第十三話 守るべきもの
「ザータンヴァッサーに行きましょう」
僕はリビアをおんぶして、一旦魔神城に進路を変える。
「お、おい! 正気か? そいつ、恐らく人間じゃねぇんだぞ」
「分かってます」
「しかも――魔神軍の可能性まである」
分かっている。
きっとそうだろう。
けど――
「てめぇおかしいぞ!」
大和さんは僕の胸ぐらを掴む。
目尻が吊り上がり、僕を正面に捉える。
「てめぇは魔神軍討伐の勇者だろうが。てめぇがクソ程お人好しだってことは分かってるが、敵を助けることは間違ってるだろ!」
怒声が広大な砂漠に吸い込まれていく。
そうだ。矛盾しているんだ、僕は。
それなら矛盾をなくしてやればいい。
僕が目指すべき道は果たして偽善か、それとも善か。
助けたいモノを助けて、助けたくないモノを助けない。今まで行ってきたことは結局偽善と呼ばれる行為だ。僕が助けたい側が正義となり、相手が悪となる。
貫けばいい。
人の身でできることなど、所詮は限界がある。
――あたしは別に善でもなければ正義でもないよ。あたしが助けたいと思った人たちを助けているだけ。それがたまたま身の回りに多くて、いい子が多かったってだけだよ。もし、犯罪者でも助けたいと思ったら、あたしは……きっと助ける。
こんなことをあの人も言ってたっけ。
あの人はエゴを貫いた。
偽善を貫いた。
それが正しかったのか、分からないけれど、あの人は満足して死んでいったと思う。
僕は、自己の満足なんて目的じゃない。
僕にとってこの身は誰かのためのものだ。
守るべき対象を選りすぐるな。
僕は――本当の意味で全てを守る!
「おかしくないですよ。僕はこの世界を救いにきたんです。それはなにも魔神軍討伐しか方法がないわけではないでしょう」
「な、なに言ってやがんだ?」
「少し疑問に思ってたんです。大和さんもあの町を復興させたんですよね? この世界、悪は魔神軍だけではないのかもしれません。魔神軍を悪、と決めるのも、早計ですけど」
「それは、まあ、そうだけど」
「それに、僕は決めたんですよ」
あの人ですらなし得なかった、善なる善。
究極の守護者へと。
「ちゃんと、全員を守るって。そのためにも、大和さんの協力は不可欠です。だから、リビアを助けることを手伝って欲しいです」
決意を声に出し、ザータンヴァッサーへと向かう。
大和さんはどこまで納得しているだろうか。
全てに納得してるわけではないかもしれない。けど黙ってついてきてくれる。
リビアは苦しそうな寝息をたてながらも、僕に体を預けていた。




