表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

寒気の原因 2

僕の目が覚めたらそこは知らない場所だった。カーテンがなびき、真っ白なこの部屋には薬の匂いがした。あ、ここ、病院か・・。あの後どうなったのかな?

そんなことを考えていると、自分の手に重みがかかっていたのに気づいた。


「え・・花蓮?」


そこには、僕の彼女の花蓮が眠っていた。痛っ。僕は足に激痛が走った。恐る恐る足を見ると包帯が巻かれていて何も見えなかった。


「ん・・」


花蓮が目を覚ました。僕と目が合うと涙目になり、抱きついてきた。


「わぁぁぁぁぁぁぁぁ。良かった・・良かったよぉ・・・」


花蓮は大粒の涙を流しながら僕にそう言った。僕は戸惑ってしまい、とりあえず抱き返した。

今、僕の心臓の音は花蓮にも聞こえていると思う。だって僕自身に聞こえていたから。僕の胸辺りにいる花蓮には絶対に聞こえているだろう。


「心配したんだからね!!」

「うん・・。ありがとう」


僕は笑顔で返した。花蓮はニコッと笑って、良かったと呟いた。その後、花蓮が


「心臓の音凄かったけど、緊張したの~?」


と、ニヤニヤしながら聞いてきた。僕は頭から湯気を出して、顔を赤くしながら”だって、泣き顔が可愛かったから・・”と答えると予想外の答えだったのか、花蓮もボンッと頭から湯気を出して顔を赤らめていた。すると、次の瞬間ガラッと扉が開く音がした。


「はいはい。彼氏彼女仲良くするのは良いけど、診察の時間ですよ~」

「ははははい!すいません!」


看護師さんは、ニコニコしながら入ってきた。勿論僕たちの心臓は飛び出しそうになったけど、間一発で抑えることに成功した。花蓮は僕と居たときよりも顔を赤くして病室を出ていった。


「良い彼女さんですね。ずっと居てくれていたんですよ」

「はい。僕には勿体ないくらい・・」

「そんなことはありません。三日間、君が目を覚まさないかずっと心配されていました。その時おっしゃていたのですが・・」


”私には釣り合わないくらい、とても優しい人なんです。とても大切で・・ああっすいません!こんなことを!”と、僕の耳元で、誰にも聞こえないような小さい声で話してくれた。そうか。僕はそんな風に思われていたのか。僕も花蓮と同じく、爆発するくらい顔が赤くなった。


「ふふ、初々しいですね」


笑いながら看護師さんは診察を始めますよ~と、診察を始めた。


「足の痛さはありますか?」

「動かそうとすると少し痛みます」


僕が答えると、看護師さんは何かを書いていた。


「なるほど。それは仕方ありません。なにせ縫うほどの傷だったので・・」

「え?!ぬ、縫うほどの傷だったんですか!!」


僕は今まで縫うほどの傷は負った事はなかった。お医者さんの”縫う”の基準は知らないが、僕には”縫う”という言葉が凄く衝撃的だった。い、いやそれよりも僕は三日間も眠っていたのか。皆どうしてるかな?そんなことを考えながら空を見た。風が気持ちよく、僕の髪の毛を揺らした。


「それじゃあ、足の痛みが無くなるまで安静にしていて下さい。良いですか!!無理やり動かしてしまうとまた傷口が開いてしまいます!!絶対に安静にしていて下さい!!」

「は・・はい」


僕は看護師さんの勢いに押されてしまった。看護師さんの顔はとても怖かった。


「それと、君を襲った事件は解決の方向に向かっています」

「事件?あれは運転手の不注意では無いんですか?」

「ええ。運転手の言動がおかしかったから血液検査をしたの。すると、催眠薬が検出されたわ。でも運転手は”そんなの吞んだ覚えが無い”っていうの.そこで君の彼女が捕まえた田中千裕と一度会わせてみたらしいわ。するとあら不思議!運転手が反応したの。”この子!!俺に何か知らない飲み物を配っていた子だ”って。まあそんなことを言ったら勿論その子に目線がいったわ。そしたらその子、大きな声で”僕の花蓮様に近づくからだ!!これは花蓮様に近づいた当然の報いなのだ!!花蓮様は僕と一緒に居るべきなんだ!!”なんて言ったの。そしたら君の彼女、花蓮ちゃんは跳び蹴り。格好良かったらしかったのよ!見たかったな~。これの続きは、直接彼女に聞いてね。

いい?もう大丈夫なんだから絶!対!安!静!にしていてね」


説明してくれた看護師さんは”じゃあまた明日”なんて言って出ていった。また花蓮に心配かけちゃったな・・。でも何か腑に落ちない。何か分からないけど・・何かが。まあ今そんなことを考えても仕方ない。どうせ安静にしていないといけないんだし。僕はもう一度ベッドに寝転んだ。花蓮が来るまで・・。でも、どれだけ待っても花蓮は来なかった。僕が立てるくらいになっても、花蓮は来なかった。


「今大変な事になっているの!あの、君が関わった事件の犯人の田中千裕がいなくなったの!!そして花蓮さんも!」


看護師さんの言葉で僕の謎は解消された。田中千裕が言っていた”花蓮様は僕と一緒に居るべきなんだ!!”そう、最初から花蓮を誘拐するつもりだったのだ。そのために色々と準備していた。僕が動けなくなるように、僕が助けられないように。そして今、その全てが揃ったから作戦を実行したのだ。僕は病室に戻った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