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26.イベント④_最高の鍛造

 イベント時間残り30分。

 盛り上がりはいよいよ佳境に。街の広場には大勢のプレイヤーたちが集まり、大型スクリーンに映し出される戦闘の中継を見守っていた。

 

 「今までで討伐できたレイドボスって何体でしたっすか?」

 「二体だな」

 「うわぁ……大失敗っすね。北門は壊れかけ、NPCにも被害多数……」

 「だが流石に事ここに至れば、誰もが協力し始めたからまだ結果はわからんぞ」

 「そうだといいっすけど――――――」


 スクリーンの上に表示されているイベント達成度は現在32%。

 観戦組のプレイヤー達は半ば諦めかけだが、それはそれとしてプレイヤーたちの緊迫感ある大迫力な戦闘を楽しんでいる。

 空中スクリーンは広場の360度に映し出されて、激しい戦闘が行われているエリアかつ、それぞれ違うエリアを映し出している。

 そして中でも現在最も注目されているのが“北の森”奥地でのレイド戦だった。


 「やっぱレイドボスは強いね」

 「あれの名前ってなんだったすか?」

 「確か、リスポーンしてきたプレイヤーによると“狂乱したワーウルフ”でLv42だったな」

 「42!?そりゃあ勝てないね。行こうかなって思ったけどやめやめ。あたいじゃ何もできずに八つ裂きさ」 

 「そっすね、職人にはきちいっす――――で、それと戦えている皆さんは流石は戦闘専門のプレイヤーと言ったところっすね」


 画面には、百数人のプレイヤーたちが白く巨大なワーウルフと激しい戦闘を繰り広げていた。雨のように魔法が飛び交い、超人的な人間たちが武器を手に果敢にも怪物へ立ち向かう。現実では有り得ない、物語のような光景がそこにある。


 「あーまた一パーティが全滅さ……」

 「一瞬だったな」


 このイベントは死んでもまた挑戦できる。だから理論的には時間が経つ程プレイヤーが集まって有利になる。しかし、ワーウルフの鋭い爪が一瞬でプレイヤー達を引き裂いていくため、結局その時々のプレイヤー総数にそう変化がでない。

 これがレイドボスにプレイヤーたちが苦戦する理由の一つでもある。初めからもっと大人数で挑んでいれば状況は大きく違ったであろうが。

 

 「でもあの三人は一番長く頑張ってるっすよね」

 「だな」


 彼らの話題に挙がっているのは三人組のパーティだ。無名ではあるが、全員が女性プレイヤーかつ和装という個性的な格好をしているため観戦組の中でも注目度は高い。

 <侍>の女は、ボスの矢面に立って上手くタンクとダメージディーラーの役として立ち回っている。

 <陰陽師>の女は、その職業の器用貧乏的な万能性を活かして的確な援護による縁の下の力持ちとして貢献している。

 そして―――――、


 「中でもあの巫女が凄いっす。それに可愛い」

 

 男の視線の先では、今も<巫女>の女が巫女服をひらひらさせながら戦場を笑顔で舞っている。

 <巫女>の最も特筆すべき特徴は“舞”による味方のバフである。短くて30秒程度、長くて数分の決められた手順の“舞”を成功させることで味方に破格のバフを付与する。

 そのピーキー過ぎる性能から人気がかなり低いものの、使えるものが使えばかなり強力な職業に変わる。

 そして画面の奥の巫女は、戦闘が始まってから十数分間、絶えずそれを続けていた。複数の“舞”のスキルを組合わせて、効果が切れないように状況に合わせて使い分ける。魔物からの妨害に対しては、スキルが失敗にならない範囲で、タイミングや動きにアレンジを入れて避け続ける。

