15.新しい装備が欲しい
「ん~……はぁ」
今日の鍛冶はこれで終わりだね。溜めてたサイクロプスの素材も使い切ったし、また狩りをして溜めなきゃいけないんだよね。今度はなんの魔物にしようかな。えぇっと、これまで狩ってきた主な魔物は、Lv5前後ではファングボア、ウルフ、Lv10程度ではグール、スケルトン、Lv15程度ならキラースピア、ブランブルビースト。で、一番高いのが18のサイクロプス。
そんなわけで、そろそろ20以上の素材も使っていきたい訳だけど…………、
「やっぱり、新しい装備を作らないといけないよね」
今の私のメイン職のレベルが20で、ちょうど装備可能レベル20の物を装備できてキリがいい。それに、この前ユキにも言われたし。まだ初期装備なんだ…って、そんなの別にいいじゃんか、ねぇ?この初心者セットは駆け出しから苦楽を共にした言わば相棒なんだから。
なんて実際のところは、鍛冶費用にゴールドを回したくて後回しにしていたら今の今まで着ることになったんだけど。強い武器さえあれば意外となんとかなるしね。
「もっとお金があればなぁ……」
ここ数日は鋼を使った武器を売ってて、これが結構良い値段になったんだけどねー。でも基本的には自転車操業で成り立っているような状況だ。
私が今の武器一つにかける費用が、鉱石と魔物の素材分を差し引いて、〇精石類だけで1万ゴールド。そして一本当たりの平均単価が3万前後。上手くいって一本5万を超えるときがあっても、失敗して1万未満に落ちる時もあるのでプラマイ0のようなもの。これなら2万の収益が上がってる!って思うかもしれないけど、実際はそうじゃないんだよ……。
基本的に鉱石と魔物の素材分を自分で調達していると明言しているものの、実際には全てを用意できているわけではないんだよね。私が一日に作る武器は平均して20本前後で、およそ半分くらいの素材は自分で集めることができている。それがどのくらいか、ここでサイクロプスの素材で鍛造した私の最新作を例に挙げると、
アイテム名: 巨人の大刀
銘:No.131
レアリティ:★★
装備Lv:20
武器種:刀
攻撃力:49
属性:物理
耐久度::100/100
特殊効果1:無
これの鍛造には“鋼”が五つ必要なわけだけど、鋼一つの練合に鉄鉱石(1000G)、石炭(500G)、魔土(500G)、純油(500G)で計2500G×5で1万2500ゴールド必要。武器十個分で12万5千ゴールド。
そこから魔物の素材をユキから売って貰ったりして武器一つ2万、十個分で20万ゴールド。
つまり、鉱石と魔物の素材の半分を自力調達したとしても、武器二十本分を作る為には42万5千ゴールド必要なわけ。
で、作った武器の内、自分で保管する2割ほどは売却しないので、3万×16の48万が売上。どんぶり計算で純利益は5万5千となる。そしてそこに、定期的に道具が壊れたときの新調費がかかったりするわけで…………結構きっっつい。というか全ての素材を購入した場合、成功品を作らないと黒字にならないんだよねー。
それなら、素材や鉱石をもっと自力調達すればいいと思うかもしれないけど、20本分の素材を集めるのは現実的に時間が足りないので無理。かと言って、ペースを落とせば鍛冶レベルの成長は今よりもずっと遅くなってしまって嫌。
まぁ結局ゴールドを溜めるには、使わない素材を売ったり自力調達の割合を増やすしかなかったわけだけど…………、
「………25万………足りるかな?」
そろそろ装備を変えようとコツコツ節約して溜まったのが25万。どうせならこのレベル帯で最高の装備を揃えたいんだけど、これじゃあ足りないよねぇ。妥協するしかないかな………はぁ。
「困りごと?」
ん?誰?明るい声………あ、
「ヒスイさん久しぶり」
「うん、おひさ~!」
明るい長髪をポニーテールにしたお姉さん―――――ヒスイさんがにこやかに笑いながら近づいてきた。
「どうしたの?ため息なんかついて」
「いや、ちょっと防具を新調しようと思ってるんだけど、予算が足りなくてねー」
「装備って結構お金かかるもんね。あーでも、私いいお店知ってるよ!特別安いわけじゃないけど、品質は約束できる!」
彼女はいつも明るくて、周囲を和ませる力があると思う。なんて感想は今は置いておいて。
「本当?是非聞きたいな」
「ラピスの衣装店って言うプレイヤーショップだけど、知ってる?」
「聞いたことかな」
そもそも、私が知っている店がどれくらいあるのか疑問ではあるけど。片手で数えれそう。
「そっか、じゃあ一緒に行きましょ!」
「それは助かる!ありがとうね、ヒスイさん」
彼女はいつだって私が困っているときに現れてアドバイスしてくれる。――――え、私……落とされようとしてる?狙われてる?
「いいってことよ。じゃあ、今から行ってみる?」
「あ、でもヒスイさんは鍛冶をしに来たんじゃないの?」
「大丈夫!どうせ私も後で行こうと思ってた場所だから」
「じゃあ行こう!」
「よーし!道案内は任せて!」
鍛冶ギルドを出て私はヒスイさんに連れられて目的地に向かって歩き始めた。道中、ヒスイさんはラピスの衣装店のことを詳しく教えてくれた。
「ラピスの衣装店は、ラピスっていうすごく腕がよくて可愛い店主がやってるお店なんだ。彼女は素材の選び方からデザインまで全部自分でやってて、どれもこれも凄いんだよ!」
「へぇ大絶賛だね。それに可愛いって、店主は女性なの?」
「うん可愛い女の子、しかもあの子はお客さんの要望をしっかり聞いてくれるから、自分にぴったりの装備が手に入るんだ」
「それは楽しみ。私も自分に合った装備が欲しいなぁ、でもゴールド足りるかな」
しばらく歩くと、目の前に小さな店が見えてきた。外壁は淡いブルーと白を基調としたデザインで、店の前には小さな庭があって綺麗な花が咲いている。そして、店の看板には「ラピスの衣装店」と書かれていた。
「ここだよ」
「わぁ、可愛らしいお店だね」
「でしょ?ちなみに店主は私の妹なの」
「…………え!?」
「さぁさぁ!入ってみよう!一名様入りまーす!」
や、やられたー!




