表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/53

第五十話 善なる善と善なる悪

 繰り出した右ストレート。

 高速――?

 音速――?

 いや、光速をも超える拳。

 カオスの反応も追いつかずに顔面を直撃する。


「グァッ!」

 

 たまらず吹き飛ばされるカオス。


 後ろに気配を感じる。

 イッキーの延髄蹴りが迫る。

 体を屈めて躱しつつ、蹴り上げる。

 イッキーの類稀なる膂力によって芯を外されたが、肩口にヒットし空中へ飛ばす。


「わーお! 急につよくなったね! ぼくちんの理解が追いつかないよ!」


 自在に空中を飛べるイッキーにとって空中の不利はない。

 

懸隔(イマジネーション)


 体勢を立て直したカオスのスキルが発動する。

 だが、僕には効かない。

 迫り来る魔力は僕の手前で雲散する。


「なるほど、お前のスキルは想像を現実とする能力か。だけど、今の僕にはどんな攻撃も無意味だ」

「なに?」

「僕の空間支配の力を最大限凝縮して、僕の身の回りだけに留めた。結果、僕から半径1mは完全に僕の世界だ」


 瞬間移動でカオスの眼前に迫る。

 

「つまりこんな風に瞬間移動も可能ってわけさ。擬似的だけどね」

「ッ!」


 真っ白な肌が赤みを帯びてきている。

 それほどまでに驚きを隠せないということか。


 まあ、僕の瞬間移動は、半径1mを光速で移動し続けているという、タネも仕掛けもない、しょうもない技術だ。

 本物の瞬間移動にはやや劣るだろうが……。

 

「ぼくちんを無視するなー!」


 飛ぶように近づいてくるイッキー。

 だが、その勢いも僕の目の前で静止する。


「ぐぎぎぎぎぎぎぎ! なーんで動けないんだー!」

「僕の周りは全て完全に僕の支配下だからだよ。イッキー風に言うなら、なーんにもできないってことだ」

「くっそー!」


 イッキーはジタバタともがいているが、僕がよしとしない限り、1m圏内に入ることはできない。

 

「お前たちが悪いんだぞ……。僕の仲間を、世界を傷つけて壊していくお前たちが……!」


 カオスの首を掴む。

 動こうとする意思を感じるが、現実になることはない。

 絶対は僕なのだから。


「どうして争う! どうして戦う! みんなが手を取り合って、人間のため、世界のために生きていけば、誰も傷つかない世界になるのに……!」

「……人間が人間である限り、そんな世界は訪れない。今ここでオレが死んだとしても、負のエネルギーが集まれば、幾度となく復活する」

「いつか必ず、そんな世界を作る。そしてその世界にはカオス、お前も必要だ。僕は誰も排除しない。みんなが明るく笑えれば、僕の役目は終わるから」


 守護人としての役目。

 翠さんが心に秘めていた目標。

 守護人は、その名が消えて初めて役目を終える。


「ぼくちんは戦うことしか教えられてない。ぼくちんは……ぼくちんは……戦うことしか知らないんだー!」


 完全生命体とは名ばかりの、なんてことはないただの人工生命体。

 彼女もまた、救うべき対象なんだ。


「勇者よ。お前がやろうとしていることはな、お前が理想としている人間以外全てを殺すことに他ならない。お前はただ現実が見えていない、そこのガキと同じだ」


 分かっている。

 世迷言だと。

 夢物語だと。

 それでも。

 それでも。

 それでも――!

 

「僕の信じた信念はは間違ってなどいないのだから!」


 カオスを放り投げてイッキーに当てる。

 2人揃って倒れ込む。


「ク……ククク……! なら、力で示してみろ……! オレたちにはもはやそれしかないだろう!」


 カオスのオーラが増大していく。

 それに呼応するように、イッキーの圧も増していく。


「ぼくちんは……ぼくちんはぁぁぁぁぁぁぁ!」


 僕は気を尖らせる。

 みんなの意思を集約して手に入れた力。

 その全てをぶつけて、終わらせる。


「最後だ……次で決める……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