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28.納品クエストで村に向かおう

 ゴブリンは一般的に弱い生物と見なされることが多い。彼らは小柄な体躯とやせ細った体を持ち、知能も人間に比べて著しく低い。しかし、ゴブリンは単なる弱者ではなく独自の生存戦略を持つ興味深い種である。


 まず、ゴブリンは群れを形成する知恵を持っている。彼らは集団行動を基本とし、これにより個々の弱点を補い合う。特に長く生きた個体は弓や騎乗などの技術を身につけることがあり、これにより戦闘能力が向上する。またゴブリンは人型であるため、人間の技術を模倣しやすいという利点がある。


 さらに、ゴブリンは劣悪な環境でも生存可能な適応能力を持っている。彼らは極端な気候や食糧不足にも耐えることができ、この点で人間よりも優れていると言える。また、ゴブリンは非常に高い繁殖能力を持ち短期間で大規模な群れを形成することができる。この繁殖能力は彼らの生存戦略の一環として非常に重要である。


 他にもゴブリンの残虐性も注目すべき点である。彼らが家畜を襲い必要以上に痛めつけて殺している姿は度々確認されている。この残虐性も彼らが生存競争において優位に立つための手段と考えられる。


 以上の点を踏まえると、ゴブリンは単なる「人間の劣化種」として片付けることはできない。彼らは独自の生存戦略を持ち、特定の環境下では人間よりも優れた適応能力を発揮する。ゴブリンの研究は彼らの生態や行動を理解する上で非常に重要であり、今後の研究が期待される。


 このように、ゴブリンは単なる弱者ではなく独自の生存戦略を持つ興味深い種であることがわかる。彼らの適応能力や繁殖能力、残虐性などの特性は彼らがどのようにして過酷な環境で生き延びているのかを示している。


 さらに、ゴブリンの社会構造には興味深い特徴が見られる。特に大きな群れの中には他の個体を統率する存在がいることが観察されている。この存在は通常のゴブリンよりも知能が高く戦術や戦略に長けている。そして、そんな彼らは群れの大きさで三段階に分類できる。数十体規模の“リーダー”、数百体規模の“マスター”、数千大規模の“”キング、彼らは―――――――――――――――。


【リンダの街・大図書館/ 書物 / 魔物図鑑】より一部抜粋










******


 大きな枠組みで分類すると、一般的にクエスト受注は二種類のパターンに分けられている。 

 一つ目は、NPCとの会話や交流、特定条件の達成によって発生するパターン。二つ目は、街にある掲示板から任意のクエストを受注するパターン。私を例にすると前者は“鍛冶クエスト”で、後者は二日目にやっていたような“ウルフ駆除”だね。

 二つの違いとして、NPCからのクエストは発生とクリア条件が難しい代わりに高報酬。掲示板は日々内容が変わって誰でも何時でも受けれる代わりに、受注は一日一回で報酬が数千~1、2万ゴールドだけで控えめに言ってもしょぼい。だけど、その手軽さから費用対効果は高く、私も掲示板クエストには日々お世話になっていたりする。

 そして何故、こんな話をしているのかと言えば、


 「―――――で、一万程度のゴールドが報酬の薬の納品クエストをわざわざ手伝ってって?」

 「そう、今度は神官らしい善行でしょ?」


 ユキは見せつけるように楚々とした聖職者服をひらりと翻す。なんだか上機嫌だ。

 初イベントを終えてから数日後、私はユキが受けた掲示板クエストを手伝わされようとしていた。


 「別にいいんだけど、私が居る必要もなくない?」

 「んー実は納品先ってこの街じゃないの」

 「え、じゃあ別の街ってこと?もう見つかったの?」


 私は良く知らないけど、初イベントが終わってからというもの、街の復興に並行して“リンダの街”を離れようとするプレイヤーが増えていたらしい。

 それもこれも、これまで閉ざされていた街の南門が解放されたからなんだけど――――――、


 「うんん、その中継地点の村みたい。どう?行ってみたくない?」

 「…………行ってみたい」


  かくして、私が今日にやることが決まった。まぁ偶には純粋な冒険もいいかもしれない、なんて考えてながらユキの後ろを付いて行く。

 ユキ曰く、薬の納品先はリンダの街を出てから南に進んだ先に作られている村らしい。

 普段は街の北門を潜って“北の森”で狩りをしていたから、南門から出るのは初めてってことになる。


 「そこにはどうやって行くの?徒歩?」


 南門から出れば、広がるのは地平線まで伸びる見晴らしの良い草原。風に揺れる草の波がまるで緑の海のように見える。遠くにはいくつかの木々が点在しており、その間を小川が流れている。あと、点々と見える小さな影は魔物かな?