 彼女がこの無茶を成立させていることで、パーティメンバーのステータスを辛うじてボスの攻撃を凌げるまでに引き上げているのだった。


 「残りHPが赤になったすよ!」

 「流石にこれだけのプレイヤーが攻め続ければな」

 「おぉいけそうじゃないかい!」


 長く続く戦闘が、ようやく観戦組にレイドボスの討伐を予感させ始める。

 広場のプレイヤーたちは、まるで自分たちが戦っているかのように興奮して声を上げ野次を飛ばす。中には手に汗を握りしめ、祈るように見守る者もいる。

 魔法使いの放つ魔法がワーウルフを一瞬怯ませ、戦士鋭い剣技が次々と繰り出されワーウルフに傷をつけていく。


 「うわぁっ!危ないっす!そこっすそこ!」


 画面の中では、ワーウルフが狂ったように暴れ回り、その巨大な爪が地面を引き裂いた。


 「あと少し……あと少しで倒せる!」


 プレイヤーたちの声援が広場に響き渡る。画面の中でプレイヤーたちの攻撃が次第にワーウルフを追い詰めていく。

 そして最後の一撃を放つ瞬間、広場のプレイヤーたちは一斉に息を呑んだ。

 そして―――――ワーウルフが倒れて画面に勝利の文字が映し出されると、広場は歓声と拍手で包まれたのだった。






******


 ん?歓声が……………、


 「おい、どうした?」

 「あ、なんでもないです」


 ロックゴーレム変異種を倒してエーテル鉱石を五つ手に入れた私は、ギルドの鍛冶場へと戻ってタタラさんへ報告していた。

 私が集めた素材をタタラさんに見せると彼はそれを手に取り、じっくりと観察した。


 「よくやった。じゃあ、ダマスカス鋼の製作を始めるか」


 ――――――よしきた!にしてもギルドマスターが直々に教えてくれるんだ。


 「始めにウーツ鉱石からだな。鉄鉱石と石炭を高温で溶かして練合するんだ」


 タタラさんの指示に従い鉄鉱石と石炭を炉に入れ、高温で溶かし始める。

 赤く輝く溶融金属が炉の中で踊るように流れ、適切な温度と時間を見計らいそれを取り出した。


 「よし上出来だ」


 これでウーツ鉱石が作成できたらしい……素材も手順も簡単だった。やっぱり<練合>はレシピが重要みたいだね。

 そして例のごとく<鉱石鑑定>でチェック、


ウーツ鉱石

レア度::★★

必要鍛冶Lv:1

説明:ウーツ鉱石は非常に強靭な耐久性を持っている。武器や防具に使用すると、物理耐久や武具の耐久度が強みになる。


 鉄鋼石よりも硬くて武器より防具に向いてる鉱石なのかな?


 「全ての素材が揃ったな。これでダマスカス鋼を作ることができるな」

 「お願いします」 

 

 元気に返事してさっそく製作工程に進んだ。

 先ずはさっき作ったばかりのウーツ鉱石を炉の高熱で溶かす。

 ―――――そして、次に必要な素材を準備する。


 「次はエーテル鉱石だ。これをウーツ鉱石に加えることで、ダマスカス鋼になる」


 素材が違うだけで、やっていることは“鋼”を作るときと変わらないんだよね。

 エーテル鉱石を慎重に炉に投入すると、炉の中で青白い光が一瞬輝き、溶けた金属同士が混じり合うのが見える。

 そして二種類の鉱石が完全に溶け込むまで、しばらく待つ。


 「よし、次は魔土だ。これでダマスカス鋼の強度をさらに高めるんだ」


 魔土を加えると、炉の中の金属がさらに輝きを増し、赫々と光るダマスカス鋼がより強靭なものへと変わっていく。魔土が完全に溶け込むまで、タタラさんと共に慎重に温度を調整しながら見守る。なんでも温度の調整がミソだとか。


 「―――――最後に純油を加えろ」


 純油を加えると、炉の中の金属が一層滑らかになり、しなやかさが増していくのがわかる。そして全ての素材が完全に混ざり合うのをじっと待つ――――そろそろかな?

 時間がくると、溶けて出来上がった金属を慎重にインゴットの型に流し込む。金属が型に収まると、すぐに冷却のために水に浸ける。水に浸けた瞬間、蒸気が立ち上って金属が冷え固まっていく。

 ―――――これで完成…ダマスカス鋼ができた………波紋模様があって綺麗。


ダマスカス鋼

レア度::★★★

必要鍛冶Lv:25

説明:ダマスカス鋼は、非常に硬く鋭い切れ味を持つため刀剣に適している。また高い強度と耐久性を兼ね備えているため、物理攻撃において圧倒的な威力を発揮する。

 

 おぉー……必要鍛冶レベルLv25の鉱石なんて初めてだ。わからないけど、今見つかってる素材でも最大なんじゃない?少なくとも私が知っている中なら“鋼”と“銀鉱石”のLv15で最大だから、これは間違いなく最高の素材だと思う。


 「せっかくだからそれで武器を作ってみたら?」


 見学してたユキが言ってきた。


 「おう、やってみろ。俺にお前の成長をみせてくれ」


 タタラさんもそれに同調して、確かにそれもいいかもと思った。私も早く使ってみたかったし。

 ―――――そんなわけで、流れで武器を続けて作ることになった。でも作る武器は、使う素材はどうしよう?炉を見ながらじっくり考えてると色んな案が浮かんでくる。

 “エーテル鉱石”が貴重なのもあって、今回用意できたダマスカス鋼は5つだけだからチャンスは一回だけ………………あーそういえば、良い素材が残ってたんだよね。以前倒したシャドウスパイダーの変異種とフォレストサーペントの変異種の素材が。なんだか勿体なくて使わず置いてたんだ。

