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【第7話】 苦労人と土下座

読んでいただきありがとうございます。

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「まったく、人のことを山賊呼ばわりとかマジありえんわー。ワシじゃったからよかったけどこれ、隣国とかじゃったら即、手打ちじゃからの?」

「す、すいません……あまりにもインパクトが強すぎて……」

「ま、ええわ。次から気をつけてなー」

「ノリが軽い……」

「んじゃ、気を取り直して……よく来たのぉ、異世界からの客人よ。ワシはこのグランアステリア王国を治めとるギース・グランアステリアじゃ! 気軽に“ギーちゃん”って呼んでくれや!」

「いや、さすがに気軽過ぎませんかね!?」


「仮にも王様でしょ!?」とあまりにも軽いノリに思わずツッコミを入れてしまう歩夢。

 しかし、当の本人は気にもせず、今度は傍らに座る妙齢の美女を紹介。


「で、こっちがワシの嫁でこの国の王妃、エステル・グランアステリアじゃ!」

「どうも、異世界のお客様。この度は多大なご迷惑をお掛けし、大変申し訳ございません」

「あ、どうも……」


 国王ギースのノリとは対照的に、女王の威厳を見せるエステルに委縮してしまう。

 プラチナブロンドの髪に優しげながらも強い意志を秘めた青い瞳。そして、下手したら二十台にしか見えない、その美貌がよりその印象に拍車をかける。

 まさに美女と野獣の組み合わせである。


「ちなみにいくら美人じゃからと言って手ぇ出したら、ぶっ殺すからの」

「だ、出しませんよ!?」

「なんじゃと!? うちの嫁が魅力ないっていいたいんか!?」

「そんなこと言ってませんよ!? なにこの理不尽!?」


 最早、国王とかそういう立場を忘れ、ツッコみまくる。


「で、こっちの自己紹介は終わったから、次、そっちな。名前とか年とか教えてくれや」

「あ、はい……上坂歩夢です。歩夢が名前です……十五歳です……」

「十五さいかぁ……エステルがワシと合った時もそんくらいじゃったのぉ? あれは確か……」

「あなた、話が進みませんので真面目にやってください」


 夫婦の馴れ初めを語ろうとするギースに今度はエステルがツッコむ。

 そんな夫婦漫才的やり取りをしていると、ふと後方が騒がしくなった。


「あ! こらジジイ! 勝手に前に出るな!」

「やかましい! ワシは宮廷法術士の団長じゃぞ! 事情を説明すればきっと分かってくださるハズじゃ!」


 そう言って、周りを押しのけ拘束された全裸ジジイが歩夢たちの前に現れた。


「陛下! 勇者召喚は成功いたしました! これで“メサイア”にも対抗できます! 故に魔術師などと言う連中に頼る必要はないのでございます!」

「は? メサイア? 魔術師? どういう事?」


 聴きならない単語に首を傾げる歩夢を他所に、見苦しい事この上ない格好でヘコヘコするジジイ。

 それを見て、ギースは腕組み「ふむ」一考するような素振りをみせる。


「法術士団長、(おもて)を上げい」

「は、はは~」


 まるで時代劇のようなノリでかしこまるジジイに、ギースはさっきのノリと打って変わって厳格な態度で語り掛ける。


「たしかに“メサイア”に最も有効的なのは勇者の力じゃ。それは理解できる」

「で、では……」

「でもワシ言ったよね? 勇者召喚は禁止って、言ったよな?」

「う、し、しかし……」

「しかしもカカシもあるかぁぁぁぁぁぁ‼ キングラリアットぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ‼」

「ひでぶ‼」

「ええええええええええ!?」


 一体いつの間に移動したのだろうか?

 玉座にいたギースは一瞬にして、ジジイにラリアットを叩き込んでいた。


「ぐ、ぐふ‼ へ、陛下、話を……」

「言い訳すんな‼ キングエルボー‼」

「びぎゃ!?」


 仰向けに倒れながらも、なにか言おうとするジジイに追撃のエルボー炸裂!

 鳩尾に叩き込まれ悶絶する。


「命令違反した癖に開き直りおって! おまけにワシの嫁に汚らしいポコ〇ン見せよってからに‼ 今度と言う今度は許さん‼」

「へ、陛下! ご、ご慈悲を……」

「キングスィ――――――――――ング‼」

「ぎゃああああああああああ!?」


 ギースはさらに両足を掴み、ジャイアントスィング。

 小さな竜巻の如く周り、全裸のジジイを振り回し、空中へとぶん投げる!


「とぉう!」


 トドメとばかりに、空中へ放り投げられたジジイに向かって超人的な脚力で跳躍すると必殺技を叩き込む。


「キ―――――ング・ダイナミック・ドライバぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」

「ぎゃああああああああああああああああああああ‼」


 ドゴォン‼

 玉座の間を揺るがす程の振動におののく歩夢。

 舞い上がった粉塵が晴れるとそこには、大理石の床に頭から突き刺さった哀れなジジイの姿が……


「さて……次はお主の番じゃのぉ……」

「え? ぼ、僕ぅ!?」


 先ほどの友好的な態度はどこへやら。

 ギースは血走った目で歩夢を見据えていた。


「あわわわわわ……‼」


 そのあまりの威圧感に腰を抜かしてしまう。

 しかし、ギースはそんなの関係ないとばかりに、再び跳躍する。


「食らえ! キ―――――ング……」


 それは処刑へと続く序曲。

 逃げようにも、蛇に睨まれたカエルのように体が固まってしまい、動くことはできない。


「ジャンピ―――――ング……」

「ひ、ひいいいいい‼」


 ――()られる。


 完膚なきまでに殺される!

 本能で死期を予測した歩夢は、涙目になりながら故郷への家族に想いを馳せた。


(母さん、姉さん、弟&妹よ……先立つ不孝をお許しください……‼)


 観念したかのようにギュッと目を瞑る歩夢に、ギースの必殺技が炸裂する。


「土下―――――座ッ‼ すんませんでした――――――‼」

「………………は、はいぃ?」


 恐る恐る目を開けて飛び込んできた光景は、綺麗な土下座を見せる一国の王(ギース)の姿でる。


「ホント! すんませんでした――――――‼」


 ……それは、夫婦生活二十年の間に培った、技術の結晶。

 全身の筋肉をフルに使い、謝罪の念を込めて放つギース最大の必殺技(フェイバリット)

 その名も“フライング土下座”であった‼


「部下が面倒かけてすんませんでした――――――‼」

「え、え―……」


 やくざ顔負けの親父に土下座され呆気に取られる歩夢。

 その様子を玉座から眺めるエステルは、呆れたようにため息を吐くのであった。


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