12.素材選びには気をつけよう
リッチ討伐から数日が経過した。ゲームを始めてから換算すると一週間だろう。
基本的にゲームでの私の行動は、採掘→狩り→鍛冶→採掘のサイクルを永遠と続けている。そして、あの日にユキと武器の売買をするようになってからは、私の鍛冶効率は一層高くなって鍛冶レベルが結構上がった。17になって徐々に上昇速度が下火になったメイン職に対して、鍛冶レベルは15まで上がった。この勢いならもうすぐ追い越しそう。
そして今日も、前日に作った武器の内15本がゴールドへと変わった。
「ねぇユキ、30万ゴールドも貰ってよかったの?結構失敗作もあったけど」
「その分悪くないのもあったしね。それに友達から儲けようだなんて思ってないから」
「さっすがユキ~!今度何か奢ってあげるね、何でも言って!」
親友の温かな心遣いに山脈のように大きな見栄を張ってみる。そしてユキは「じゃあ」と頤に指を当てて考える仕草をして、答える。
「―――――麗華堂のラグジュアリーマカロンギフトがいい」
「それめっちゃ高いやつじゃん!しかもリアル!」
「あははウソウソ。こっちの巫女さんの団子でいいよ。こっちでもお金に余裕があるわけじゃないでしょ?」
「………お気遣い感謝します」
最近、私の収入が増えているのは確かだけど、その分だけ支出も増えているので実は決して懐が暖かいわけでもなかったりする。張った見栄を見抜かれたようで情けない限りだった。
そして私を揶揄って満足したのか、ユキはもう鍛冶ギルドから離れるらしい。私はここに残るのでここから別行動だ。プレイスタイルも違うし私達はいつも一緒にプレイするわけじゃないからね。
「これからどうするの?」
「イチカの武器とかを他のプレイヤーに売りに行ったり………色々?」
「なんだそれ………まぁ頑張ってね」
他に何するのかは知らないけど応援しておく。ユキが色々と言うのだからきっと本当に色々だろうからね。
そしてユキはひらひらと手を振りながら、ギルドの出口に向かって歩き出した。私はその背中を見送って次の作業に取り掛かる準備を始める。
取り出した鍛冶道具は、これまで使っていた“低品質”シリーズから二段階くらいグレードアップした“高品質”シリーズである。
・道具アイテム
高品質な鉄槌(15000G)
高品質な銅金床(15000G)
高品質な鉄鉗子(10000G)
高品質な砥石(5000G)
高品質な鉄鋳型[片手剣](10000G)
高品質な銅やすり(10000G)
駆け出し用だった“低品質”シリーズと比べて本格的な道具なだけに値段自体は跳ね上がっている。だけどその分、鍛冶の成功率は上がっている。とくに扱う素材のレベルに対して道具が適していないとその分成功率は減少するようになってるから、より強い武器を作ろうと思うならより良い道具は必須になってくるっていうわけだね。
―――――ちなみにだけど、現在の“高品質”シリーズとは一番低ランクの素材によって作られた道具での話なわけで、見てもらったら分かるけど主に使われているのは“鉄”に“銅”に“石”。これらは私が発掘でもよく採ってきたような素材だね。だから、今よりいい道具なら鋼製とかになるのかな?銀はどうだろう?融点は低いけどファンタジー的には全然ありそう。
まあ、余談はこの辺にしてと。今日することは、ここ数日の鍛冶を通して分かってきたゲーム的な武器鍛造の仕組みについての確認ってところだね。
じゃあ前提知識として、武器名についても話そうか。ここでいう武器名はプレイヤーがつける銘とは別でシステムによって始めから付けられているものね。言い変えればアイテム名であり“ユニーク”と言われる特殊な例を除けば、プレイヤーが武器を作るとき必ず何かしらの武器種へと収束するようになっているわけ。例えば、私が最初の頃に“野生の長槍”という物を作ったけど、あれはファングボア等の低レベルの獣系素材を使えば誰が作っても必ず“野生の○○”という種類の武器が完成するようになっているっていうこと。その上“獣系の魔物に対するダメージが5%上昇する”と言った特殊効果は据え置きで全ての武器に存在してる。
ではここで疑問。ならプレイヤーによって作られる武器の性能差は出来栄えによるステータスの差でしかないのだろうか?そしてまぁ、そんなことを考えて色々試したのがここ数日というわけ。
じゃあ次に思い出す知識が、武器鍛造によって作られる武器の効果がメインアイテムとサブアイテムによって決められること。これはもう周知だよね。
ならここで言われている武器の効果とは何なのか。あくまで武器の収束先を決めるためだけの要素でしかないのか、他にも意味があるのか。
結論からいえば後者が正解だったんだよね。
