第四話 幼き少女
僕は第1の結界師がいる塔に向かって走っていた。
あんな青龍刀のような危ないものを振り回す輩がのさばっていては、村の人たちの安寧は手に入らない。
その思いが足取りを更に早める。
再び森林を駆ける。
森林の中にも、ポツポツと民家のようなものがあり、都心では見られない光景に物珍しさを感じた。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
穏やかな風景には似つかわしくない、少女の叫び声が僕の耳に届いた。
「な、なんだ!」
声は10m程先から聞こえるが、ここいらの土地は道が整備されておらず、腰ほどまで伸びた草で一望することが難しい。
なんだって道が舗装されていないのか。
四肢に力を込めて声の元まで走る。
そこにはイノシシに襲われていた少女の姿が目に飛び込んだ。
「誰か助けて!」
気が動転しているのか、僕の存在にまだ気付いていない。
鼓動が速くなる。
このイノシシ、恐らく野良だ。
一般人以下の僕が助けられるのか?
「そんなの関係ないッ!」
少女の元へ飛び出す。
少女は声にならない声をあげていたが、よく聞こえない。
こんなドラマチックな展開でも、イノシシは知らぬとばかりに突っ込んでくる。
「死んでも守る!」
拳を固め、突撃するイノシシにアッパーをかます。
「プギィィィィィィ!」
イノシシのアゴにクリティカルヒットして、そのまま大木へと激突していった。
「あ……れ?」
こいつは魔神軍だった……のか?
だとしたらあのイノシシは魔神軍がけしかけたイノシシになるけど、なんだかそんなふうには見えない。
位置的に少女にもイノシシにも当たるような判定だったが……。
どういうことだろう――
「あ、ありがとうございます!」
前髪パッツンの金髪ボブ少女は最敬礼した。
白いワンピースの裾がフワリと揺れる。
背丈的にも地球でいうところの中学生くらいって年齢か。顔も丸くて成長途中といった感じだ。
そこまで頭を下げなくても……と思いつつもサムズアップで返す。
「君が無事でよかったよ」
頭を上げると少女はハッととした表情に変わった後、目を細めてそっぽを向く。
「ぜ、全然怖くなかったんだからね!」
ぎゃぁ、と言っていたことは空の彼方へと消えてしまったのだろう。
急なツンデレ展開に心が追いつかないぞ。
「まあ、怖くても怖くなくてもどっちでもいいんだけど……君のお家は? 送っていくよ」
乗りかかった船だし、この辺の民家の子だろう。
もう塔が近いし、危険極まりない。
「お家……お家……」
「お家分からないの?」
「う、うるさい! 分からないときくらいあるでしょ!」
そんなものは幼稚園で通り過ぎたけど……。
「ともかく、助けてもらったことに変わりはないから、あたしも何かあんたの手助けするわよ!」
「手助けといっても、僕は魔神を退治するのに忙しいんだけどな」
「魔神退治?」
「僕は転生してきた勇者だよ」
さらりとなんでもないことのように伝える。
「ゆ、ゆうしゃさま……」
「そ、勇者」
少女の口が半開きになってしまった。
そのまま魂がどこかに行ってしまいそうだ。
「おーい、大丈夫か」
「ハッ! 大丈夫に決まってるでしょ! なら、魔神退治にあたしも付き合うわ」
「イノシシ相手に怯んでるようじゃなあ」
「い、今のはいきなりでビックリしただけ! ほんとは強いんだから!」
そう言って少女は腰につけていたステッキを取り出す。ステッキの頭には星がついており、子供のおもちゃみたいだ。
「いくぞー! ファイア!」
少女がスキルを発動すると、周りの木々を燃やし尽くした。
「おお、意外に凄い」
「ふふん、こんなの序の口よ!」
どれどれ、それじゃあステータスを覗いてみますか。
《スキル》
《ファイア》
《サンダー》
《アイス》
《バリア》
《ステータス》
《攻撃 3》
《防御 3》
《魔法攻撃 40》
《魔法防御 40》
《敏捷 10》
《特殊 5》
魔法系のステータスに、スキル構成か。
この世界の人たちも恐らくステータス、スキル共に成長はするんだろう。
このツンデレ少女は言っても引かないだろうし、僕の隣にいた方が逆に安全か。
さっきの件もあるし……。
「んじゃあ、僕の隣から離れないって条件でついてきてもいいよ」
「子供扱いしないでよ! ちゃんとしたレディとして扱って!」
「はいはい分かりましたお嬢様」
「心がこもってないわね……けどいいわ! あなたの名前は?」
「そういえば言ってなかったね。僕は蔵王六角」
「ロッカク……? 姿形と同じくらい変な名前。あたしはリビア・シュビレー。リビアって呼んでちょうだい!」
「全部変ってことかい……じゃあよろしくね、リビア」
こうして、僕はリビアと共に塔に向かうことにした。
道化王NOZAだぁ。
なろう小説とは一体……? と、頭を悩ましながら書く今日この頃です。
9/18より土曜日更新から毎日更新にします!
気合を入れて面白く仕上げていきますので、今後もどうかよろしくお願いします!