 だからこれらを使って………、

 

・基本材料

鉱物:ダマスカス鋼×5(必要鍛冶Lv25)

・メインアイテム

素材:狩猟者の鋭い鎌脚×3

・サブアイテム

素材:狩猟者の爪×3

素材:腐蝕の牙×3

素材:腐蝕の鱗×3


【アイテム名:捕食の大刀

レアリティ:★★〜★★★★★

装備Lv:20~30

武器種:刀

ステータス配分予想: 筋力:33~103 敏捷:0~20 

属性:???


ーーーーーーーーーーーーーーー


ステータス最低値:33

ステータス最高値:103


ーーーーーーーーーーーーーーー


要求筋力値:100           

要求器用値:80


ーーーーーーーーーーーーーーー


必要素材:中級火精石×3

必要素材:中級水精石×3

必要素材:中級風精石×3

必要素材:中級土精石×3】


 これでよし………!今までで最高の素材を使っているんだから私も気合を入れないといけない。

 <剛力>と<集中>も使って鍛造を始める。あと<鍛冶の心得Lv9> が成功率を<刀工の巧手Lv3>が更に筋力値と器用値を上げてくれる。

 今の私の筋力値は108で器用値は66で、要求値には限りなく近づけている。


 成功率=基礎成功率*(筋力/要求値)*(器用値/要求値)*プレイヤースキル補正*合計素材レア度


 これを参考にしたら……基礎成功率を50%として……1.1……0.8……合計素材レア度が大体0.50で……これらにスキルと鍛冶道具での成功率バフを乗せたら……成功率は約30%……素材のレア度が高い分いつもよりも厳しいけど……あとはプレイヤースキル補正で補うしかないね。


 「…………ふぅ…やろう!」


 炉の前に立って深呼吸をして気持ちを落ち着ける。これから始める鍛造は、いつもより慎重に、そして丁寧に進めることを意識する。

 まずはダマスカス鋼を再び高温で溶かし始める。炉の中で金属が赤く輝き、溶けていく様子を見守る。適切な温度に達したところで”狩猟者の鋭い鎌脚“を加える。それが金属と混ざり合うと、次に“狩猟者の爪”を投入する。


 ――――バチバチと火花が散る。

 集中を切らさず次に“腐蝕の牙”と“腐蝕の鱗”を順次投入していく。

 炉から取り出した金属はまだ赤熱していて、輝きを放っている。

 私はその金属を鍛冶台に置き、槌を手に取る。槌の重みが手に馴染んで心地よい感触が伝わってくる。


 ―――――カンッ!

 最初の一撃を加えると、金属がわずかにへこみ、明るい火花が散る。この瞬間が鍛造工程で一番楽しい。高揚感が全身に広がる。槌を振り下ろすたびに、金属が形を変えて少しずつ理想の形に近づいていく。


 ―――――カンッ!カンッ!カンッ!と金属の響きが鍛冶場にこだまする。

 槌のリズムが心地良い、まるで音楽を奏でてるみたい。

 一撃一撃に込める力加減と角度を毎回微調整しながら、金属の表面を滑らかに整えていく。そして金属が冷めてくると、再び炉に戻して適切な温度に達するまで待つ。


 ―――――再び金属を取り出して、槌を振り下ろす。今度はさらに力強く、だけど繊細に。一撃の度に意識を目の前の金属に没頭させていく。

 


 ―――――これまでに無い手ごたえを感じた。

 そして最後の一撃を加えた瞬間、金属は完璧な形に仕上がった。

 後は溶かしたそれを“鋳型”に流し込んで原型を形どって……冷却……そして丁寧に研磨して―――――、


 「でき、た………?」


 完成したそれは、刀身全体から淡い燐光を放っていた。



 アイテム名・銘:

レアリティ:★★★★★

装備Lv:30

武器種:刀 (ユニーク)

攻撃力::102

属性::物理

耐久度: 100/100

特殊効果1:斬撃ダメージが10%上昇する

特殊効果2:ダメージを与えた相手を一定確率で<虚弱>にする

特殊効果3:<糸縛>

特殊効果4:<大物喰らい(ジャイアントキリング)Lv7>



 ――――――え……なんか…できちゃった……





作中で使われたスキル・称号の簡単説明

<虚弱>・・・防御力が10%減少する

<糸縛>・・・対象を粘性の糸で拘束する

大物喰らい(ジャイアントキリング)>・・・自身よりレベルが上の相手ほどダメージが上昇する(10%~20%)


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