体育祭 2
うう~、緊張するな。僕の周りは皆凄いのに僕だけ体育は駄目駄目だしな~。
僕はかごの真下に立った。どこからが一番入れやすいのか、脳内計算する。
ここかな?僕はかごから一メートル離れたところに立つ。皆もそれぞれの位置についたようで、開始の音が鳴り響いた。
ワァァァァァ
皆の歓声の中、僕は一生懸命にかごの中に入れていた。外すときもあれば入る時もある。これって運ゲーでは?僕は考えてしまった。
「いけー、拓也!!」
「頑張れーー!」
皆の歓声って凄いな~。何だか出来るような気がしてきた!僕はとりあえず当たって砕けろを心に、投げ続けていた。三分の二くらいの確率で入る。
終了の笛が鳴り響く。皆の動きが止まったあと、生徒会の人達が一生懸命に数えていた。その間皆がドキドキしていたと思う。だって『どうだろう~』って聞こえたから。
そして発表の時、僕のクラスは3位だった。あっけなく終わったその発表に、時間差で僕は落ち込む。あ~~やっぱり駄目だった・・。戻ろう、そうしよう。
「ドンマイ!」
「大丈夫だよ」
席に戻ると皆が励ましてくれる。うん。嬉しいのは嬉しいのだが、皆の活躍が凄すぎて自分が惨めに思えてしまう。
僕が落ち込んでいる中、全ての競技が終わっていた。速くない?僕そんな長い間落ち込んでないよ?
まあ確かに途中で花蓮が消えたりしたけどさ・・。
「ほらっ、閉会式だ。元気出せ!」
「うん。ありがとう」
僕たちは整列して、校長先生の話と結界発表を聞いていた。校長の挨拶はやっぱり短く、『よく頑張った』だけだった。そして結界発表。
何故皆がこんなに真剣に取り組んでいるのかと僕は思った。そして思い出す。
個人賞を取った人には何でも貰える、団体で優勝したチームにはよく分からない指輪が贈られるんだった。そのよく分からない指輪を交換しら、永遠に結ばれるというジングス。だから同じクラス同士になることが多い。稀に去年のものと交換する人もいる。使い方は人それぞれ。
そしてこのジングスには、本当に効果があるらしい。代々交換しているペアは今も幸せそうに暮らしているらしい。
だから皆真剣だったのか。ちなみに僕と花蓮は去年に交換したので・・。僕の指には交換した指輪がついている。
「それでは結界発表~!!」
大きな声のお姉さん・・の先生。結界発表が一斉に張り出される。え?僕らのクラスは1位だった。
最初は驚いたが言われてみれば確かにと納得する。だって花蓮とか啓二とか凄い活躍していたからね。
個人賞は啓二だった。毎年の個人賞は啓二が取っていたので、そんなに驚かなかった。
そして毎年筋トレグッズを貰っている。そして今年も・・
「ランニングマシーンでお願いします!!」
やっぱり筋トレグッズだった。次に僕らに指輪が贈られる。今年の指輪はとてもシンプルだった。
何の飾りも付いていないシンプル。
僕は花蓮の方を向く。すると花蓮と目があった。そしてうなずく。いや~、言葉を発さずに意思疎通出来るのっていいね。教頭先生の挨拶で閉会式が終わった。
すると啓二が飛んできて、筋トレグッズを貰った事を自慢してくる。正直あんまり羨ましくない。
「すごいだろ!!」
「ウン、スゴイネ(棒)」
「もっと気持ち込めろよ~」
「あはは、本当に凄いと思ってるよ」
啓二は冗談が通じるので一緒にいて楽しい。僕らは冗談を交わしながら教室に戻った。
帰り道、僕らは河原に座っていた。静かな風が吹いていて、花蓮の髪の毛が揺れている。
綺麗な髪色だなと思っていると、花蓮が口を開く。
「交換しよっか」
「うん、そうだね」
あっさりとした会話。僕はそれでも満足だった。だって花蓮の顔が赤かったから。そして静かに指輪を交換をした。少しくすぐったかった。
僕の指には二つの指輪がはまっている。それを夕日に掲げ、僕の気持ちは高まった。これでもっと・・。僕が笑っていると帰ろっかと花蓮が僕に手を出す。僕はその手に自分の手を重ねた。
その日は手をつないで帰った。とても嬉しかった。顔の赤さは夕日で隠せていると信じている。
そして急に唇に温もりが当たる。前もこんな事あったような。
「今日もあんまり話せなかったからね!!」
僕は花蓮と顔を見合わせていたが、花蓮が先に帰った。僕は更に顔が燃えるように赤くなった・・・と思う。




