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丸く収まりました

「いや~、ホント勘違いで良かったよ~。蒼馬くんがケダモノだったなんて信じたくなかったもんねえ」

「…………私は、最初から分かっていたけれど」

「あはは…………本当にごめんねえ……?」

「いや、俺が全面的に悪いです…………お騒がせして申し訳ない」


 事件が起こったのが月曜日、火曜日はひよりんのザニマス生放送があったから、こうやって4人揃ってご飯を食べるのも久しぶりに感じる。実際は誰かしらいないことも多いんだけど、やっぱりあんな事があった後だと気持ち的に安心感があった。


「────そういえばひよりさん、ミーチューブいつから始めるんですか? ひよりんのほろ酔いチャンネル」


 静が幸せそうに親子丼を口に運びながら、ひよりんに話しかけた。静は俺の作った飯を本当に美味しそうに食べてくれるから、何だかその笑顔だけで好きになってしまいそうになる。部屋が汚いから好きにはならないけど、これで普通の生活力を持っていたら危なかった。静の事が好きな自分というのは、想像も出来ないような気もしたし、不思議としっくりくるような気もした。まあ考えても何にもならないことだ。


「いざ始めるとなったら、何話せばいいのか分からなくなっちゃって。皆はどういうことが聞きたいのかな?」


 ひよりんが顔を上げ、俺たちの顔を見回す。普段の仕事とはまた勝手の違う配信業に、少し戸惑っているみたいだった。


「どうなの、蒼馬くん? ひよりさんファンとしての意見はさ」

「うーん、そうだなあ…………俺もこうやってひよりんさんと仲良くさせて貰ってるから、普通のファンとはまたちょっと感覚が違うと思うんだけど…………やっぱりひよりんさんの事について知りたいんじゃないかな。人となりというか、ひよりんさんがどういう人なのかって、やっぱりライブとか生放送じゃ分からないから」


 それはあくまで声優・八住ひよりであって、支倉ひよりではない。そしてファンが知りたいのは得てして私生活・支倉ひよりの方なのだ。


「それと────あとはやっぱり仕事の裏話かな。俺はひよりんにしか興味なかったから当てはまらないけど、多くのファンはやっぱり声優同士の絡みとか好きなんだと思う」

「…………まあ」

「む〜…………!」

「…………」

「…………あれ、俺何か言っちゃった?」


 割と実のある意見を言えたと思ったんだが、ひよりんは口を手で抑えているし、静はなんか不機嫌だし、真冬ちゃんは我関せずといった態度で親子丼を口に運んでいる。想像と大分違う反応に少し面食らってしまった。


「まあ、VTuberでは私推しだもんね蒼馬くんは」

「ん? おお、そうだぞ。あんまり他のVTuber観ることないしなあ」

「リアルでは私推し…………なぜなら私は彼女だから」

「それは本当に違うから。そろそろ忘れてくれると助かるんだけど…………」


 真冬ちゃん…………俺の彼女発言、一体いつになったら忘れてくれるのかなあ…………


「話を戻しまして。あとはやっぱりゲーム実況とかいいんじゃない? 雑談よりチャット盛り上がるしさ。ゲームだったら私も一緒に出来るかもしれないし」


 静の提案は的を射ていた。流石は配信の大先輩。


 配信の王道といえばやっぱりゲーム実況だ。

 俺も近々ゲーム実況配信をする予定だし、他の同期は既にやっていた。俺は配信頻度少なめで調整して貰っているから遅れているけど。


「そういやエッテ様と八住ひよりが仲がいいってこと皆にバレちゃってるんだもんな。今更なんだけど、あれ大丈夫だったのか? 怒ったって麻耶さん言ってたけど」

「あれ? ま〜〜〜〜怒られたね。でも、どっちかというと蒼馬くん家でオフコラボやったことの方が怒られた。そっちが大事過ぎてひよりさんの事は流された感じがあるかなあ。ひよりさんは大丈夫だったんですか?」

「うーん…………何も言われてないから、大丈夫なんだと思う。多分事務所も把握はしてると思うんだけど…………」

「まあ、ツブヤッキーのトレンド入ってましたからね」


 あのオフコラボの晩は「ひよりん」がトレンド1位になっていたはず。当然事務所も把握しているだろう。


「因みにさ、そういうの勝手にコラボしてもいいのか?」


 ひよりんや静とゲーム出来るというのなら、やってみたい気持ちはある。


「んー…………一概にこう、とは言えないなあ。コラボ相手とか内容とか、あとは本人とマネージャーの方針にもよるから。勿論企業相手だとお金が絡むから1ヶ月以上前から調整しないといけないけど、友達とコラボしまーすってノリならスケジュール調整さえすれば大丈夫だと思うよ? 例えばこの前のオフコラボとかはゼリアちゃんが勝手に決めてたし」

「あー、なるほどな…………」


 つまり、お金がかからない相手なら割と緩いってことらしい。


「それなら、私のチャンネルはあくまで事務所は関係ない個人チャンネルってことになってるから、コラボしやすいかな…………?」

「あ、個人チャンネルなんですか? 私てっきり事務所運営の公式チャンネルかと思ってました」

「最初はその予定だったんだけど…………お酒飲むって話をしたら、マネージャーが『責任持てない』って…………」

「あはは…………」


 ひよりんの発言に俺たちは苦笑いするしか無かった。やっぱり声優事務所ってその辺りのリスク管理しっかりしてるんだな…………


「…………それじゃひよりさんがチャンネル開設したら私とコラボしましょーよ! マネージャーには話しておくので!」

「ありがとねえ静ちゃん。まさかエッテ様とコラボ出来るなんて、夢みたい」


 あ、そういえばひよりん、エッテ様好きなんだったっけ。ひよりんが引っ越してきた時にそんな感じの事を言っていた気がする。


「お兄ちゃん、私はいつ配信に出してくれるの」

「あー…………それはもうちょっと待って」


 うちの視聴者…………お姉ちゃんズさ、マジでノリが意味分からないんだよ。真冬ちゃんを出していい空気なのかどうか、じっくり判断する必要がありそうだった。

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絶滅したはずの希少種エルフが奴隷として売られていたので、娘にすることにした。

― 新着の感想 ―
[一言] 多分その判断マネージャーに投げた方が良いんじゃないかな?w
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