表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ラブコメ⭐

常連客A 「よ、大将! 今日も 『婚約破棄』 やってる?」

作者: NiO

 ここはとある王国の舞踏会会場。


 国の王子が、美少女の肩を優しく抱きながら、悪役令嬢っぽい女の子に向かって、ちょうど、お約束の台詞を吐きだしていたところであった。


「ナッツクラッカー令嬢!


 貴方にはほとほと愛想が尽きた!


 私は、私の愛する……この、ネトラ令嬢と婚約することを、ここに宣言する!」


 悪役令嬢っぽい少女は、驚きの表情を浮かべた後。


「ブルーツ王子……。


 今の言葉はつまり……私との……婚約を破棄する……と。


 そういう風に受け取って、よろしいのでしょうか?」


 そんな言葉を、王子に投げかけたのであった。





「よ、大将! 今日も『婚約破棄』やってる?

 とりあえずナマを1つ!」


「お、旦那、いらっしゃい、ナマ1つよろこんでー!

 今始まったばかりの、生きの良い『婚約破棄モノ』ありますよ~」


「たいしょー!

 こっちはハイボール1つ!」


「はいよハイボール1つよろこんでー!」


「こっちには日本酒……大将のおススメで!」


「はいよ『婚約破棄』に合わせるなら山口の純米大吟醸『断罪』がおススメですね!

 胸にスッキリ落ちるところなんかは、磨きは3割9分でも値段の割に十分に『断罪』として楽しめますよ!」


「よっしゃ、んじゃそれ頂戴!」


「はいよ『断罪』1つよろこんでー!」





「私は、ネトラ令嬢と出会い、そして、愛を知ったのだ!


 ナッツクラッカー令嬢……貴女とのような、政略でもなんでもない、真実の愛をな!」


 王子は、ネトラ令嬢を強く抱きしめながら、そんな言葉を叫ぶ。





「良いぞ、王子様!

 大将、コハダ、タイ、あとおススメの白身をちょうだい!」


「よ! 真実の愛!

 こっちは光り物、適当に握ってくれー!」


「身分より、真実の愛、か。

 大事だよねェー。

 ところで、たいしょー!

 サーモンないの?」


「はいよ、コハダ1、タイ1、白身1に、光り物いくつかですね、よろこんでー!

 ウチは一応江戸前なんで、サーモンは無いんですよー!


 あ、でも、刺身でなら出せますよ!」


「やだやだ、刺身より、たいしょーの握った寿司のほうが良いや!

 んじゃ、ハマチとマグロ、あとハイボール、ちょーだい!」


「はいよハマチ1、マグロ1、ハイボール1つですね、よろこんでー!」





 悪役令嬢っぽい少女は、そんな王子と、少女に向かって、手を叩いた。


「なるほど、真実の、愛、ですか。

 この国の教会の巫女であるこの私が、真実の愛を、どうして妨げられましょうか?

 お二人の門出を、祝福させていただきます」


 どうやら悪役令嬢っぽい少女は、2人の真実の愛を、祝福しているようであった。


「ところで……この国の法律では、『巫女の血族の女子と結婚した国王の血族の男子のみ、国王の位につける』というものがありますが。


 ……当然ブルーツ王子は、国王の位を放棄し、市井に下る、と。


 そういうことで、よろしいのですよ、ね?」


 悪役令嬢っぽい少女は、至極当たり前のことを聞くかのように、王子へ問いかけた。





「おおっと、そうきたか!

 真実の愛が試されるぞ王子様~!

 うわなんだこのタイ旨すぎる!」


「国の法律なら仕方ないね、当然ここは市井に下る、一択でしょう!

 大将!

 サバの〆具合、最高っす!」


「はいよありがとうございますー!」


「……大将……し、真実の愛って……なんでしょうね……グス……」


「……お、お客、サン……。


 ……そうですか、真実の、愛。

 ……そうですねえ。


 ……あっしは、寿司を握るしか能がない男なんで、解りかねますがねぇ……」


「グス……」


「そうやって、ずっと気にかけてしまうくらい、心の中を占拠している。

 これはお客さん……いわゆる1つの、真実の愛……って、ヤツじゃあないですかい?」


「た、大将……!


