第四十九話 信念
意識を取り戻し体を起こす。
「な……生きているだとぉ!」
ゴーズ王は驚きの声を上げる。
どうやら死んだと思われていたらしい。
頭が割れるように痛いが、まだ体は動く。
目の前では、イッキーとカオスによる激闘が繰り広げられていた
「ぼくちんとタメ張るなんてやるね!」
「それはこちらのセリフだな」
この戦い、待てば一対一での戦いにできるが、最悪の場合負けた側が死に至る可能性がある。
割り込むしかない。
「ちょっと待ったぁ!」
イッキーとカオスの間に割り込む。
2人ともキョトンとした顔で僕を見る。
「一旦僕の話を聞いてほしい」
「なんだいなんだい! 邪魔するのか勇者!」
「お前はもう負けただろう」
2人の言い分はもっともだが、このままでは誰がどう勝っても僕の望みは叶えられないのだ。
「イッキーもカオスも、そして僕も、この世界のために戦っている。考えていることはみんな同じだ。ならもう少し友好的に物事を考えないか?」
「ゆーこーてき? よく分かんないけど、ぼくちんは戦うこと以外教えられていないから多分できないよ」
「オレも無理だな。第一目的が一緒でも手段が真逆なんだから不可能だ」
呆気ない交渉決裂。
となると僕の勝利条件は、殺さずに戦いを終わらせること。
「やるしかない、と」
「難しいことはぼくちんには分からないのだ! それに一回負けた君にはぼくちんを倒すことなんてできやしない!」
「確かに、イッキーの膂力には目を見張るものがある。けれどね、イッキー。それにカオスも。僕はなにがあろうとも全ての人々を救いたいんだ」
翠さんに誓った。
2代目守護人として、なにもかも守る。
そのために力が必要なら、僕の全てを投げうってでも。
――ロッカ君、君ならできるよ。
声が聞こえた気がした。
「な……なんだ君は……さっきと違って目からイナズマみたいなものがでてるぞ……! それに……髪の毛が銀色に……!」
イッキーに言われて目をさする。特に感電するようなことはない。
髪の毛に至っては触っても色の確認をすることができないから認識のしようがない。
だが、僕の体に異変が起こっていることは確からしい。
翠さんから貰った力――恐らく、ヴィーシュではなく、生前の翠さんが有していた力。
「……お前……どうなっている? このオレと同等の存在になっているというのか?」
なんだろう。
カオスやイッキーにも負けないほどのエネルギーを感じる。
しかも、僕の目から見ても明らかな程、どんどんと増幅していく。
「黒装束……まさかお前も、他の人間からエネルギーを得ているというのか……?」
ギリィッと、カオスの歯軋りの音が聞こえる。
「僕は、カオスのように負のエネルギーなんかを力にはしない。僕がみんなからもらっている力は、人間の持つ一条の煌めき、言うなれば正のエネルギーだ」
「綺麗事を抜かすな。お前はそこに突っ立っている王の姿が見えないのか?」
「カオス。お前こそ分からないのか? 全ての人間が腐敗しているわけじゃない。悪いことをしていた人間でも反省し次は繋がる人間もいる。人間という存在は、尊い生き物だ。それを僕は体現しているに過ぎない」
「このオレを前にしてそんなことが言えるとはな……」
カオスもほとばしるエネルギーを発し始める。
僕の光り輝くエネルギーとは対照的に、暗い、底なし沼のようなエネルギー。
正と負。
善と悪。
お互いの想いが交錯する。
そして――
「ぼくちんを忘れてもらっちゃあ困るな! いいとかわるいとかそんなものぼくちんには知らない! ただ戦ってこの世界を救うことしか、ぼくちんは教えられていないんだから!」
もう1人、人間が生み出した悪の集大成イッキー。
概念的悪のカオス。
物理的悪のイッキー。
2人を納得させないことにはこの世界に未来はない。
「いくよ……カオス、イッキー。僕はお前たちをも守る世界を作るんだ!」
僕は溢れんばかりのエネルギーを拳に込めて、カオスに向かって振り抜いた。




