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23.イベント①_ダマスカス鋼

 煌めく陽光が燦燦と光を放つ中、Fantasy Tale Onlineの世界は静かに息を潜めていた。

 街の北門から出た広大な平原には、数千、数万のプレイヤーたちが集まり、期待と興奮が入り混じったざわめきが広がっていた。正面にはそびえ立つ山脈と、その麓に広がる北の森が見える。広場の中央、その上空には巨大なスクリーンが現れて、イベントの開始を告げるカウントダウンが映し出されている。


 「あと5分!」

 

 誰かが叫ぶと、周囲のプレイヤーたちも一斉に時計を確認し、準備を整え始めた。装備を確認する者、パーティメンバーと最後の打ち合わせをする者、そしてただその場の雰囲気を楽しむ者。平原はまるでお祭りのような賑わいを見せていた。

 そして誰かの呼吸に合わせて、一つ、また一つ、カウントが減っていく。


 「―――――3、2、1…スタート!」


 カウントダウンがゼロになると同時に、北の森から轟音が響き渡り、魔物たちのスタンピードが始まった。プレイヤーたちは一斉に武器を構え、街の扉を守るために立ち上がった。


 「行くぞぉぉぉー!」

 「オォォォォォォォォッッ!!!!!」


 誰かの掛け声とともに、無数のパーティは一斉に前進する。そこに纏まりはなく、我先にと先端を開いていくプレイヤーたち。魔物たちとの激しい戦闘が始まった。


 「ポイントを稼げぇぇ!」

 「邪魔すんじゃねぇ!どけ!!」

 「森だ!森に行くぞ!」


 誰かが叫ぶとプレイヤーたちはさらに奮起し、他のプレイヤーを出し抜こうとより強力な魔物を探しに北の森へとぞくぞくと脚を踏み入れる。

 そうしたイベントの進行とともに、広場のスクリーンにはリアルタイムで進行状況が表示され、プレイヤーたちの競争心を煽っていく。

 こうして第一回大規模イベントが幕を上げた。







******


 外から大きな歓声が聞こえる。イベントが始まったのかな………?私?私は鍛冶ギルドにいるよ。いつも通りに武器を楽しく作ってる。

 初めて鍛造をしてからかなりの数を作ってきた。おかげで、鍛造のコツ?のようなものを掴めるようになっている気がする。


  成功率=基礎成功率*(筋力/要求値)*(器用値/要求値)*プレイヤースキル補正*合計素材レア度


 これが示すように鍛造はただ本人のステータスを上げるだけじゃいけない。鉄鋼石、銀鉱石、鋼、どれを使うか、またどんな素材を使うかによって槌で打つ力加減も変わってくる。鋼を使う場合は他二つよりも強く打つ。だけど強すぎてもダメ、絶妙な力加減で角度と回数を調整するほど武器の出来は改善されていった。

 素材が変われば、要求される技術も変わってくる。その変化を経験則で捉えられそうになっているけど、やっぱりまだまだ日々勉強の毎日である。


アイテム名: 巨人の大槌

銘:No.321

レアリティ:★★

装備Lv:20

武器種:両手槌

筋力:48 

属性:物理

耐久度::100/100

特殊効果1:打撃ダメージを5%上昇させる


 サイクロプスの素材に特定の素材も付け加えることで打撃ダメージアップを付けた。組合わせる素材の相性が良いと上手く長所だけが武器に反映される。この組み合わせを探すのは大変だけど、こういった発見もここ最近の成果だった。

 そしてこれで十本目の“巨人の大槌”が完成した。


 「よし、これだけあれば十分かな……」 


 ポーチにある装備品とポーション類の在庫を確認してギルド出口に向かう。


 「行くのか?」


 背後でドワーフみたいな姿のNPC―――――鍛冶ギルドのギルドマスターであるタタラさんが低くて重みのある声で話しかけてきた。

 私はそれに肯定で答えて外へ出た。

 それで、私が今から何をするかだけど、実はタタラさんにクエストを出されている最中だったりする。なんでかって?それは私の鍛冶レベルが25を超えたから。以前15を超えたときに<練合>の入手クエストがあったみたいにね。イベント?そんなのやってる場合じゃないよね。

 クエスト内容はこれ。 


【クエスト受注:ギルドマスターからの試練

クリア条件:ダマスカス鋼を完成させる

報酬:ダマスカス鋼の製作方法】


 ダマスカス鋼は恐らく普通の“鋼”よりも優れた合金なんだと思う。是非とも作ってみたいのだけど、そこで問題になるのが<練合>に必要な素材である。タタラさんに提示された素材は四つで“魔土”と純油”と“ウーツ鉱石”、そして最後の“エーテル鉱石”で全て。

