、今は生死がかかっている。精子をかけている場合じゃない。言葉遊びをしてるいる状況じゃない。
女の人は片方の腕で前を隠しながら、反対の手を俺の方に構えると、巨大な魔方陣が展開されていく。俺が【強制睡眠】を使ったときと似ているため、おそらくスキルを使ったのだろう。
助けてくれる優しいお姉さんだ…!と、思ったのも束の間。魔方陣全体が赤く光り、全体から螺旋を描いて渦巻く炎が飛び出してきた。
「ほのっ!ええええっ!もえっ!死ぬっ!ええええっ!」
炎と俺がぶつかるのに数秒もかからなかった。まずは服が燃えて生まれたままの姿になる。そして身体がこんがり上手に焼けました状態になる。生き返るとはいえ、焼死まで経験することになるとは思わなかった…走馬灯のようにエロゲー配信の思い出が頭を過っていく。あの場面でのあの人のコメントは笑えたなぁとか、あのエンディングはリスナーと泣きながら擦ったなぁとか。グッバイ、俺。ロード先でまた会おう。
ロードすると炎の渦は消えていた。アルミラージが消えていたこと、猪が後ろを向いていたことも合わせて考えると、どうやら1秒前にロードできるのは俺の体だけらしい。体だけというのは、現在進行形で焼けた服が戻ってないからです。そして目の前には水浴びの女が立っている。
「「えっ」」
急なことで避けることもできず、お互いがぶつかり、そして冒頭の展開へと至る。
全てが柔らかい彼女は色白だが、どこか活発さを連想させるペールオレンジの肌をしている。腰まで届くほど長い、少しウェーブがかった深紅の髪。大きな瞳は、髪の毛より明るい鮮やかな赤色とキラキラ輝きを放つ金色のオッドアイ。目鼻顔立ちは彫刻のように整った完璧な美人だ。
エロゲーに出てくる女性にしか興味のなかった俺だが、思わず見とれてしまっていた。異世界ってこんなに可愛い子だらけなのか?最高かよ。
この至福の時を堪能していたが、彼女の体が小刻みに震え始め、うっすらと涙が浮かんできて漸く現状を思い出す。
勝手に空から降ってきて、急に唇を奪い、胸を揉みし抱く男(全裸)なんて完全な変質者はエロゲーにしか存在しないと思っていたが、まさか俺がそうだったとは。
「うおぉぉぉぉ!ごめんなさぁぁぁい!!」
俺は彼女を突き飛ばす勢いで体から離れる。今になって心臓が跳ね上がる。本当に口から出てきそうだ。彼女の方はというと、体を隠すようにしゃがみこんでしまい、美しい肉体が見えなくなってしまった。
「なっ、なんというかその、これは誤解なんだ。そう誤解!急に猪が出てきて大きいのは平気だったのに、うり坊にぶっとばされて…」
「……す」
「え、なに?」
小さい声が聞こえた気がした。ちゃんと聞こえるように黙っていよう。
「……す。こ…ろす。殺す…。絶対殺す…!全身に悪魔針鼠の猛毒針をぶっ刺して殺す。大量の出血ヒルを動脈に吸い付かせて殺す。頭から爪先まで細切れにして家畜のエサにして殺す。《ピー》を《ピー》して《ピー》になったら《ピーピーピーピーピー》で殺す。あぁ…ころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺すころすコロス殺す…」
聞かなきゃよかったぁぁぁ!なんであんなに殺し方思い付くの!?放送禁止ワードになる残酷な言葉ってなに!?最後の殺す連打はフルコンボ確実だよ!
