第三十六話 死闘 後編
「むぅん!」
ブラゴフの黒剣が僕の喉元に迫る。
すかさず《絶観忘守》で空間を断絶し弾き返す。
勝ち筋――
今のところブラゴフのスキルは分からない。
翠さんの《守護人》はバリア。単純だが、彩葉さんの攻撃を阻んだところを見るに最高峰の防御力と反射する攻撃。
まず間違いなく彩葉さんと翠さんの相性は悪い。
僕が翠さんと相対することが1番いい……はずだが……。
「ロッカ君、私の能力が防御するだけだと思っているのかな? 防御は最大の攻撃だよ。硬い盾でぶん殴られたら……痛いだろう?」
翠さんが縦横3mほどのサイズのバリアを発動し、バリアが突進してくる――!
「うおっ!」
攻撃すれば反射する。
避ける以外方法がない。
こんな攻撃方法があるなんて……!
横方向に飛び退く。
「彩葉さん! ブラゴフの相手をお願いします! リビアは後方支援してくれ!」
「了解!」
彩葉さんとリビアが返事をする。
とりあえずブラゴフvs彩葉さん、翠さんvs僕の構図を作らなければ。
「そうなると思ったけど、ロッカ君、君が私に勝てると思ってるのかな?」
「やってみなければ分からないでしょう。生前の翠さんなら、この状況で退きますか?」
「今でも退くつもりはないよ。けど、ロッカ君のスキルは不完全すぎる。そんなんで私に勝とうなんて――」
垂れ目からの鋭い眼光。
一睨みで射殺す。
圧力が違いすぎる。
「5兆年早いよ!」
バリアが2個、3個、4個と作られる。
それら全てが一斉に押し寄せる。
「絶観忘守!」
空間を断絶してバリアを防ぐ。
不完全なことは分かっている。
まだ僕のスキルは発展途上。
空間を支配しきれていない。
彩葉さんも言っていた。伸び代しかないと。
考えろ……!
横を確認する。
リビアの支援を受けながら、彩葉さんとブラゴフは斬り合っている。
互角といったところか。
「よそ見している暇はないよ!」
気付けばバリアが四方八方僕を取り囲んでいた。
横だけじゃないのか……!
避けきれずに上からのバリアに押し潰される。
「ぐっ……はぁ……!」
抜け……出せない……!
反発しようとすればすかさずそれ以上の力で反射され潰される。
全身の骨が砕け散りそうだ。
「絶観……忘守!」
バリアを囲むように空間支配をしてバリアの侵攻を止めて僕とバリアの間に隙間を作り抜け出す。
転がるようにして脱出した矢先、次々とバリアが飛んでくる。
さすが翠さん。容赦がない。
《絶観忘守》で空間断絶し、防いでいく。
だが、結果は変わらない。
バリアに飛ばされ、潰される。
「ロッカ君、君では私の守護人を破れない。お友達の女の子もそろそろ絶えそうだよ」
息も絶え絶え、横たわりながら彩葉さんを見る。
刀を飛ばされて首に黒剣を当てられていた。
リビアは……震えて動けない。
「ゆ、勇者様ぁ!」
ゴーズ王は泣き叫ぶ。
クラリス姫とフリストさんはじっと動かずに固まっている。
「うるさいぞゴーズ。貴様の招いた結果だ。勇者たちは死に、この世界は滅びを迎える。それが貴様らの結末だ」
ブラゴフはゴーズ王に一瞥もくれずに話す。
これで終わり……なのか。
僕が翠さん勝とうなんて、おこがましいことだったんだ。
幾度となく、何もかも、誰も守れないなんて。
床を拳で叩く。
身体中が熱くなる。
それでも――結果は変わらない。
「ブラゴフ。決めてしまおうか」
翠さんの合図と共にブラゴフが黒剣を振りかぶる。
彩葉さんが――死ぬ。
だが、ブラゴフはいつまで経っても黒剣を振り下ろさない。
この期に及んで情けをかけるキャラでもない。
なにが……起きている?
「ブラゴフ……お前……調子に乗りすぎだな」
リビア……?
リビアだけどリビアじゃない。その昔、500年前の、見えざる神話の頃のリビアだ。
「グッ……リビアァァァァァ!」
ブラゴフは叫ぶが全く動くことができない。
リビアの身体が瞬きと同時に変わってゆく。
身長が伸び、ボブカットの金髪もロングへと変わる。その姿は幼い少女ではなく、麗しき女神のようだった。
「ほぼほぼ記憶が戻ってきたか……はてさて、封印したはずの奴が復活してるとはな……」
リビアは周りを見渡すと、僕を見て微笑んだ。
「お前が今回の勇者か。随分と弱っちそうだな」