 最初の二つはお馴染みのものだね。次にウーツ鉱石に関しては、鉄鉱石と炭素の練合で作成できるとタタラさんに教えて貰った。

 で、残り一つのエーテル鉱石、これが厄介なんだよね。タタラさん曰く、この鉱石はここらには存在していなくて洞窟での採掘はできないらしい。でも、


 『―――――だが、手段がないわけじゃない』


 クエスト受注時に会話を粘ったおかげか、タタラさんは続けて貴重な情報を話してくれたのだ。


 『鉱石を喰らう厄介者――――ロックゴーレムの変異種は喰らった鉱石を体内で自身の組成鉱石へと換えている。そしてエーテル鉱石は高魔素地帯に分布する鉱石。つまり魔素生命体でもあるゴーレム、それも変異種が、体内で鉱石を作る過程でその一部にエーテル鉱石が混じるという話を聞いたことがある』


 要約すれば、ロックゴーレム変異種からはエーテル鉱石がドロップするということだ。

 そんなわけで、私はこれからロックゴーレム変異種を狩りに行く。あのとき以来のリベンジマッチということになるけど、私もあれから成長したし今回は助っ人のユキを呼んでいるから大丈夫。

 街中を迷いなく進んで、見慣れた聖職者姿のユキと合流する。

 

 「イベントは良かったの?」

 「今回のはそこまで惹かれなかったの。それにイチカが良い武器を作れたらそれを売る私の評価も上る」

 「わぁ素敵な友情だね」

 

 街の喧騒を背に、私はユキと共に北門へと向かった。道中、イベントに観戦するプレイヤーたちの熱気が伝わってくる。盛り上がってて楽しそう。

 北門に近づくと、門番のNPCが私たちに声をかける。


 「お前たち、外に出るのか?気をつけろよ。外は今、魔物たちで溢れているからな」


 普段は言われない忠告を聞いて私達は街の外へ出た。魔物が溢れる広がる平原と、その先に見える北の森。プレイヤーたちの熱狂的な声が響いている。

 私達はそれらを大きく迂回して避けて行くことにした。



******

ステータス

名前:イチカ

性別:女

メイン職業:侍Lv24

サブ職業:鍛冶師Lv25

HP:741

MP:87


筋力:36(+52)

魔力:5(+0)

物理耐久:14(+25)

魔法耐久:10(+16)

敏捷:18(+21)

器用:34(+17)


パッシブスキル:

<筋力強化Lv8> <器用強化Lv8> <鍛冶の心得Lv9> <採掘Lv7><鍛造主Lv6><投擲Lv6><刀工の巧手Lv3><炎熱耐性Lv2>

アクティブスキル:

<剛力><集中><転装(クイックチェンジ)><火床(ほど)の焔><練合><鉱石鑑定><諸刃の一撃(アサルト・ストライク)

魔法:

称号:【救済を与えし者】【影を狩りし者】【腐蝕を超えた者】


******

ステータス

名前:ユキ

性別:女

メイン職業:神官Lv23

サブ職業:商人Lv26

HP:677

MP:570


筋力:10(+5)

魔力:42(+60)

物理耐久:15(+15)

魔法耐久:30(+25)

敏捷:15(+5)

器用:5(+0)


パッシブスキル:

<見習い神官Lv9><魔力強化Lv8><拡張収納Lv9><癒し手Lv7><聖者の刻印Lv7><交渉術Lv6><慈愛Lv6><高速詠唱Lv4><商神の加護Lv1>

アクティブスキル:

魔法:

光球(ライトボール)><聖弾(ホーリーショック)><治癒(ヒール)><浄化(プリフィケーション)><障壁(プロテクション)><聖なる拘束(ホーリーバインド)><閃光(フラッシュ)><聖なる祝福(ホーリーブレッシング)><聖結界(ホーリーフィールド)

称号:【救済を与えし者】【黄金の手】【深き信仰心】【血の狩人】【妖精の調律者】

作中で使われたスキル・称号の簡単説明

・イチカ

<刀工の巧手>・・・鍛造時に筋力値と器用値を向上させる。

<炎熱耐性>・・・火属性攻撃に対する耐性が増加する。<火傷>状態になりにくくなる。


・ユキ

<交渉術>・・・会話からNPCからの信頼が得られやすくなる

<慈愛>・・・仲間への魔法の効果が向上する

<高速詠唱>・・・魔法のクールタイムが減少する

<商神の加護>・・・<商人>への獲得経験値が増える。

聖なる拘束(ホーリーバインド)>・・・対象を拘束する

閃光(フラッシュ)>・・・対象を<暗闇>にする

聖なる祝福(ホーリーブレッシング)>・・・一定時間、対象の筋力と物理耐久を上昇させる

聖結界(ホーリーフィールド)>・・・一定時間、フィールド内にいる自分を含めた仲間のHP・MPを極微量ずつ自動回復する。

【黄金の手】・・・500万ゴールド以上所持すると得られる称号

【深き信仰心】・・・神官として多くのNPCの悩みを解決すると得られる称号

【血の狩人】・・・ウルフの変異種を討伐すると得られる称号

【妖精の調律者】・・・ピクシーの変異種を討伐すると得られる称号

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