体育祭 1
今日は桜木高等学校の年に一度の体育祭。外から沢山の人が見に来るほど大規模なこの行事は、やっぱり恋愛のジングスがあったりしてね・・。この行事で最後の終わりの鐘の真下にいるカップルは永遠に結ばれると・・。まさかね!
「こっち準備出来た~?」
「それこっち持ってきて~!!」
そこら中で最終確認がされている。僕のお母さんの姿も見えたが、自分の役割で精一杯で会いに行けなかった。花蓮はというと・・。
「私これ持って行くね!」
「ありがとう~。助かるよ!!」
そこら中のお手伝いをしている。やっぱり人気だなと眺めていると、後ろから誰かとぶつかってしまった。ごめんなさいと謝りながら後ろを向くと、とても大きい人が立っていた。でっか!!
だ、誰だろう・・?えーと、えーと。僕が言葉に詰まっていると、また後ろから声が聞こえた。
「親父!!何してんだよ!こっちは違うの!!」
「おお!すまんすまん。つい気になってしまってな!」
「保護者はこっち!」
なんだ、啓二のお父さんなのか。僕はお辞儀をした。すると啓二のお父さんが僕の肩をバンバンと叩く。痛さで顔が歪みそうになったが、なんとか我慢をした。
「良い子じゃ無いか!」
「そう言ってるだろ!!ほら早く!!ごめんな拓也」
「あ、うん。全然大丈夫」
啓二はお父さんを引っ張っていった。流石警察官。筋肉の付き方が違う。安心感があるな。
「拓也~、こっち手伝って!」
僕は急いで呼ばれた方に向かった。
* * * * * * * * * * *
「それでは、体育祭開会式を始めます」
校長先生の挨拶が始まる。校長先生の挨拶は何時も一言。今日は『頑張れ』だけだった。
う~んシンプル!
クラスごとに入場している。そのたびに拍手が起こるので、むずかゆい気持ちになるのは僕だけじゃないはず・・。
最初は準備運動。次は各クラスのスローガン宣言。迫力のあるその声は、その場を圧倒するほどだ。
そして本格的に競技が始まる。僕が出るのは玉入れだけ。もともと運動出来ないしね。
最初の競技は男女別百メートル走。それには啓二と花蓮が出る。勿論応援するつもりでメガホンを持っている。最初は男子からだった。
開始の音と共に応援をしようとした瞬間に砂埃が起こる。僕は何が起こったか分からない。
砂埃が晴れてくると、そこにはゴールテープを持っている啓二の姿があった。
え・・、速くない?一瞬だったよ?
他の走者は驚きのあまりか、スタートラインから動いていなかった。まあ、気持ちは分かるよ。
「流石だ啓二!!」
「親父!!恥ずかしいからやめて!!」
その静寂を破ったのは、啓二のお父さんだった。大きな拍手と共に、大きな声を出している。
すると次第に周りも拍手をし始める。他の走者も走り出した。
一番最初からこんなのを見せられたらたまったものではない。次の人が可哀想だな。
男子の百メートル走はそれが最大の盛り上げだった。
次は女子百メートル走。そこには美優も出ていた。何故か花蓮との間に火花が見えるのは僕だけかな?プールの時は仲が良いとかじゃなかったっけ?
「どうだった!俺の走りは!」
急に背中を叩かれる。そこには汗を流した啓二がいた。汗は流れているけど、息一つ切れていない。
「凄かったよ!一瞬だったじゃん!!お父さんも褒めてたしね」
「親父の話はマジで勘弁してくれ」
「どうして~?良いお父さんじゃん」
「あーあー、この話はやめだ!そ・れ・よ・り!彼女が走るんだから応援しないと!」
「分かってるよ・・。あれ?浩太は?」
「ああ、浩太なら救護テントの下だ。あいつは日光が嫌いだからな」
そっか、などと話している内に、準備が整ったのか走る準備をしている。
花蓮は動きやすいからとポニーテールだった。いつもと違う髪型って・・、何か可愛く見える。
いや、いつもも可愛いけど・・、もっとこう・・何かさ。
「よーい」
パンッ
開始と共に走り出す。流石に啓二のような子はいない。でも、ぶっちぎりで花蓮と美優が競り合っている。抜かし抜かされを繰り返していた。そっか、美優も運動神経が良いんだっけ。
その結果は花蓮が最後に抜き返して優勝した。流石花蓮。
「彼女ちゃん勝ったじゃん!」
「花蓮だしね」
「うわっ信頼関係!!羨まし~」
こんな事を言っている啓二だが、実際啓二も良くモテる。さっきも告白されていたのを僕は知っている。前に『どうして断るの?』と聞いたことがある。
『俺は皆を愛したいの!一人なんてつまらないじゃん!あ、でも俺も一人愛したい人はいるよ。でも絶対に俺に振り向かないの!』
『そんなの分からないじゃん!アタックしてみたら?』
『・・・無理だよ~その子には愛する人がいるからな』
結局誰なんだろう?僕は思い出すがわからなかった。すると、花蓮と美優がやって来た。美優は違うクラスなのに大丈夫なのかな?僕らが話していると次の案内が放送される。
「続いて、玉入れです!出場者は前へ出てきてください」
「僕だ、行ってくるね」
「おう!ぶちかましてこい!!」
「頑張ってね」
「お兄ちゃん!本気だよ!!」
「頑張るよ」
浩太も救護テントから目で伝えてくる。皆の応援を受け取り、僕は運動場に向かった。