確かに用いる素材は収束先を決める重要な要素になってるけど、完成時のステータス配分や据え置き以外の特殊効果の付与にも大きく影響を与えていることが分かった。つまり、同様の武器名でも全く異なる性能をもつということも十分にあり得る。というのが私の結論なわけ。
とは言っても、実例があった方が分かりやすいということで、ここ数日の集大成とも言える検証を今から始めるね。
今回作る武器はこちら。序盤はレベルが上がりやすいから、作る武器がどんどん変わっていくんだよねー。
アイテム名: 刺針の長槍
銘:No.117
レアリティ::★★
装備Lv:15
武器種:長槍
攻撃力::30
属性::物理
耐久度: 100/100
特殊効果1:刺突ダメージが5%上昇する
これは私が昨日作ったもので、売らずにとって置いたものね。
絶対評価の出来としては中の下といったところで、特殊効果は据え置き、素材は森にいるキラースピアっていう蜂からドロップする素材だけを使った。
じゃあここから、用いる素材に少しアレンジを加えてもう三種類作ってみよう。使う素材はこちら、既に集めてるよ。
セット1
・基本材料
鉱物:銀鉱石×5(必要鍛冶Lv15)
・メインアイテム
素材:鋭い先鋒×3
・サブアイテム
素材:キラースピアの顎×3
素材:ファングボアの牙×3
素材:グールの血×3
セット2
・基本材料
鉱物:銀鉱石×5(必要鍛冶Lv15)
・メインアイテム
素材:鋭い先鋒×3
・サブアイテム
素材:キラースピアの顎×3
素材:透明な羽×3
素材:強靭な脚×3
セット3
・基本材料
鉱物:銀鉱石×5(必要鍛冶Lv15)
・メインアイテム
素材:鋭い先鋒×3
・サブアイテム
素材:キラースピアの顎×3
素材:キラースピアの毒袋×3
素材:シビレ花×3
セット1はキラースピアの素材をメインに、全く関係のないファングボアとグールの素材を混ぜて作る。セット2はキラースピアの素材を使いつつも、No117で使ったものとは異なる素材を使う。最後にセット3はキラースピアの素材と麻痺効果のある花をプラスして使う。
そして、いつものように槌を振って―――――出来上がったのがこちら♪
上からセット1~セット3。
アイテム名: 刺針の長槍
銘:No.122
レアリティ:★★
装備Lv:15
武器種:長槍
攻撃力:21
属性::物理
耐久度: 100/100
特殊効果1:刺突ダメージが5%上昇する
アイテム名: 刺針の長槍
銘:No.123
レアリティ:★★
装備Lv:15
武器種:長槍
攻撃力:24 敏捷:6
属性::物理
耐久度: 100/100
特殊効果1:刺突ダメージが5%上昇する
アイテム名: 刺針の長槍
銘:No.124
レアリティ:★★
装備Lv:15
武器種:長槍
攻撃力:28
属性::物理
耐久度: 100/100
特殊効果1:刺突ダメージが5%上昇する
特殊効果2:敵にダメージを与えたとき低確率で麻痺させる
という結果になった。なるほど……というか大方予想通りの結果だね。セット1で作った武器は低レベルの、それも全く関係ない素材を使ったためか出来栄えがあまりよくない。そしてセット2ではNo117とは異なり敏捷性が上がりそうな素材を使い、その通りに敏捷性と筋力の二つのステータスを持つようになった。最後のセット3では麻痺成分を持つ素材を使った結果、そういった特殊効果が付いた。
このように全く同じ武器名でも、素材の違いによって性能は大きく変化するというわけだ。
―――――とまあ、色々とやってみたものの、今にして思えばこれらに関しては呪いの武器を作ったときに殆ど結論は出ていたようなものだったよね。だって、あの“血骨の太刀”はグールとスケルトンの素材を使ったら作成可能な武器で本来は呪い効果を持っていない。だけど、あのとき私が呪われている素材を使ったから、武器にそういった効果がつくようになったというわけだった。つまり、結論としては素材選びには気をつけよう!ってことだね。
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ステータス
名前:イチカ
性別:女
メイン職業:侍Lv17
サブ職業:鍛冶師Lv15
HP:490
MP:74
筋力:23(+32)
魔力:5(+0)
物理耐久:10(+6)
魔法耐久:7(+2)
敏捷:12(+2)
器用:20(+2)
パッシブスキル:
<筋力強化Lv5> <器用強化Lv5> <鍛冶の心得Lv6> <採掘Lv4><鍛造主Lv3><投擲Lv2>
アクティブスキル:
<剛力><集中><転装><火床の焔>
魔法:
称号:【救済を与えし者】
<鍛造主>・・・自身で鍛造した武器を装備時、武器ステータスを上昇させる
<投擲>・・・投擲ダメージが上昇する
<火床の焔>・・・自身で鍛造した武器のダメージを一時的に上昇させる




