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第三十八話 完全生命体

「王様にも困ったものだな」


 リビアは口では困ったものだと言いながらも、表情は平然としていた。

 まるで、全て理解していたように。


「クッソが! やっぱりあいつ……都合が悪いことがあったから先祖を殺したんじゃねーか!」


 彩葉さんは怒号を発する。

 やり場のない怒りが謁見の間をこだまする。


「一体……なんだと言うのだ……?」

「お……父様」


 クラリス姫とフリストさんは互いに顔を見合わせて、困惑していた。


 当然だ。

 僕自身なにが起きているのか理解が追いつかない。

 この王国……いや、パラストブルクではなにが起きているというのか。


「リビア……知っているなら教えてくれないか?」


 僕はリビアに問いを投げかける。


「ふむ……そんな悩むようなことではない。単純に、見えざる神話(メソロジーク)が復活したのはゴーズ王……含め歴代の王のせいなのだ」

「王のせい……?」

「勇者も見たと思うが、この世界は腐敗しているだろう。全ては王が私服を肥やすために他ならない」


 そう言ってリビアは下を指差す。


「加えて……圧倒的武力による圧政を強いるため、奴は……奴らはこの城の地下で完全生命体の研究をしていた。これが決定打だな」

「そんな……」


 クラリス姫は驚きのあまり瞳孔が揺れている。

 娘にはそんな一面を見せてこなかったのだろう。


「完全生命体ってどういうことだよ」


 彩葉さんはリビアに食って掛かる。


「読んで字のごとく……だな。圧倒的武力、圧倒的知性を追求した生物だ。まだ研究段階ではあると思うが、己が欲のためにそんな兵器を作っているのだ。この世界はもはや負のエネルギーで満ち溢れていると言っても過言ではないだろう」

「んなことのために……先祖が犠牲になったっていうのか……」


 もはや怒りが頂点に達していて居ても立ってもいられないという様子の彩葉さん。


「とりあえず落ち着け。全員、軽くない傷を負っているんだ。仲間を待つことが先決だろう」

「でも……!」

「これから先、私たちの行うことには国王と見えざる神話(メソロジーク)の二つの勢力を相手にしなければならないんだ。休めるときに休まないと、殺されるぞ」


 リビアは厳しく彩葉さんをなだめる。

 納得のいっていない彩葉さんだが、おとなしく納刀した。

 

 大和さんやレイザーさんのことも気になる。

 何より……僕も心の整理が必要だ。

 翠さんを相手にするという心構えが。

 自分を貫き通すという気構えが。

 

 それに、またみんなを守れなかった自分の弱さが恨めしい。

 仲間だけじゃない。町の人たちも守れなかった。

 何度後悔すればいいんだ。

 それでも、僕はこの考えを変えない。

 こんな後悔をするのは、僕だけでいい。

 守れれば――


「一旦、ヴィンター地方までもどって大和さんとレイザーさんに合流しましょう」

「それが一番いいだろう」

「仕方ねえか……」


 リビアと彩葉さんの2人を連れて、謁見の間から出ようとする。

 が、僕は足を止めた。

 クラリス姫とフリストさんが気がかりだ。

 僕は、2人に対して声をかける。


「あの……大丈夫ですか?」

「大丈夫ではないな。突然のことで頭はこんがらがっているし、城や城下町の人々の手当てもしなければならない」

「もし……なにか起きたら必ず助けに行きます」

「ああ、そのときは、頼むよ」


 必死に笑顔を作って答えるフリストさん。

 そんな表情をさせてしまうことが申し訳ない。

 

「勇者様……」

「なんだい?」

「お父様……殺さないよね……?」


 涙を浮かべながらクラリス姫は僕に問う。

 そんなことするわけがない。

 絶対――


「当たり前だよ。必ずみんなを救ってみせるさ」


 僕は大げさにサムズアップをして、謁見の間を後にした。

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