第1話 冒険の始まり
「はぁ、緊張するなぁ…」
一人の少年が軋むベッドに潜りながら言った。
眠れず、窓から顔を出すと外は静寂な闇に包まれていた。
そんな中で、無数の星がキラキラと輝いている。
「…遂に明日か」
少年は16歳という若々しい年齢だとは思えないほどの思いつめた顔でそびえ立つ山々を眺めていた。
「寝よう」
少年はベッドへと戻った。
静寂が訪れた部屋では、窓の揺れるガタガタという音だけが響いていた。
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「起きなさーい!!アラン!!」
「ん…」
バァン!と音を立て、ドアが勢いよく開いた。
「いつまで寝てるの?今日から旅にでるんでしょ!?」
虚ろな目で時計を見ると、針は午前10時を指していた。
「やっべぇ!」
「やっべぇじゃないわよ!早く支度しなさい!」
少年はバタバタと音を立てながら階段を下った。
「あっ」
ドカドカーン!!
少年は階段から転げ落ちた。
「痛ってぇ…」
「なにやってんのよ、全く」
少年は頭を抑えながら立ち上がった。
リビングのテーブルにはこんがりと焼けたパンが置いてある。
「美味そう…」
少年はパンを横目に寝間着をを脱ぎ、黒色のフード付きのロングコートを着た。そして、茶色いズボンを履きながら、パンの元へ歩き出す。
「剣と10000ゴールド、ここに置いとくわね」
「あぁ、あんがと」
少年はパンを一瞬で食べ尽くすと、横に置いてあった牛乳を飲み干した。
「よし、これでオッケー」
剣を背中にかけ、お金を腰にかけた。
「これも」
母から渡されたのは、お守りと水筒だった。
「ありがとう、母さん」
お守りをコートの内ポケットに入れ、水筒をお金と逆の腰へかけた。
「それじゃあ行ってくるね、母さん」
「辛くなったらすぐ連絡するのよ」
「わかった!それじゃあ!」
少年は軋むドアを勢いよく開き、外へ走り出た。
「…行っちゃった」
母は玄関に置いてあった写真を手に取った。
その写真には三人の家族が写っている。
「あなた、とうとうアランも旅に出たわよ…」
母は写真を見ながら涙をこぼした。
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「急げ急げ!」
少年は畑の広がる田舎道を走り続けた。
この村、シアト村の出入り口になっている木の門の下に誰かいる。
「ごめん!!遅れた!!」
アランは息を切らしながら門の下へ歩いた。
「遅れたじゃないわよ!!何時間待ったと思ってんの!?2時間よ、2時間!!」
門に寄りかかっていた少女はアランの方へ向き怒鳴った。
「ごめん!」
「全く、あんたらしいっちゃあんたらしいけど」
「は、ははは」
少女はニッコリと笑ってみせた。
(癒しかよ!!)
アランは心の中で叫んだ。
「さぁ、さっさと隣の町へ向けて歩きましょ、勇者団の本拠地まではいくつも街を通らなきゃいけないんだから」
少女は長い黒髪をなびかせながら歩き出した。
「そうだな」
アランもそれに続き歩き始めた。
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「そういえば、どうしてリサは旅に?」
「そうね…自分探しっていうか、なんかしたい年頃だったっていうか…」
(難しいこと考えてるな…)
アランは心の中で思った。
「アランは?」
「俺は父さんが勇者で、それに憧れて勇者になる為に、って感じかな」
「へぇー、そうなんだ」
そんなことを話していると、看板が見えてきた。
『畑作の町、ルキドラまであと3キロ』
「あと3キロか…」
「意外と近いのね」
リサはスタスタと歩き出した。
(すげー体力だな、こいつ)
言葉に出したら皮肉を言われそうなので、心の中で言うことにした。
俺たちはそのまま歩き続けた。
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ルキドラに着いた時には、もう日は暮れ、あたりは闇に包まれ始めていた。
「とりあえず宿を探しましょう」
「そうだな」
その時だった。
「キャー!!」
あたりに女性の声が響き渡った。
「なんだ!?」
「あっちよ、行きましょう!」
アランはリサに手を引かれ、叫び声の方へ向かった。
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そこには数人の町人と、青いバンダナを巻いた男が二人いた。
「女子を出せって言ってんだろ!!」
「誰がお前らなんかに…」
「うるせぇ!!」
バンダナの男が、一人の老人を蹴り倒した。
「ひやぁ…」
「許せない…行くわよ、アラン!」
「えっ?行くの!?」
抵抗できないまま、リサとアランはバンダナの男たちの前に飛び出た。
「あぁ?なんだてめぇら」
「あんた達は私達が倒してやるわ!」
「はっ、ガキが何ぬかしてやがる、俺たち青龍団に楯突こうってのか!?」
「知らないわよ、やるわよ、アラン!」
「まだ死にたくないぞ、俺」
アランは剣を抜いた。
すると、手には黄色い紋章が現れた。
「死にはしないわよ」
リサも剣を抜くと、手に赤い紋章が現れた。
「ぶっ殺してやるぜ!」
バンダナの男たちは腰の剣を抜いた。
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