「いや怖いわっ!殺意高過ぎるし!殺し方エグすぎ!俺の命そんなにないから!」
しまった、配信の癖でついついツッコミをいれてしまった。
それを聞いて殺意丸出し女の動きがピタリと止まる。ゆっくりと項垂れていた顔を上げて長い髪の隙間から覗く眼は、完全にいっちゃってる眼をしている。
「大丈夫…私の蘇生魔法で何度でも生き返らせてあげる…」
「だから怖いってぇぇぇ!瞳孔ガン開きの眼で見ないで!てか、蘇生魔法!?さらっとこの世の理から外れてるような魔法が聞こえたんだけど、こっちの世界じゃ普通なの!?」
この女はヤバすぎる。そう俺の直感が教えている。いや、直感するの遅すぎだろ。3G時代のWi-Fiかよ。蘇生魔法に関しては俺も《セーブ&ロード》があるから、一般的な魔法なのかもしれないな。うん。
ふと、空が明るくなった気がして上を見上げる。そしてそれは気のせいじゃないことが分かる。先ほどまで綺麗に澄み渡っていた空は無数の魔方陣に覆われて見えなくなっている。空を落下中に放たれた魔方陣なんかゴミに思えるくらいの大きさだ。
「なん、だよ…これ…」
「取りあえず一回死んで」
超巨大魔方陣は中心へ、蜷局を巻くがごとく急速に圧縮されると、1粒の雫となって落ちてくる。
打ち上げ花火の落下バージョンとでも言えばいいのか、真っ直ぐに落ちる真っ白なそれの軌跡が揺らいで見える。まるで陽炎。高熱を発するときにその回りがゆらゆらと揺れている現象のようだ。
「一粒の赫灼」
激ヤバ女の一声と同時に白い雫が輝き、その光は音を置き去り、周りの空間全てを包み込んだ。
焼け野原と呼ぶには被害が大きすぎる。雫が炸裂したあとの森は、クレーターのように窪み、木や湖は全て消えてしまっていた。
地形を変えるほどの威力だったが、上空での爆発だったため、被害がこれだけに済んだのだろう。もしあの雫が完全に落ちていたらと考えただけでもゾッとする。
「ははっ…あはは…あはははは!ざまぁみろ!私の清らかな体に触り、あまつさえファッ、ファースト…キ…キキキキキ………キス…を奪った罪は重いと知ったか!あーっはっはっは!」
「あーびっくりした。目がちかちかする」
「はぁぁぁぁぁっっっ!?!?!?」
「そんな驚くなよ。目が溢れ落ちるぞ」
大規模災害だったが、もちろん《セーブ&ロード》で生き返ることができる。まじでチートすぎぃ!
「ななななんであんたが生きてるわけ!?」
赤い髪とおっPを揺らしながら俺に急接近してくると、俺の胸を人差し指でグリグリとドリルしながら喚き始める。
「あれは絶頂級のなかで高火力かつ1番広範囲のものなのに!どうして生きてるのよ!周りを考えて爆発の余波に抑えたけど、相手が勇者だったとしても無傷なんてありえないの!!しかもあなたレベル1のゴミステータスに無能じゃない!一体なにをしたの!答えなさい!」
「そんなにぐいぐい来ると目の保養…もとい目のやり場に困るというか…」
近すぎて逆に見たいところが見えなくなっているのが残念…こういう時は目を逸らすべきだって言う人もいるかもしれないが、据えぱい拝まぬは男の恥って言うから、見れるときに脳裏に焼き付けとくべきなんだよ。
「何をもにょもにょ言ってるのよ!さっさと質問に答えなさい!」
「質問に答えろとか言われても、企業秘密といいますか…てか、お前こそなんで俺のレベルとかステータスとか知ってるんだよ!」
「ふんっ、そんなの鑑定魔法を使ったからよ。この私、アォーズ・ディアンぺリアルに使えない魔法はないのよ!アッハッハッハ!」
使えない魔法はないだって?こいつの名前はアォーズだったか?もしかして裸体を隠しもせず腰に手を当てて高らかに笑うこの痴女は凄いやつだったりして。何はともあれ眼福眼福。
脳内の宝物フォルダに忘却できないように今の光景を保存していると、目の前にメッセージウィンドウが開かれる。
《アォーズ・ディアンぺリアルにお仕置きを下す》
《アォーズ・ディアンぺリアルを性奴隷にする》
「こっ…これは…!」
間違いない、親の顔よりも見た2択のメッセージウィンドウ。選択肢によって目の前の女の子との関係が変わっていく、まさに『エロゲー』の醍醐味じゃないか!これは絶対俺の能力『EGS』と関係があるだろ。
ふと、俺は違和感を感じて周りを見渡す。目に映る光景は先程から特に変わっていない。いや、全く変化していないと言った方が正しい。
まるで時が止まったかのように空を飛ぶ鳥も宙を舞う砂煙もザ・変態といった格好のアォーズも、全てが動いていない。そして俺もその場から動くことができない。
「まさしくルート選択、今迫られてるこの2択を選ばなければ物語は進まないってことか」
今一度、表示されているメッセージを見る。
A《アォーズ・ディアンぺリアルにお仕置きを下す》
B《アォーズ・ディアンぺリアルを性奴隷にする》
「ふむふむ…お仕置きっていうのはよくあるよな。生意気な性格の人が分からされちゃうやつ。下ルートの性奴隷なんてがっつりじゃん。何がとは言わないけどがっつりじゃん。俺の長年のエロゲ脳が騒いでるぜ。どちらもエッチルート確定だってな」
俺こと真童帝王はバリバリの童貞である。こんな確定演出来たら嫌にも感情が昂ってしまう。反り立てッ!俺のムスコよッ!
