表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

第三話 船の上

 南を行く船の上。真斗と母さんはデッキの上にいた。船から見える景色は右は海、左も海、前も後ろも海しか見えない。もうすでに陸から十分に離れ、辺り一面の海景色。真斗は初めての海に興奮していた。デッキにはものすごい勢いで風が流れていく。真斗は手を大きく横に広げ、体全体で風を受け止める。体を包み込むように流れる風は、温かく、どこか人を安心させるものがあった。


「母さん。きもちーねー。なんか、僕、鳥になっちゃったようだよ」

「そうねー。潮の香りもいいし、雰囲気さいこうねー」

「え?!それはないよ。なんか、お魚臭くて、気持ち悪くなっちゃいそう」

「えー。まだまだ真斗は、子供ね」

「子供だしー」


 真斗は目を細くして言った。


「そういや、なんでこの船ってずっと帆に風を受けてられるの?さっきから一度も、たるまないよ」

「風属の人が操ってるの。あと、水の属を持った人が船を揺れないようにしたり、進路をとったりしているの」

「すげー。母さんもできるんじゃない?」

「人のお仕事は取っちゃいけないのよ。それに、私がやったら、帆が破けちゃうわ」


「母さん!なんか、あっち、すごい人が集まってる」


 デッキの中心のほうに人がたくさん集まっていた。


「なにかしら?」

「行ってみよう!」


 真斗が駆け足で向かうと、そこには、 △ の模様が彫られた腕輪をしている人がいた。腕輪は軍に所属している証であり、孫国の防衛に努めている証でもある。


 「こんにちはー。みなさん、そろそろ退屈してきたところだと思うんで、ちょっとしたショーを始めたいと思いますー」


 その人は自己紹介をしていた。髪が短く、胸の大きいその女性はすごくアグレッシブな雰囲気だった。男性にも劣らないほどのオーラがあり、とてもカッコいい女性であった。これから、ショーが始まるようだ。


「今日は子供さんが多いですね。そこの君、これから何をしに行くのかな?」


 その女性は一人の子供にやさしくたずねた。


「バトルを見に行く!」


 その子供は大きな声で答えた。


「そうだね。ここにいる人は、これからバトルofスクールを見に行くんだよね。私はそこで、みなさんの安全を守る仕事をしに行くんだ。よろしく。さて、前置きはこれくらいにして、さっそく、ショーを始めたいと思います」


 そういうと、その女性の足が地面から少しずつ離れいった。体が浮いている。そして、急にスピードを上げて、まっすぐ、上に飛んでいく。そして、船から見えるその姿はどんどん、どんどん、小さくなっていき、ついに見えなくなってしまった。