 なんにせよ、その村までは結構な距離がありそうだった。

 

 「徒歩でもいけるけど、ちょっと時間がかかるかなぁ」

 「詳しいね?もしかして行ったことがある?」

 「何度か」

 「ふ~ん」

 「いつもはあれで行ってる」


 そうユキが指差したのは、城壁に寄り添うように頑丈な木材で建てられた建物だった。近くには他のプレイヤーやNPCと思われる人達、そして馬がいた。厩舎かな?


 「そこで馬を借りて行くの」


 なるほど、そんなものまであるなんて――――――これは移動手段が徒歩だけだと考えていた私が浅はかだった。でもね、


 「私、馬に乗れないんだけど」

 「大丈夫、大丈夫」


 何が大丈夫なのか。ユキが慣れた様子で厩舎の扉を押しあけてから暫くして、彼女は一頭の栗毛の馬を連れてきた。

 馬は大きな瞳でこちらを見つめ、優しげな表情をしている。ユキが馬の首を撫でると、馬は嬉しそうに鼻を鳴らした。可愛い………。


 「よい、っしょ……」


 それからユキが馬に軽やかに乗った。なんか慣れてるんだけど。


 「はい」

 「はい?」

 「いや私の後ろに乗せてあげるから、はい」


 …………うしろ?え、何でスマートにそんなことしてくれちゃってるの?ちょっとときめいんたんだけど? 

 とはいえ、このまま素直に手を取るのには謎の抵抗感がある。

 

 「私は乗れないの?」

 「乗馬スキルがないと無理だけど、持ってないよね?」

 「持ってない…………」

 「なら今回は諦めて―――――さ、早く行きましょ!時間は有限よ」

 「…………落とさないでよね」


 私は諦めて、ユキが差し伸べてくれた手をしっかりと握り、ユキの助けを借りて馬の背中に乗り込む。うわっ高い!

 

 「なら、しっかり掴まってて」


 そうユキが言って、私達は出発した。

 馬に乗って進む草原の中、風が顔を優しく撫でる。草の香りが漂って、心地よいリズムで馬の足音が響く。そしてユキの背中にしっかりとしがみつきながら、私は周囲の景色に目を奪われてた。

  ―――――あぁ……いいねこれ、私も近いうちに乗馬スキルを取ろうっと。

 暫くして私達は目的地にたどり着いた。その村は森と川に隣接した小さな村だった。小さな……と言っても私の主観的な感覚なので、世界観的には中規模くらいかもしれない。


 「この森って北の森とは別物だよね?」

 「そう、暗がりの森っていう場所ね。敵の平均的なレベルはこっちの方が少し高い」

 「へぇ、じゃあ他のプレイヤーは?あまり見当たらないけど……」

 「乗馬スキルがないとここまで来るのが難しいのと、他にも村はあるからそっちに居るのかも」

 「なるほどねー」

 「それじゃあ私は薬の納品をしてくるから」

 「おっけー」

 

 村に着くなりユキは村長の元へと去っていった。

 さて、私は何をしようかな?折角新しい村に来たんだし探索でもするかぁ。―――――ふむふむ、なるほどねぇ………。

 村はこぢんまりとしているけど、どこか温かみのある雰囲気が漂っている。高さの揃った木造の家々が軒並みにある。そして村人たちは忙しそうに行き交っている。

 畑では農作業をする人々の姿が見え、子供たちの笑い声に合わせて家畜の鳴き声が風に乗って聞こえてくる。ユキの話では畜産業を主に行っている村らしい。


 「あ、おいしそうな焼き鳥だぁ……」


 私はNPCがやってる露店の一つに立ち寄って、焼き鳥を一本買おうとした。すると、突然背後から焦った声が聞こえてきて振り返る。


 「あ、あの!このくらいの女の子を見ませんでしたか!?」

 

 あからさまに何かがあった、という状況…………クエストの導入かな? 

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