だが悩む。こいつには殺されかけたしお仕置きルートも捨てがたい。だが、自分の言うことに何でも従ってくれる性奴隷は全世界の男が1度は夢見ることだろう。
「個人的な報復か…それとも全世界の夢か…」
悩みに悩んだ俺は遂に決断を下す。生唾を飲みながら震える指先で慎重にメッセージウィンドウに近付ける。緊張?ばか、お前ホントばか?緊張じゃないから。武者震いだから。いやがちで。童貞なめんなよ。
ピッ、と機械音が鳴る。押したのは下のルート、性奴隷にするルートだった。決め手は性奴隷になってからでもお仕置きできるじゃん!という圧倒的閃きである。は?震えてねーし。全身に震度7発生してねーし。童貞なめんなよ。
『ルートBが選択されました。これよりシステムによってルートBを実行します』
機械音声が頭の中に直接響く。メッセージウィンドウが消えると、あの馬鹿みたいな大笑いが聞こえ出す。あ、そうだ性奴隷契約するんだった。
「契約、それは魂を縛る楔」
え、待て、なんだこれ。詠唱?頭に言うべき言葉が浮かんでくる。
「隷属、それは感情を塞ぐ枷。支配、それは肉体を縛る鎖」
「なっ…!なにっ、これっ…」
俺が詠唱を続けるとアォーズがへその下辺りを押さえ始める。顔が紅潮して苦しそうにしている。よく見ると濃い紫と濃いピンクが混じりあったような、なんとも妖しい光が指の隙間から見える。
「身も心も他が為のもの。己のものは己のものに非ず。全ては主の為に捧げよ。服従しろ、お前の名を言え」
「い、いやっなのに…口がぁ、勝手に…あっ、アォーズ…くっ……ディアン、ぺリアル…」
「【強制性奴隷契約】」
『契約の完了を確認。これよりアォーズ・ディアンペリアルは真堂皇帝様の性奴隷となります』
「んっああああっっ!!」
唐突な機械音声が脳内に響く。アォーズは契約が完了と同時に、はしたない声を上げ、身体を激しく震わせ、生まれたての小鹿のようになり膝から崩れる。なんかめちゃめちゃ顔がえろい。
「くっ…!なんたる屈辱…いっそ殺してくれ…」
『続いて、性奴隷が主人に危害を加えないよう、能力のセーブを行います。性奴隷アォーズ・ディアンペリアルのステータスを解析中…』
能力のセーブか。確かに奴隷契約といっても命令の仕方で反抗されたりして、殺されたりするのかもしれない。その辺はしっかり頼むよ。
『解析完了。危険度10。主人とのステータス差が著しいため絶頂級の封印を施します………失敗。システムの抵抗により一部のみの封印となりました。性奴隷アォーズ・ディアンペリアルのステータスは1/10になり、能力を初級のみ使用可能になります』
「え…?嘘…身体が重く感じる…」
アォーズは目を丸くして自分の両手を見ていた。どうやら封印の効果はちゃんと出ているようだ。
『続いて、一時的に封印を解除するための解除方法を決めてください』
「解除?解除方法か…」
悩むなぁ。決めてくださいってことは自由選択でいいんだろうけど、自由すぎても逆に困るよね。
「パスワード設定とかどうかな。『目覚めろ!封印されし力よ!』『蹂躙せよ!我が眷属!』『今の形態は3つの変身の中でも最弱。まさか真の力を見せることになるとは…貴様が初めてだ。さあ見せてやろう真の姿を…!』うーん…なんか違う」
中二病っぽいのはしっくりこないな。何だかっていったら、やっぱり性奴隷だからかな。召喚獣みたいな闘うための相棒ならそういうのでもありなんだけれど。性奴隷だからなぁ。
「性奴隷かぁ……あっ、そうか!」
ビビっと頭に電球が点いたぞ!
