第五十二話 歴史の終止符
「あ……ああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ゴーズ王は顔をぐしゃぐしゃに崩しながら泣き始める。
イッキーの涙とは対照的に、心を動かされることのない嘘の涙。
「ゴーズ王」
「ひ、ひいぃぃぃ!」
ドスンと尻もちをついて後退り始める。
こんな心の弱い人間に僕たちは振り回されていたのか。
「イ、イッキー! 何をやっている! 早く勇者たちを……」
「ぼくちんは……もう戦わないよ、ゴーズ。きっと、間違ってると思うから」
「イッキィィィィィ!」
ゴーズ王の悲痛な叫び。
もう手持ちのカードは全て切れた。
「ゴーズ王。あなたたち王族は本当に最低です。私利私欲のために英雄を殺したり、この世界を負に陥れたり……それでもやり直せるはずだ。これからのあなたの振舞い方で変えていけるはずです」
「ぐうぅぅぅぅぅぅ、まさか私が呼び出した勇者にしてやられるとは…………だがな……」
ゴーズ王は注射器を取り出して自らの首に刺す。
ゴボゴボと音を立てて、ゴーズ王が大きく、醜い怪物へと変化していく。
「私がイッキーに施した研究を自ら投与できないとでも思ったか?」
異形となったゴーズ王。
ここまできてまだ反省の余地すらないとは。
呆れ返る。
「ゴーズ王、あなたには第2の生を与えてもらって感謝しています。けれどそれとこれとは話は別。この世界の安寧のため、あなたには変わってもらいます」
「しゃらくせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
体長10m程に成長したゴーズがパンチを繰り出す。
長年研究を続けたイッキーですらまだ不完全だというのに、なぜ僕に勝てると思ったのか。
空間支配でピタリと僕の眼前でパンチが止まる。
口を開けて呆けているゴーズ王に飛び膝蹴りを顔面に直撃させる。
「ブッ……フォォォ……!」
巨体はみるみる内に小さくなり、元のサイズへと戻った。
まだ立っているところから、王としての最低限の威厳を感じる。
一旦気絶させようと詰め寄ったところをイッキーに静止される。
「もう十分だよ。それに、ゴーズはぼくちんが支えていくからさ。2人で世界を見て回って、そんでもってこれからの生き方を変えていくよ」
見るとゴーズ王は立ったまま白目を剥いて気絶していた。
「イッキー、本当にそれでいいのか?」
「うん! ゴーズは大悪人だけど、それでも、ぼくちんの唯一の家族だからさ!」
イッキーは両指の人差し指を頬に当ててニシシと笑う。
立ったまま気絶しているゴーズ王を抱え込みイッキーは飛んでいく。
「じゃあねー! 今度は戦い以外もしようね!」
バッビューンと、いつもの掛け声で瞬く間に消えていった。
これで……終わったんだな。
そうだ、仲間たちや、翠さん、ブラゴフも助けなきゃ。
ポッカリと大穴が空いた大地を眺めながら、僕は走って行った。




