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しいな ここみ様主催企画参加作品

発生源


某養豚場


「なんだぁ? 豚が共食いしてるだと? 馬鹿も休み休み言え」


「社長、本当なんです、ご自身で見てもらえば分かります」


「う、本当だ……餌のやり忘れじゃないのか?」


「餌箱を見てください、餌でぎっしりと埋まってます」


「こんなの聞いたことが無い、畜生ー! 仕方が無い、このまま全部屠って出荷してしまえ」


「良いんですか?」


「屠ってしまえば誤魔化せる、構わんから全部出荷しろ」


「分かりました」






最近巷で奇妙な事件が流行っていた。


人が人を襲い、襲った人が襲われた人の肉を食べるという事件。


何らかの病気に感染して人が人を襲うのではと言う噂もある。


政府の秘密情報機関に勤務している私は、表向きは内閣官房長官を勤めている上司から、噂の真相を確かめ噂が事実ならその最初の発生源を突き止めるよう指示された。




真相を突き止めた私は、その事を上司に報告するため上司の下に向かう。


上司は都内の某レストランで、医師会の会長や大学病院の病院長等を招いて会食を行っているらしい。


レストランの駐車場に車を止めレストランの看板を見上げた。


看板にはトンカツレストランと店名が書かれている。


そういえば以前うちの上司の大好物がトンカツだと聞いた事があったな。


駐車場を警備している顔馴染の私服の警察官たちに挨拶し店内に足を踏む入れようとした時、店内から悲鳴と怒号が響いて来た。


「キャアァァァー!」


「噛むなー!」


「痛い! 痛い! 喰わないでくれー!」


警備していた警察官たちと顔を一瞬見合わせたあと直ぐに拳銃を片手に店内に突入する。


店内では上司やテレビで見たことのある医師会の会長などが、店のウェイターや部下の秘書官などに襲い掛かり、彼らの身体の肉を食い千切っていた。


あー、糞! 此処の肉も汚染されていたか。


店内にいた警護のSPたちと共に上司や医師会の会長等を取り押さえようとしている、駐車場にいた馴染みの警官たちに警告と指示を与える。


「噛まれるな! 噛まれると感染するぞ! 店を閉鎖して店内の人間を全員拘束しろ!」


最初の発生源は某養豚場の豚。


病原菌に感染した豚は他の豚に襲い掛かり襲われた豚の肉を食べ、襲われた方の豚も直ぐ感染して直ぐ他の豚に襲い掛かり肉を食べようとするのだ。


その病原菌に汚染された豚の肉を食べると、食べた人間も病原菌に感染して他の人間に襲い掛かり襲った人の身体の肉を食べる。


そして襲われた人間もまた豚と同じように直ぐ感染して、ゾンビのように他の人間を襲う。


この病原菌は火で焼いても高温の油で揚げても死滅しない為、病原菌に感染した豚の肉を調理して食べると感染する。


だからこの店の感染源はトンカツって事。


ただテレビや漫画でお馴染みのゾンビと違い病原菌に感染しても感染者は生きていて、病室に隔離して感染していない人の姿が見えなくなると理性を取り戻す。


理性を取り戻しやってしまった事を思い出すと、当然の事ながら胃の中の物を吐き出そうとする。


この吐瀉物も感染源になるため、慎重に取り扱い処理しなければならない。


今のところ豚と人の感染しか確認されていないが、ネズミやカラスが共食いしていたという目撃情報が新聞社やテレビ局に寄せられている。


それと犬や猫などのペット類の共食いも動物病院や保健所から報告されていた。






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― 新着の感想 ―
[良い点] コロナもこんなふうに広がったのでしょうかね……。 恐ろしくも私のようなテキトー人間には教訓となるようなお話でした。 [気になる点] 膨らませて長編にもできる作品ですね(^o^) [一言]…
[良い点] これはエンドレスの怖さがあります。 私が妻を食うか。 妻が私を食うか。 それとも……。 私が妻の手に食いつき、妻が私の足に食いつく。 こうしたみにくい共食いも始まるのでしょうね。
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