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35.弟子にして下さい!

 次の日、私はギルドマスターからもらった地図を頼りに、街の東端にあるイズモさんの鍛冶場へと向かった。石畳の道を進んで木々の間を抜けると、やがて立派な木造の建物が見えてきた。


 「ここがイズモさんの鍛冶場かな?」


 私は深呼吸をしてから扉をノックする。

 すると、しばらくして扉がゆっくりと開いて中から優しげな笑顔を浮かべた老人が現れた。白髪と白い髭が特徴的で、深い皺が刻まれた顔には穏やかな笑みが浮かんでいる。


 「おやおや、こんな朝早くに誰かと思えば……お嬢ちゃん何用かな?」


 好々爺って感じだけど、手は傷だからけでゴツゴツしていて如何にも職人って感じの手。貫禄があって良いよね。


 「こんにちは!私は―――――」


 挨拶と自己紹介を済ませてから、私は鞄から推薦状を取り出しイズモさんに手渡す。

 イズモさんは推薦状を受け取って、じっくりと目を通した後、にこやかに頷いた。


 「ふむふむ、なるほど。ギルドマスターが推薦するだけあって、君はやる気がありそうじゃな。まあ、まずは中に入って話をしようじゃないか」


 おー招かれた。ファーストインプレッションは悪くなさそう!

 鍛冶場の中へと足を踏み入れると中は広々としていて、様々な鍛冶道具や素材が整然と並んでいた。炉の火が暖かく、心地よい雰囲気が漂っている。

 私は鍛冶ギルドの施設を利用しているから自分専用の工房にちょっと憧れる。


 「さあ、まずはお茶でもどうかな」

 「ありがとうございます」


 イズモさんは私にお茶を出してくれた。

 あ……茶柱が立ってる!縁起がいいね!


 「ところで、君は鍛冶が好きなのかね?」

 「はい、大好きです!」

 「ほう、それは素晴らしい。では、なぜ鍛冶師になりたいと思ったのじゃ?」

 「武器が好きだからです!」

 「なるほど………それは何故かな?」

 「綺麗だからです!」

 「ククク……純粋じゃな」


 イズモさんは私の言葉を聞いて、満足げに頷いた。


 「うむ、君の熱意はよく伝わった。これからの試練も乗り越えられるじゃろう。頑張るのじゃぞ」


 よし!

 なにか良くわかないけど、面接みたいなのを乗り越えれたみたい。

 まぁ……あんな答えで良いなら何言っても全肯定されそうな気はするけど……

 

 「ありがとうございます!」

 「良い返事じゃ。ではまずは君のやる気を見せてもらおうか。ここにある素材を集めてきてくれ”鉄鉱石”と”石炭”と”星屑の水晶”と”純油”そして”魔土”じゃ。ちないに”星屑の水晶”は廃坑の二層以下で採掘できるぞ」


 最初は素材集めからか……素材のラインナップからして練合のための素材かな?今度は何を作るのか非常に気になる………何にせよ頑張るとしますか!


 「必ず集めてきます!」


 私は勢いよく立ち上がり、深くお辞儀をしてから鍛冶場の扉へと向かった。

 そして私は一度振り返り、イズモさんにもう一度お辞儀をした。イズモさんは優しげな笑顔で手を振ってくれた。


 「気をつけて行くのじゃぞ」

 「はい、行ってきます!」


 私は石畳の道を進み始めた。


 




 廃坑の内部は複雑で広大な迷宮のように広がっている。

 無数の通路が縦横無尽に交差していて、上下に伸びる階段や梯子が至る所に設置されている。そして各所に広がる空間には古びた木の支柱が立ち並んでいて、所々に崩れた跡が見受けられる。

 これが現実なら崩落とかが怖いんだろうけど、ここでならそんな心配は要らないんだよね。


 ―――――二階層に降り立つと、そこにはさらに複雑な構造が広がっている。

 上下に伸びる通路が交差し、まるでアリの巣のように入り組んでいる。足元には古びたレールが敷かれ、かつての鉱石運搬用のトロッコが錆びついて放置されていた。

 道中には、


 「ブォォォォォォォッ!」

 

 ミノタウロスだったり、


 「ヴガァァァァァァッ!」


 オーガだったりが現れる。

 

 「おっと―――――」


 せーりゃ!っと、オーガの棍棒を受け流してカウンター―――――ってうわっ!あぶなっ!棍棒の一撃は如何にも強力そうなので直撃は避けたいよね。それに皮膚が堅い、でもこれで終わりかな。

 

 「あ、牙がドロップした!武器に使えるからラッキー」


 ミノタウロスとかオーガとか、体感……というか確実に廃坑に来てから人型の魔物に武器を使う敵が増えた気がする。何が違うと言えばリーチが違って、間合いを図る必要がある。あと一体一体が結構強い。

 けど、廃坑では基本的に群れる敵がいないから私としてはやりやすい。

 今は特定の鉱石を探しているわけから他のプレイヤーとは一緒に行動できない。だから集団で責められるとリスポーン待ったなしだからね。

 それからも廃坑を進み、やがて―――――――、


 「わぁお…これは壮観だ……!」 


 大きな空洞にたどり着いた。そこには巨大な水晶の鉱床が広がっていた。

 水晶は淡い光を放っていて、まるで星空のように輝いている。その美しさに一瞬見とれてしまったけど、私はピッケルを手に水晶を削り取り始めた。


星屑の水晶

レア度::★★★

必要鍛冶Lv:30

説明:星屑の水晶は、その美しい輝きと高い硬度で知られている。特定の金属と組み合わせて加工することで、非常に強靭かつ柔軟な耐久性のある合金を作り出すことができる。


 「―――――うん、これで十分かな」


 作業は順調に進んで、私は大変満足。


 「さっさと帰ってイズモさんに報告しよ~と♪」


 こうして再び私は、廃坑の出口へと向かうことにした。

 道中、再び複雑な通路を進みながら軽快に足を運んでいく。

 だけどふと足元に目をやると、地面から薄い煙が立ち上っているのに気づいた――――――なんだろうね、これ。

 煙は妖しい紫色をしていて、まるで生き物のようにゆらゆらと揺れている。どう見ても、有害なものにしか見えないけど…………


 「ブォォォォォォォォォォッッ!!!!!」

 「んえ!?」


 突然、ミノタウロスの咆哮が響き渡った。驚いて振り返るとそこにはミノタウロスが立っていた。目は血走り、口からは泡を吹いている。

 正気じゃない、というか狂気的である―――――ぶぉん!と風を切る音が聞こえた。

 

 「うぇっ!?」


 わずかに顔をずらすと、巨大な斧が私の顔面すれすれを通り過ぎて、次の瞬間には壁に突き刺さっていた。

 ………怖っ!っていうか殺意高すぎじゃない!? 

 逃げよう……なんか関わりたくない!


 「ひゃぁぁぁぁぁぁ!」


 そして私は一目散に逃げだして廃坑を脱出した。

 

 

 ――――――なんか変な敵だったなー。

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