 ……ん、コレは?」


「サービスの赤出汁ですよ。

 酒覚ましです。

 熱いですけど、さっさと飲んでくださいね。


 そうでないと……」


「そ、そうでないと?」


「……奥様の実家への終電、間に合いませんよ?」


「た……大将……!」


「はい真実の愛1つ、よろこんでー!」





「い……いや、それは、ナッツクラッカー令嬢、お前を、側室に迎えて……」


「ウチの国は側室を認めておりません。

 認めたところで、私は拒否します」


 王子の言葉を、悪役令嬢っぽい少女は、当然の様に切り捨てる。


「……え?

 なにそれ、ブルーツは、王様になれないの?」


 王子に肩を抱かれた少女が、ここで初めて声を上げた。


「えーっと、簡単に言いますと。


 私と王子が結婚したら、王子は王になれますが。

 貴女と王子が結婚したら、王子は王になれません」


「なにそれずるい」


 悪役令嬢っぽい少女の言葉に、少女は素直な感想を口にする。


「まあ、気持ちはわかりますが。

 それは私にではなく、国とか、王とかに言ってください。


 ……そして、ネトラ令嬢。

 貴女は、真実の愛とやらで、平民となったブルーツ王子と永遠の愛を誓う……と。

 そういうことで、よろしいんですよね?」


「あ、いや、よろしくないです」


 悪役令嬢っぽい少女の言葉を、少女はすかさず拒否した。




「ざまあああああ!

 ビールおかわりー!」


「めしがうまいわああああ!

 いやマジでメシは美味いんだけど!」


「はいナマ1つよろこんでー!」


「真実の愛を口にするなら、王子は市井に下って、少女も身分関係なく愛しないとダメでしょ~。


 あ、たいしょー、ハイボール、も1つ!」


「はいよハイボール1つよろこんでー!


 ……お客さん、大丈夫ですか?

 飲み過ぎですよー?」


「え、飲みすぎィ?

 全然だよ、こんなァ、まだまだ全然酔ってないィよ。

 あ、ありがとォ、頂きまァす。

 んー、美味い!」





 悪役令嬢っぽい少女は、笑顔を浮かべたまま、王子に語りかける。


「そしてもう1つ。

『巫女に対する誹謗中傷は、これを許さない』という法律がありまして。

 王子と言えど、これに背けば、最悪の場合死罪も免れません。


 今回の場合、万座の席で、私に恥をかかすおつもりでの、婚約破棄。


 これは、非常に悪質な部類(・・・・・・・・)に入ると思われます。


 つまり(・・・)


 ……最悪の場合も(・・・・・・)考える程度の(・・・・・・)罪になると(・・・・・)思われます(・・・・・)





「いやあ、今回の悪役令嬢は、大分追い詰めてくるなぁ!

 大将、おススメの貝、ある?」


「これは王子の断末魔が心地良いタイプのヤツだね多分!

 よっしゃ、大将!


 イクラと、ウニと、大トロ頂戴!」


「たいしょー!

 ハイボール、も1つ!」


「はいよ貝1、イクラ1、ウニ1、大トロ1、ですね!

 はいよろこんでー!」


「あ、あれ?

 ハイボールは?