「解除方法は『エロいこと』だ!」
「……………は?」
『解除方法承認。システム内に適応するよう改変……完了。主人の性的興奮の度合いによって性奴隷アォーズ・ディアンペリアルの封印は一時的に解除されるようになりました』
「ええええええっっっ!?!?!性的興奮!?このコボルトみたいな奴の!?誰が!?私が!?はあぁぁぁぁ?????」
「俺の顔って犬に似てるのか~」
「皮肉っているのよ!!本当ムカつく!水浴びしてたら急に裸で空から降ってくるし、火龍渦流でも一粒の赫灼でも死なないし、おまけにこんな、知性も感じさせないような野蛮野郎の性奴隷ですって…!?あり得ない…本当最悪…どっからどうみても変態じゃない。こんな童貞顔に美少女の私が犯されるなんて…キモすぎて吐きそう。オェェォ…」
「えー、なんかめっちゃ心抉ってくるじゃん。かなり傷ついてるよ。俺のハートはチタン製だと思ったんだけど、あなたの言葉はプレス機なのかな?」
うわ言のようにぶつぶつ呟いて少量のダメージを重ねてくる。童貞に若い女の言葉は効果抜群だよ。
「まじ童貞…1番右手が汚い、不潔、汚物…」
「あ、それはピキッと来ちゃったよ。頭からピキッて鳴っちゃいけない音したよ?もう許さん。取りあえず『その五月蝿い口を閉じろ』!」
「…っ!」
そう命令した途端、アォーズの口がきゅっときつく閉ざされる。アォーズはモゴモゴなにか言いたそうにするが口は開かない。
「はっ、はは…これは本物だぞ」
俺は命令の力に昂る気持ちを抑えられなかった。目の前には命令に従順な美少女。ヤることは決まっている。
「『手を上に上げろ』」
「ッッッ!?」
細い両腕が頭の上に上がっていく。抵抗しているのか、ぷるぷると震えているのが分かる。涙ぐんだ目、怒り、屈辱、羞恥を混ぜた表情。さっきも見ていた身体だと言うのに、今の方が艶かしく脳に写る。恥ずかしげもなくムスコが熱く膨らんでいくのを感じる。何も感じるなと言う方が無理な話だ。
俺の準備は万端。さあ、ヤってやるぞ。いざっ!脱童貞だ!
「~~~ッ!」
俺は迷いや葛藤を振り払うように一気に距離を詰める。俺の手が目指すは頂上がピンク色の双丘…!
『主人の性的興奮を確認。性奴隷アォーズ・ディアンペリアルの封印が一時的に解除されます。解除時間は1秒です』
「え」
脳内に機械音でアナウンスが届く。それが聞こえた瞬間に、俺の目の前にアォーズの拳が飛んできたのが辛うじて見えた。
見えたというよりは、記憶に残っていると言った方がいいかもしれない。なぜなら、1秒間という短い時間に数十…いや、百発以上の殴打された感覚が、ロードされた俺に残っていたからだ。
『解除時間が過ぎました。再び封印されます』
俺は呆然と息を切らすアォーズを見ていた。あれだけ元気だったムスコも、恐怖で引きこもりになってしまっている。このまま出てこなかったらどうしよう…
いや!今はそんなことを考えている場合じゃない。死んだ原因となる殴打を受けて確信する。アォーズはただ者ではないと。
確かチートスキルの中に鑑定のようなスキルがあったはず。それでアォーズのステータスを確認しよう。
「【視姦】!」
説明しよう!【視姦】とは、対象の秘密にしておきたい恥ずかしいことまでまるっとお見通しにしてしまうチートスキル!これを使われた相手は丸裸も同然。つまり!その名の通り、相手は知らない内に俺に【視姦】されているってわけ。使ったことないから知らんけど。
発動と同時にアォーズの周りにゲームのステータスウィンドウのようなものが広がっていく。
「なんっだ、これ…?」
─────────────────────────────
〔アォーズ・ディアンペリアル〕〔♀〕
レベル〔90〕 年齢〔20歳〕
[ステータス]
H P 〔80〕{封印}
M P〔∞〕{封印}
ATK〔72〕{封印}
DFE〔65〕{封印}
INT〔99〕{封印}
RES〔99〕{封印}
[スキル]{封印}
初級魔法<全種>
ERROR※封印されているためその他のスキルを表示できません
[キャラクター紹介]
身長〔172cm〕体重〔58kg〕バスト〔E〕
明るくて元気がチャームポイントの魔王の娘。天真爛漫な彼女は、魔王になって生活を縛られることを嫌い家出中。いつかは素敵なお嫁さんになって大好きな人と静かに暮らすのが密かな夢。子どもは多めに5人ほど欲しいとか…
────────────────────────────
俺はまさしく開いた口が塞がらない。情報量が多すぎる。暫くフリーズしてから情報を磨耗しそうな脳内で処理していく。
「封印って、確か1/10だったよな…INTとRESは〔990〕あるってこと?MP〔∞〕って、チートじゃないの…?キャラ紹介ってマジでゲームかよ。てか、魔王の娘だったのか。そりゃ強いよな。納得納得☆」
いやまさかね、性奴隷にした相手が魔王の娘だったなんてビックリしたよね。そりゃあんなに強い魔法も使えて当然だよね。しかもスタイル良くて美人だしね。魔王の娘なら当たり前だよね。あー魔王の娘かぁ。
「……………え?魔王の娘?」
「げぇっ!なんで私が魔王の娘ってあんたが知ってるのよ!」
はい本人から確定演出いただきました~。では、大きく鼻から息を吸い込んだら口から大きく吐き出しましょう~。せーの…
「魔王の娘ぇぇぇぇぇぇっっっ!?!?!?」