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日常

「準備出来たの~?」

「大丈夫~!」


僕は今日からまた学校に復帰する。約二ヶ月も入院していると筋力が落ちたのか、退院当日は走ることが出来なかった。いや、正確には出来たがちょっと走るとすぐ、息が切れるのだ。でも二日もすれば、ある程度は走ることが出来るようになった。

僕は教科書が入っている鞄を背負って靴を履く。


「行ってきます!!」


僕は光の中に走りだした。久しぶりの制服、久しぶりの道、どれも僕に懐かしさをくれる。


「だーれだ!」


そんなのんびり歩いていると後ろから手で僕の視界を遮ってきた。花蓮だ。う~ん。このまま当ててもつまらないよな・・・。よし!


「あ~誰だ~?わからないよ~{棒}」

「分かってるでしょ!!」


僕が棒読みで言ってみると花蓮が手を離した。そしたら花蓮が飛びついてきた。うっ。

まだ僕には抱きつかれるのはきつかったか・・。花蓮は腕を僕の首に巻き付ける。


「がれん(花蓮)、ぐるじい(苦しい)。はなじて(離して)」

「あ!!ご、ごめん!」


がはっ、ごほっと僕は咳き込んだ。そしたら花蓮がごめんね本当にごめんねと何度も謝ってくれた。もう大丈夫と言えばつい浮かれちゃってさ・・。と花蓮は苦笑いをする。僕も会いたかったと言えば花蓮はまた僕に抱きつきえへへ~と笑っていた。

前までこんなにくっつく子だったか?

あの事件以来、花蓮は僕に甘えるようになったと思う。何でもこれから僕が狙われる可能性があるからと言って昨日は僕から離れなかった。花蓮のお母さんに言ってみたが、


「今は許してあげて。ずっと罪悪感でいっぱいだったのよ。私のせいで拓也が~って」


それを聞いたら流石にはねのける事も出来なかった。そして今これだ。僕は花蓮と手をつなぎながら、学校に向かった。流石に学校に着くと花蓮も手を放してくれた。また後でと言って先に行ってしまった。当たり前か・・。学校では付き合ってることは内緒にしているからな~。

そして教室に入る時だった。後ろから知っている声が聞こえた。


「よお、今日からこれたんだな」


そこには今回の事件でお世話になった、啓二がいた。もう6月後半、啓二は半袖になっていた。

日焼けした腕が見えると、体育系だなと思う。


「うん。金曜日に退院したからね」

「あれ?前の口調はどうなったんだ?前の方が格好良かったぞ?」

「あああ。いや、あれは・・忘れた!」

「いや、覚えて・・」

「あ~あ~。聞こえない~」


僕は昔から頭に血が上ると口調が変わってしまう。それが僕の・・僕の唯一の嫌なところだった。皆からは格好いいと言われるが・・・。

絶対に花蓮にはばれないようにしないと・・。


「どんな口調だったの?」

「うわあああああああ!!」

「何~?大きな声だして~」

「ああ。あんたを助ける時に・・・。何でもねえ」


僕が啓二に圧を送ったのに気づいたのかこいつちょっとかりるぞと言って僕を連れ出してくれた。


「あのなぁ。怖かったんだけど・・・」

「絶対に他の子にばれたくないの!!絶対に誰かの前でこの話題出さないでね!!」

「お、おう」


念には念を入れる。僕は啓二にもう一度圧を送った。すると啓二は両手を前に出して


「分かった。分かったよ。だからそんなに圧を送らないでくれ」

「ならいいけど・・」


僕は啓二と教室にもどった。今度は皆に質問攻めにあった。そっか、花蓮が言ってたっけ・・。


「どうやって見つけ出したの?」

「格好いいよね~」

「ニュースでみたよ~」


勿論全部答えることは出来ないので僕は黙ってしまった。そしたら花蓮が


「そんなに質問攻めしたら可哀想でしょ!ほら、もどって!」


僕は花蓮に助けられた。ほわほわしていると耳元で啓二が呟いた。


「いい彼女だねぇ~」


バシッ


僕が気がつくと啓二の筋肉がついたお腹にパンチをしていた。それでも啓二は何とも無いのか、顔色は一切変わらなかった。さすが体育系。腹筋が割れているわけか・・。こんな啓二もモテている。まあ、顔は良いし、運動出来るし・・。


「ほら~。座れ座れ。今日からは佐々木も復活するぞ~」


先生がやってきた。大丈夫か?と背中を叩かれながら言われた。その言葉を言うなら、叩かないでくれ。背中がヒリヒリする。僕は背中をさすりながら自分の席に座った。いつも通りの教室。いつも通りの会話。いつも通りの日々が僕にはキラキラして見えた。

ああ、戻ってきたのか。

先生がミーティングをしている間は皆は話している。これも日常。


僕は皆を眺めながらいつも通りの日常に感謝する。花蓮と目が合った。花蓮は僕の右斜め前に座っている。小さく手を振られたので僕も小さく振り返す。


僕の髪は風によってなびいていた。おまけに先生の髪・・の毛は一切なびいていなかった。


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