「あれ。いなくなっちゃた」


 真斗は目を丸くして言った。すると、急にデッキに吹いていた風が、目を開けていられないほど強くなった。少しして風がやみ、前を見ると、そこにはその女性の姿があった。


「すげー!テレポート!?」


 真斗は興奮して叫んだ。


「まあ、そのようなもんだ」

「もう一回!もう一回!」


 真斗の興奮はすでに最高点にあった。


「じゃあ、次は君の番だ!」


 その女性はそう言うと、真斗の周りの風を操り、真斗を天高く飛ばしあげた。


「うおーおーうおー!フオー!」


 真斗の体は宙に浮き、鳥のように空を飛んでいた。船の周りをぐるぐる回り、デッキを抜け、飛び上がる。


「うあーあーあーあー!え、え、えーーー!」


 真斗の体が徐々に船から離れていく。


「あ、ちょっとやばいかも…。集中、集中。ほっ!」


 真斗の体は徐々に船に近づいてきて、デッキに着地した。


「もう、満足です」


 真斗は少し疲れた表情で言った。それから、もう二つか三つか見せ物をしてショーは終わった。


「どうも、ありがとうございました」


 すると、母さんはその女性に近づき、声をかけた。


「相変わらず、派手なことが好きなようね。美香みか

聖夜さやも、相変わらずきれいね」

「はいはい。いつもありがと」


 母さんとその女性は親しげに話し始めた。美香は昔、同じ戦場で戦っていた戦友である。この二人はそのころから気が合い、とても仲が良かった。


「この、聖夜みたいなきれいな顔立ちの子供は、もしかして…」

「そう、私の子よ。真斗っていうの」

「こんにちは、マサト君。私は美香ね。よろしく」


 真斗と美香は改めて挨拶をした。


「さっきはごめんね。ちょっと調子に乗りすぎちゃった。大丈夫だった?」

「はい!もう、なんか、すごかったです!最後のほうは頭クラクラしてましたけど」

「あはー。まあ大丈夫そうでよかったー」


 美香と真斗はすっかり仲良くなった。


「ちょっと中で話さない?」

「そうね。ジュース買ってあげるけど、マサトはどうする?」

「いくっ!」


 三人は船の中にあるカフェに行く。美香と聖夜は思い出話に花を咲かせていた。聖夜と美香は昔同じ班でともに戦っていた時期があったのだ。真斗は少し退屈そうで、落ち着きがなかった。それを見かねた美香は真斗に


「マサトくん知ってる?聖夜って、五属なのよ」

 

 と、耳元で囁くように言った。


「五属ってなに?」

「属の火、水、土、風、雷を全て扱える人のこと。この世界にほんのわずかしかいないの」

「へー。母さんって、やっぱすごかったんだ」


「その話はしないでっていったでしょ?他の人に聞かれたら、私、命を狙われることになるのよ」

「だから、ちっちゃな声で話してるんじゃないの。それに、いずれ、マサト君にも話しとかないといけなかったしょ?スクールに行く前でよかったじゃない」

「まあ、それは一理あるわね」


「なんで母さんが命を狙われなきゃいけないの?」

「いーい?これはここだけの話よ」


 三人は小さな声で話し続けた。


「五属は少ないがゆえに、その場にいたら強力な戦力になるの。強い味方は誰でも欲しいもんでしょ?だから、五属のことが役人に知られれば、聖夜は戦いに駆り出されて、マサト君と一緒に過ごすことができなくなるかもしれないの」

「えっ。それはやだ」

「そうね。だから、これはここだけの秘密、ね?」

「直斗にも話しちゃいけない?」


 真斗は母さんにたずねた。


「直斗には私から話すわ。帰ったら、話すことがいっぱいあるわね」

「バトルのこともいっぱい話すしね」


 それから少しすると、空を飛んだことや、母さんが五属であったことなどを聞いて、疲れたのか、真斗は眠ってしまった。聖夜と美香は父さんの霜剣のことや、直斗のことについて話したり、今の役人の動きについて話したりしていた。



 それから、まる二日が経った。すると、水平線の彼方から島が姿を現した。近づいてくると、そこには、島の中心にどっしりと構える大きな建物が姿を見せる。その建物とは、バトルofスクールの会場、バトルコロシアム。一年に一度の大会というだけあって、多くの人で島が溢れていた。和州中にある学校から、予選を勝ち抜いてきた強者が集まる。観客はスクールの生徒やその親、ハイスクールの関係者まで、いろいろな人がこの日を待ちに待っていた。会場の周りにはいろいろな店が立ち並び、賑わっている。食べ物が売られ、飲み物が売られ、剣や刀、弓などの武器を扱っている店もある。


 船が港に着き、真斗と聖夜、美香は船から降りた。


「はー。これから忙しくなるなー」


 美香がため息をもらす。


「何事もなければいいけど」

「おそらく、役人も何人か来ているはずだわ。くれぐれも見つからないようにね。フード付きのマントなんか、羽織っておくといいかもね」

「心配してくれてありがとう。そうね。買っておくわ。また、会いましょ」

「じゃあ」


 真斗と聖夜は美香と別れ、街の中に入って行った。

 真斗は目を輝かせ、心の中で思う。


「バトルofスクールって、すげーな」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