 ……ねー! たいしょー!」





 すっかり冷え切った、舞踏会会場。


 すっかり冷え切った、『真実の愛』の前で、王子が、無様な姿をさらしていた。


「な、ナッツクラッカー令嬢……。


 ……そ、そうだな、そうだ。

 わ、私も、悪いところは、あった。

 ど、どうやら、今回のは。

 し、真実の愛ではなく。

 ……一時の、気の迷いであった。


 一部、謝罪することも、まあ、や、やぶさかでは、ないな。

 ゆ、許せよ」


 王子の、謝罪になっていない謝罪に対して、悪役令嬢っぽい少女は。


それで(・・・)許されるとでも(・・・・・・・)?」


 と、まあ、当たり前の言葉を、返すのであった。


だけれども(・・・・・)


 悪役令嬢っぽい少女は、言葉を、続ける。


「男性の方は、あちこちに気が行く生き物だと、聞いております。


 下半身で物を考えたり、行き当たりばったりで行動したりする、とも」


 悪役令嬢っぽい少女の言葉に、一縷の希望を見出した王子は、その言葉に同意をした。


「ま、まあ、そういうところはあるよな、男というものは。


 だから」


「だから、命までは取りません。


 私も、理解ある、妻を、目指したい、ですからね」


 悪役令嬢っぽい少女の言葉に、王子は、安堵のため息を吐く。






だから(・・・)潰す(・・)きんたま(・・・・)()ひとつで(・・・・)勘弁してあげます(・・・・・・・・)










「待ってましたああああああああああ!ビール追加!」


「きんたまつぶされろおおおおおおお!こっちもナマ1つ!」


「わたしにも、ハイボール1つね!」


「はいよナマ2つよろこんでー!」


「こっちには日本酒……大将のおススメで!」


「はいよ『金玉潰し』に合わせるなら新潟のどぶろく『()玉消(たまげ)』がおススメですね!

 喉につかえる『濁り』は、まるで口の中で『金玉潰し』が行われたような気持ちを味わえますよ!」


「よっしゃ、んじゃそれ頂戴!」


「はいよ『()玉消(たまげ)』1つよろこんでー!」


「…」


「…」


「……あれれ、ハイボールは?」






 遠くで、王子の声が聞こえた。


 ヒエエ、オタスケー!


 遠くで、悪役令嬢っぽい少女の声が聞こえた。


 ハジケテ、マザリアソバセー!


 そして、クルミが割れるような音が、聞こえた。


 グシャー!


 そして舞踏会会場は、より、静かになった。





「ひええ、くわばらくわばら。

 玉ヒュンというヤツだわ」


「恐ろしや恐ろしや。

 俺もそろそろ、かみさんに潰される前に帰るとするわ」


「はいよ、こちらはサービスのお鮨詰め合わせになります!」


「おお。

 え、あれ?


 そんなサービス、あったっけ?」


「フフフ、今日だけですよ!


 これがあれば奥様から金玉潰されることはないと思います!

 奥様を、大切に、って、ね!」


「……た、大将……!」


「全く……。

 これだから大将んとこに通うのがやめられないんだよ!」


「たいしょー!

 ハイボール1つ……」


「ありがとうございましたまたお越しくださいませ~!」


#####



 ・


 ・・


 ・・・



#####



 数時間後



「……たいしょー……ハイボール……ぐぅ、ぐぅ……zzz」




「す、すまん、店主よ。


 少し、飲みたい気分なのだが、良いか?


 ちょっと、たまたま、玉を潰されて、な……」


「あ、すみません、旦那ぁ。


 今日は店じまいなんですよ。


 またお越しくださいませ~!」





 おしまい。

仕事で2日徹夜、60時間働いた後に、お酒を飲んだら、こんな小説が書けます!(すごいテンションで)


他にも、悪役令嬢もの、書いてます~


トキ様のパーフェクト悪役令嬢教室

https://ncode.syosetu.com/n1020cx/


豚公爵と猛毒姫

https://ncode.syosetu.com/n8014ci/





###朝起きて、シラフの状態で再読中###


NIOさん「なんだこのヒドイ作品は」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] おすすめから来ました。 なんとなく予想はしてたけど、真面じゃなかった………! 王子ざまあですね。酒が進むぜ!
[一言] 最後にやっとナッツクラッカーあっ(察し)になれました(*´ω`*) 合いの手に入る寿司屋の人々が面白すぎる笑 そうだ、今日は寿司にしよう。(持ち帰り)
[良い点] なにこれww すき
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