第二十七話 集合
「バカロッカク!」
朝になりシュラハトガーディアンの道場に戻った僕たちは、開口一番リビアに怒鳴られた。
「夜中に目が覚めたらロッカクいないし、帰ってきたかと思えば血だらけだし、おまけに――」
ピシッとリビアは彩葉さんに指を突き出す。
「変な女の人連れて帰ってくるし! 天然ジゴロなのロッカクは!?」
「それは違うぞリビア。僕はただモテるだけだ」
「おい蔵王、話がこじれるからやめてくれ」
彩葉さんは膝をついてリビアの手をとった。
「久しぶり……と言っても、私とリビアは出会ったことはないけれど、先祖がリビアをいたく気に入ったからな。私が出会っても久しぶりなんだよ!」
そのまま腕をブンブン振ってハンドシェイクする。リビアの体ごと上下に動いて、脳震盪で倒れそうだ。
「はらほろへれー」
案の定リビアはフラフラになる。
「さて、これからの予定はどうするんだ?」
彩葉さんは僕に聞いてきた。
大分寄り道をしてしまったけれど、ようやく本筋に入れる。
「大和さんの怪我がもうすぐ治るので、そうしたら第3の結界師のところへと向かいます」
「結界師か……500年前と同じなんだな」
「まだ場所が分かっていないんですけど……」
「私もこの辺に住んじゃあいるけど、土地勘があるわけじゃないからな。そんな奴らが住んでるところが近くにあるって言うのか」
道場で立ち話をしていると、医務室の扉が開く。
紫煙を燻らせる大和さんだった。
「お前らのうるさい声が医務室まで聞こえてきたぞ」
ポケット灰皿に灰を落としながら、僕たちを見つめる大和さん。
「んん? 見たことねぇ奴いるじゃねぇか。それにてめぇは血だらけで……おい蔵王。説明しろ」
ズイッと咥えタバコのまま大和さんは顔を近づけてくる。
僕未成年だぞ。
「紆余曲折あって仲間になった、伊達彩葉さんです!」
「よろしく! えーっと……」
「大和大和だ。全然説明になってねぇぞ」
中々に説明が難しいことではあったけど、一夜で起きた出来事について簡潔に説明した。
「なるほど……伊達の一族にリビアに解脱……ね」
「そういうわけだ! よろしくな大和!」
「へいへい」
仏頂面ながら、大和さんは了解してくれた。
「大和さん、もう体は平気なんですか?」
「まあ……な……」
ん?
大和さんにしては歯切れが悪い。見たところ悪いところはもうなさそうだけど……。
「とりあえず第3の結界師のところに行かなきゃだろ」
「そうなんですけど……大和さん、場所分かります?」
「さすがにここの土地勘はまったくねぇ」
「ヤマトでも分かんないんだー」
「うっせぇぞ!」
――痴話喧嘩は放っておこう。
「北の方角に変な神殿みたいなものが、ここ最近で建ってたのを見たぞ」
医務室からレイザーさんが姿を現す。
改めて見てもやっぱりデカイ。
傷の治りも早そうだ。
「レイザーもう傷大丈夫なの?」
「はっ! ガキに心配されるとは、俺も落ちたもんだな」
「キー! ガキじゃないもん!」
こっちも痴話喧嘩か。
いつの間にやら仲良くなっている。
けど、場所が分かった。これは大きな進展だ。
「レイザーさん、ありがとうございます」
僕はお辞儀をする。
顔を上げると、レイザーさんは神妙な面持ちで僕を見ていた。
「……俺も行かせてくれねぇか?」
「え……でも……」
「大和の力は充分見せてもらったし、なにより……」
拳固く握りしめるレイザーさん。
ゴキュッゴキュッと、骨がなる音が廊下で反響する。
「シヴァイザ……だっけか? あいつの本当の名前。俺は……あいつを許さねぇ。何食わぬ顔して俺たちと修行していたなんて……ぜってぇブッ飛ばす」
「レイザーさん……」
そこに彩葉さんが前に出た。
「別に構わないけど、うちのパーティーは殺しは厳禁だぞ。それでもいいのか?」
「当たり前だ。俺たちは別に殺戮集団じゃねぇんだ。あいつをぶっ飛ばせればそれでいい」
「それならいい」
なんで勝手に彩葉さんが仕切っているんだ?
まあ、円滑に進むならそれでもいいけど……。
「よし、それじゃあ第3の結界師がいる神殿まで行くぞー!」
僕の掛け声と共にみんながオー! と合わせる。
その瞬間――
大地が揺れるような爆発音。
音は遠いが、明らかに破壊を感じられる。
「な、なんだぁ!」
レイザーさんがいち早く外に出る。
僕たちも合わせて外に出ると――
遠い王国の地。
カイザニス王国。
激しい炎と煙が目視できるほど悲惨な状況。
その様は、カイザニス王国の終わりを告げていた。
「な……にが……起きて……いるんだ……」
僕は、現実を受け入れることができなかった。




