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【第8話】 苦労人と冒険大陸

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「国王! 一国家を治める者が、いくらなんでも土下座は……」

「バッキャロー! 勇者召喚とか言いながら人間一人誘拐しといて、頭下げただけで許されると思うなや!」


 そう言って再度、頭を下げる国王・ギース。

 某テンプレート教国の国王に聞かせたいセリフである。


「とにかく土下座じゃ! 土下座こそが誠心誠意謝罪するのに一番適したフォームなんじゃ! 安心せい! 夫婦生活二十年で培った“キングフライング土下座”は(エステル)以外には効果覿面じゃ‼」

「いや、一番肝心な相手に効いてないじゃないですか‼」

「当たり前です。追い込まれたらとりあえず難を逃れようとする魂胆が見え見えの謝罪なんて、受け取る価値ありませんから」

「王妃様キツい‼」

「とにかく説明もしていない状態で謝られても迷惑でしょう。まずは事情を説明します」

「あ、はい……よろしくお願いします」


 夫と対照的にカリスマ溢れる王妃に言われ、その場に正座。説明を聞くことに。


「まずはウエサカ様、この度は我らの勝手な都合で見ず知らずの地に()んでしまい、誠に申し訳ございません。貴方様を召喚したのは宮廷法術士たちの完全なる独断。我々の知らぬうちに勇者召喚の儀を行ったのが原因なのです」

「な、なるほど。そうだったんですね」


 未だに犬神家状態で放置されているジジイを見て納得。

 確かに独断でこんな事やらかしたのだ。やりすぎだと思ったが、実情を知ったので同情の念は薄れていく。


「でも、どうしてそんなことを?」

「それは、ワシから話そう」


 妻から窘められてショボーンとしてた、国王ギースが復活。

 真面目な顔をして玉座に戻り、懐から水晶を取り出す。


「まずは、これを見てくれ」


 すると水晶から映像が浮かび上がる。映し出されたのはプラチナブロンドの美少女が、仔猫に満面の笑みを浮かべながら頬ずりしている光景だった。

 なんでだろう? この娘、どことなく王妃に似ているような……


「あ、間違えた。これ十五年前のエステルの映像じゃったわ」

「あ・な・た!」

「すまんすまん! でも、かわいいじゃろ? 昔はお転婆でのぉ……」

「……すいません。その話、長くなります?」


 エステルとの馴れ初めを語り始めるギースに、呆れながらツッコミを入れる。

 嫁にペシペシ叩かれながら「悪かった、めんごめんご」と仕切りなおし。

 映像は切り替わり、新たに巨大な地図が映し出される。


「これは?」

「この世界――通称“冒険大陸・ルグリア”じゃ。今、この大陸……いや、人類は滅亡の危機に瀕しておる」

「滅亡って、魔王が世界征服を企んでるとか?」


 ライアガルドに召喚された理由を思い出し尋ねる。

 するとギースは「魔王か、それならどんだけ楽だったものか……」と苦笑する。


「今、言うたが、“人類滅亡”の危機じゃ。そこに魔族も人間も獣人もエルフもない。文字通りの人類が滅ぶか否かの瀬戸際なんじゃよ」

「どういうことですか……?」

「こいつを見てくれや」


 すると新たに映し出されたのは“異形”――白と黒の斑模様の球体を中心に、獣や鳥に植物、果てはドラゴンの姿をした灰色の怪物たちが、人間たちを蹂躙している光景であった。


「こ、これは……?」

「こいつらこそ、人類の天敵。この世界を滅びに向かわせる最悪の生物“メサイア”じゃ」

「メサイア……」


 灰色の怪物――“メサイア”は今から約二十年前に突然、この世界に現れたそうだ。

 発見当初は新種の魔物程度にしか認識されていなかったが、ある戦争に介入してから一転、人類の脅威として認識されるようになったと言う。


「その戦争と言うのが、神族に選ばれた勇者たちによる連合軍と邪神に魅入られた魔王率いる魔王軍の一大決戦、通称“神魔大戦”じゃった……」

「そちらの言葉で例えるなら『ラスボス戦』でしょうか? その最中に、突如大群を率いて戦場に乱入したそうです」

「え?」

「所詮魔物と高を括っていた両軍は相手にもしなかったが、勇者と魔王並びに両軍の主力数名を瞬く間に殺害して状況は一転。両軍ともに数日で壊滅させられたらしい」

「え!?」

「おまけに、彼らを駆除しようと神族が顕現。同時に、その時発生した大量の恐怖や憎悪を糧に邪神が復活したのですが……」

「圧倒的物量差に返り討ちにされてのう……両方ともあっという間に喰い殺された」

「ゑぇぇぇぇぇぇ!?」


 度肝を抜かれる超展開に仰天する歩夢。

 そりゃそうだ。ラスボス戦に突如現れたぽっと出の第三勢力が両陣営を壊滅させ、さらには神二柱を数の暴力で圧倒するなど……

 この世界、色々ヤバい……


 顔を真っ青にしていると、映像が切り替わり別な地図が出現。

 人類生存圏を示す場所を白、メサイアの支配下に置かれた場所を赤で表しているというが、至るところが赤で染められている。


「現在、人類の生存圏は六割程度。まだなんとか持ち堪えておるが、この均衡がいつまで保っておるかわからんのじゃ」

「…………」


 あっけらかんと言う国王に、歩夢は最早何も言えず固まらざる負えなかった。


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