フレイ
『いつも』と変わらない森。『いつも』と変わらない空。
その中に1つだけ、『いつも』と違うものがあった。
---あれはなんだろう?---
そう思ったけど、その目の前にいる熊を見て、また『いつも』に戻るのだと落胆した。
興味を失い、その場を離れようとした。
その直後大地に衝撃が走った。
---ああ、また『いつも』に戻ったのか---
振り返ってはならない。見ては必ず後悔する。
頭ではそう分かっていても、『いつも』を変えてくれるかもしれない。その期待に、その希望に抗うことは出来なかった。
そうして振り返った先には---
---ズズゥゥゥンッッッ!!!---
---『いつも』を変えてくれる人がいた。
わくわくに胸が踊った。涙で目が曇った。
その人はまだそこにいる。『いつも』から私を救い出してくれる。そんな可能性が今ここに・・・!
感情を落ち着かせ、その人に声をかける。
『ねぇ、あなたはだぁれ?』
---押さえきれない好奇心を胸に
☆・☆・☆・☆・☆
「けど・・・あのおにぃちゃんもうでていっちゃうんだよね・・・」
この村の皆は私を肯定してくれる。
だが、逆に言えば肯定しかしないのだ。
それに遊ぼうとしても、どこの誰でも『恐れ多い』と構ってはもらえなかった。
でもムツラは違う。
---あんな風に私を叱ってくれる人はいなかった!
---あんな風に私と遊んでくれる人はいなかった!
---あんな風に私に構ってくれる人はいなかった!
・・・けれど、それももうおしまいなのだろう。また明後日から『いつも』に戻るのだ。そしてこの村で終わりのない『いつも』を延々と繰り返すのだろう。
「せめて、なにかおもいででもつくりたいなぁ・・・」
せめて瞬くような間でも夢を見せてくれたのだから。そうだ、花飾りなんてどうだろう?北の森にはキレイな花もあったはず。
そう思い私は門を出て、北の森に足を踏み入れた。
---『ヤット、コノトキガキタカ・・・』---
---その中に潜む獣に気付かずに。
ホラゲーでありそうな展開ですよね。




