14.合金を作ろう
「これが鋼だ」
あの後NPCの男が鋼作りに集中したため運よく槌の出番はなく、見学が終わると男が完成した鋼を見せてきた。
「よし、お前もやってみろ。失敗したら笑ってやる」
「はーい」
はぁ……精神的にちょっと色々あったけど、なんとか実演まで漕ぎ着けた。後は、見た通りの手順でやっていけばクエストクリアだね。鋼かぁ今から使うのが楽しみだなぁ。
―――――よしやるか。
基本的にやっていること自体は素材を溶かして一つにしているだけ。注意するべきは素材を使う手順かな。
先ずは炉の温度を慎重に調整して、鉄鉱石が赤く輝き始める。鉄鉱石が徐々に溶けていく様子を確認したら、次に“石炭”を加える。石炭が炉の中で燃え上がって、鉄と混ざり合うと炉の中は一層明るさを増した。
いやぁ鍛造のときもだけど熱いねぇ、体感的にはゲームだからそこまでだけど視覚的に熱いんだよね。プラセボ効果的な?まぁ何でもいいけど、この炉の炎を見ると落ち着くから好きなんだよねぇ。
「おい、ぼーとするな。それとも手順を忘れたのか」
…………分かってますよーだ。今良いとこなんだから浸らせて欲しいよね。
石炭を入れた次は“魔土”を投入する。この人曰く、土に含まれている魔力が鋼の強度を上げるとかなんとか。そう言えばこの“魔土”ってユキがリッチ討伐の洞窟探索の際に採取してたんだよね。私も拾っておけば良かったな。
―――――で、魔土が溶け終えたら最後に“純油”を加えるんだよね。純油は鋼の粘り強さを増して、よりしなやかにする意味があるらしい。
「よし、手際がいいとは言えないがちゃんと出来たな。なら仕上げに入れ」
「…………」
あー後ろがうるさいなぁ……この熱々の金属を投げつけるよ?手が滑るよ?――――――って……まぁいいや仕上げに入ろう。
最期は溶けた金属をインゴットのような型に流し込んで、冷却するために水に浸ける。鋼が冷え固まるのを待って――――――完成だね。
「ふん、まぁまぁだな。基本中の基本の技術ではあるが、まぁ及第点といったところか。もっと練習しろよ」
「うっさいバーカ」
「何か言ったか?」
「気のせいですね」
「ふ、そうか。なら俺から教えることはもうない」
あ、クエストクリアして男も何処かに行った。二重の意味でやったね!
さて、さて、さっそく新しく獲得した<練合>ってスキルを見てみようかな。えっと、鉱石素材を合成して新しい鉱石を作り出すスキルか。どの程度の自由度なんだろう?そこら辺はこの後に試してみるとして―――――あれ?他にも新しいスキルが増えてる。<鉱石鑑定>?ふむふむ…………へぇ獲得した鉱石の特徴を知れるスキルね。鋼を手に入れて私が獲得した鉱石の種類が一定数を超えたから手に入ったのかな?まぁ真偽はわからないけど、手に入ったなら活用させて貰おうかな。さっそく“鋼”に使ってみよう。
鋼
レア度:★★
必要鍛冶Lv:15
説明:鋼はその強度と耐久性から、打撃武器でも斬撃武器でも高い性能を発する。また、耐久性と重量を活かすことで雑に使う高重量系の武器が適している。
なるほどね~内容としては普通のフレーバーテキストと比べて、鍛冶方面に特化したものになっている。鍛造時の素材の役割に関してはこの間十分に調べたけど………へぇ鉱石にも色々あるもんなんだぁ。説明書きを見るに、結構汎用的に使えそうだけど必要鍛冶lvが同じ“銀鉱石”はどうなんだろう?
銀鉱石
レア度::★★★
必要鍛冶Lv:15
説明:銀鉱石は魔力の伝導性が高く、魔法武器や装飾品に適している。また武器に用いた場合、耐久性は低いが軽量さと鋭さが強みになる。
ふーむ、つまり基本的には鋼を素材にして武器を作るのが良くて、短剣とか片手剣には銀鉱石を使った方が良いということかな。よし、今後はそういった面も考えていこっと。<鉱石鑑定>か、手に入れて良かったスキルだったね。
さて、少し寄り道をしてしまったけど、本題に戻ろう。<練合>について色々と試すんだったね。先ずは適当に素材を選んで作ってみるか。えっと、さっきの鋼作りにならって銀鉱石、石炭、魔土、純油の四種類にしてと――――――――、
「よし出来た!」
で、これを<鉱石鑑定>で調べると………、
失敗した合金
レア度::★
必要鍛冶Lv:1
説明:失敗した合金。練合の過程で硬度と柔軟性を失ったため、この金属で作った武器は耐久性が極めて低くなる。
うーーーーーーん、失敗!なるほどねぇ、鍛造と一緒で適当に作っても良い結果は得られないということか。ならどういう組み合わせなら上手くいくんだろう?もう少し色んなパターンを試してみよう。
――――――――結果、ゴミのお山ができました。はい、難しい!鍛造より難しい!試しに銀鉱石とか鉄鉱石とか銅鉱石とかいろいろと使ってみたけど全部“失敗した合金”に変わってしまった。まぁ適当にやっても無理だってことは分かったし、これ以上は高い鉱石が無駄になっちゃうし実験は終わりかな。成功させたいならレシピを別で入手するか、教えて貰うしかないか…………。
あとは最後に失敗した合金を使って武器を作ろう。在庫処理、在庫処理!数本程度は作れるかな。サイクロプスの素材は勿体ないし、メインの材料にはキラースピアのを使って長槍を作ろうかな。最近投擲にハマっててね、投げて使うんだ~。
・基本材料
鉱物:失敗した合金×3(必要鍛冶Lv1)
・メインアイテム
素材:鋭い先鋒×3
・サブアイテム
素材:キラースピアの顎×3
素材:強靭な脚×3
素材:透明な羽×3
空いている枠は適当な素材で埋めて、これでよし!あとはこれをゴォゴォ熱して鍛えていけば―――――――一丁出来上がり!さぁて、その性能は如何ほどなのかなー。
アイテム名: 刺針の長槍
銘:No.131
レアリティ:★★
装備Lv:20
武器種:長槍
攻撃力:21 敏捷:8
属性:物理
耐久度::20/20
特殊効果1:刺突ダメージが5%上昇する
特殊効果2:<脆弱>が付与されている
<脆弱>・・・アイテムの最大耐久度が大きく減少する
予想はしていたけど、これはまた酷い効果だね。<脆弱>かぁ、最大耐久値が20まで下がってるのは結構辛い。耐久度って意外となくなるのが早いんだよね。上手に使える人ならそうでもないんだろうけど、私は見よう見真似で雑に使ってるから武器はボロボロ。だから気に入っている武器は定期的に砥石で耐久値を直してるんだよね。
――――じゃあ残りの合金を始末していくか。素材は適当に、もったいないからあまり良いやつは使わないでっと。
今は取り敢えず、最高の一振りではなく沢山武器を作って鍛冶レベルを上げることが目的。沢山作って、一部以外は売って、手に入ったゴールドでまた武器を作る。そうやってコツコツ頑張るのだ。
ぐつぐつ、カンカンカン―――――うわぁ……ゴミが沢山出来ていく。なんだか素材に対する著しい冒涜を感じるけど、よーしまだまだやるぞ――――!




