第8話 圧倒的な力
リサとエリサは二手に分かれ、左右から攻撃を仕掛けた。
リサが剣を抜くと、剣は炎で包まれた。
「はぁぁ!」
左側に回り込んだリサは飛び上がりダンテに斬りかかった。
その時、ズン!と体が重くなるのを感じた。
(これがアランの言ってた…!)
力を振り絞り、剣を振ろうとしたがうまく体が動かない。前を向いた時、黒いオーラを放った拳が近づいているのに気づいた。
「やば…」
「ふん、遅い遅い!」
拳はリサの顔面に直撃した。
リサは殴られた勢いで民家の壁にぶつかった。
「いたた…」
「ふん」
リサの方を向いていたダンテの背後に、エリサが近づいた。
「行きなさい!ナーガ!」
エリサの手のひらの紋章から、大きな白蛇が飛び出した。白蛇は目にも留まらぬ速さでダンテの方へ飛びかかり、首に巻きついた。
「ちっ…油断したか…」
白蛇はギリギリとダンテの首を締めて行く。
「さぁ、そのまま絞め殺しちゃいなさい!」
「くくく…そこそこやるが…こんなんじゃ俺は殺せねぇぞ!!」
そう叫んだ瞬間、ダンテは両手で白蛇を握りしめた。
どうやら白蛇を引きちぎろうとしているらしい。
それに負けじと、白蛇も力を入れる。
「おらぁぁぁあ!!!」
ダンテの体から黒いオーラがではじめた。
その瞬間、ぶちぶちと気味の悪い音があたりに響いた。
「シャー…」
首に巻きついていた白蛇は真っ二つに引きちぎられ、その場から消え去った。
「な、ナーガが…!」
「ははは!甘い甘い!甘すぎるゼェ!!」
ダンテは勢いのまま走り出した。
それに気づいたエリサは後ろへ回避しようとした。
しかし、あまりの速さに追いつかれてしまった。
「はや…!」
腹部に激痛が走る。
ダンテの拳は、エリサの腹部にめり込んでいた。
「がぁ…く…」
ダンテが腕を下げると、エリサはその場に倒れこんだ。
「はぁ、手応えのねぇ奴らだ。偉そうにしてやがったからもっと強いかと思ったてたぜ」
「エリサ…」
リサは壁から這い出し、エリサの方へ向かった。
エリサに手を伸ばした時、ダンテはエリサの首を掴み持ち上げた。
「あーあ、つまらねぇ。まずこいつから殺してやるか」
そう言うと、ダンテは腰からナイフを取り出した。
そのナイフは、エリサの首筋に当てられた。
「やめろ…ダンテ…」
アランは細々とした声で言ったり
「こいつは見せしめだ。俺に逆らうとどうなるか、お前らにも教えてやるぜ!!」
ナイフがエリサの首に向かう。
アランとリサは目を閉じ、エリサの死を覚悟した。
その時だった。
「フレイムフィスト!」
ダンテの背後から声が聞こえた。
そして、燃え盛る拳がダンテの顔面に直撃した。
「ぐぁぁあ!?」
ダンテの体はふわりと浮き、手に握られていたエリサはその場に崩れ落ちた。
(この炎攻撃…ジェリドか!)
攻撃の飛んできた方を見ると、やはりそこにはジェリドが立っていた。
(ちっ…なんでこいつがここに…?)
ダンテは殴られた体勢のまま、その場で止まった。
ジェリドはエリサを抱え、少し離れた場所に移動させた。
「よぉ、ダンテ。随分好き勝手してるみてぇだな」
「ジェリド…なんでてめぇがここにいやがる!」
ダンテはジェリドの方を睨みながら体勢を立て直した。
「お前に用事があってな…探し回ってたんだ」
「はぁ?用事だぁ?」
「あぁ。率直に聞くぞ。お前、青龍団と繋がってるな?」
その問いに戸惑ったのか、ダンテの顔は少し歪んだ。
「は、はぁ?何を言ってんのか分かんねぇなぁ」
「とぼけても無駄だ。さっきダウンタウン・シティの前でお前を待ってた青龍団のやつに聞いたからな」
「ちっ…余計なことを…」
「ちょっと脅したらすぐに吐いたさ。お前が村や町から奪った金を青龍団に回してるってな」
「…ちぇ、そこまでバレちまったら隠しようがねぇな」
「ふん、おかしいと思ってたんだ。今まで小さな盗賊集団だった青龍団が最近一気に力をつけたことをな。まさかお前が関係してるとは思わなかったぜ、ダンテ」
「ふん、それで俺をどうするつもりだ?」
「そうだな、勇者団に突き出すってのもアリだが…やっぱてめぇはここで殺しとくべきだなぁ」
そう言うと、ジェリドの体が炎に包まれた。
「ほぉ、俺とやろうってか?やめとけよ、今のお前じゃ俺には勝てねぇぜ」
「はっ、何言ってやがる。それはこっちのセリフだぜ」
「なんだと?随分舐めたこと言ってくれんじゃねぇか!いいぜ、そこまで言うなら俺の本気見せてやるぜ!」
ダンテが力を溜めると、体からさらに黒いオーラがではじめた。
「どうだ…?俺の本気は!!」
ダンテのオーラは、さらに強さを増した。
「…5発、いや…3発だ」
ジェリドは指を3本立てながら言った。
そのジェリドの顔は、自身に溢れたものだった。
「はぁ?何のことだ?」
「今のお前なら3発の攻撃で殺せるってことさ」
「この…!舐めたこと言いやがって!!殺してやるよ!!」
叫び声とともに、ダンテはその場からフッと消えた。
ダンテが現れたのは、ジェリドの真後ろだった。
「ジェリド…!気をつけろ…!そいつに近づくと体が…重く…!」
そう叫んだのはアランだった。
(体が重く…確かにさっきよりも重い気がするな。だが、気になるほどじゃねぇな)
「ははは!粉々になって死ねや!!」
そう叫んだダンテの手のひらには、バスケットボールほどの黒いオーラの玉が作られていた。
「おらぁ!!」
ダンテの手からオーラ弾が放たれた。
「さぁ、避けるか!?くらうか!?避けたらここら一帯消し飛ぶかもしれないぜ!!」
「ふん、くだらねぇ技だ」
ジェリドの方へオーラ弾が迫っていく。
しかし、ジェリドき焦った様子はなく、むしろ笑顔を浮かべていた。
「死ね!ジェリド!!」
ジェリドの目の前にオーラ弾がきたその時だった。
ジェリドが右手を払うと、オーラ弾はその場で弾け消え去った。
「…は、はぁ!!?」
あまりの驚きに、ダンテは口を開けたまま立ち尽くしていた。
「おいおい、お前の本気はこんなもんか?残念だぜ、全く」
「そんなはずはない…俺のオーラ弾が…」
(す、すげぇ…オーラ弾を右手だけで弾き消しちまった…)
その驚きは、アランも感じていた。
それと同時に、アランはジェリドとの力の差も感じていた。
「さぁ、次は俺の番だぜ!!」
ジェリドはニヤリと笑顔を浮かべた。
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