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決意





「驚いたな……」




老人と別れた後の俺の第一声はその言葉が出てきた。




「何が?」




「孫策も普通の会話を出来るんだと思ってな」




「ぶー何よそれー? 私は会話ぐらいしっかり出来ますよーだ」




「冗談だ。意外だっただけさ、孫策が年配の人と話しているなんてさ」




「あの人達は私たちより何年も長く生きてる。話はためになるし、館にはあまりそういう人はいないしね」




 孫策は孫策なりに考えているということか。孫策に周りがついていくのはそういう人を引き付ける何かがあるからだろう。



 俺は孫策の歩幅に合わせ、肩を並べて歩く。



孫策にせよ、周瑜にしても二人とも揃って背は高めだ。ただそこは男性のアドバンテージという訳か、俺を見つめるときの視線は上目遣いになる。



――――よく男は上目遣いには勝てないというが……分からん、その気持ちは。





「飛鳥は何であんなとこにいたの?」




「散歩がてらに、町の把握をな。何も知らなくていいってわけじゃないし、いざというとき困るからな」




「へぇ~意外ね。飛鳥って散歩するんだ」




「ま、昔から散歩はする方だったよ」




「……ねぇ、飛鳥のいた国もこんな感じだったの?」




「生活様式は大分違うな、家ももっとしっかりしてるし、輸出入が盛んで、ネットワークをはじめとして、情報社会だった」




「ねっとわぁく?」




「見えない伝達みたいな感じ」




「ふーん、いろいろあるのねぇ……♪」





 ニコニコと笑顔を見せてくる孫策。こうしてみるとほんとうに王には見えない、ただ一人の女性だ。





「……?」





――――ふと周りの視線が気になり、俺は周囲を見渡す。よく見ると民が俺達の方を興味深げに見ていた。


特に何かを探っているとか、疑っているというわけではなく、ただ単に興味を持った視線。




―――あぁ、孫策の隣を俺が歩いているから何者なのかといった視線を向けられているのか。


意識してはいないとはいえ、少し恥ずかしい感じをうける。





「気になる?」




「悪い感じではない、でも慣れないな」




「ふふ♪ 慣れなさい。私たちと共に乱世を歩むならね」




「あぁ、そうだな……」




彼女のそばに立つならそれ相応の覚悟が必要。


はたして俺に出来るのか、今の俺には分からない。


でも必ず、隣に立つにふさわしい人間へとなってみせる。


そう誓った。



――――と








「そうだ! あの絵姿の件、飛鳥に任せたわよ?」




「……は?」





いきなり何を言うのかと思いきや、何を言ってるんだ……?


まさか自分が受けた仕事を、全部俺にさじ投げようとしてるのか。





「さっき私に任せなさいっていってたよな?」




「冥琳にいえば大丈夫だからさ! よろしくねー♪」









人の話など聞いちゃいない。


はぁ……周瑜が頭を抱えるのも分かる気がする。いくら適当とはいえ、これは凄まじいな。





「俺が暇なんて言ったか?」




「あら? 忙しいの?」





「………」





「なら、決定ね♪」





……なぜ言い返さなかったのか、ものすごく自分に後悔したい。


だが今頃気がついても遅い、孫策は鼻歌を歌いながら上機嫌で走って行ってしまう。


あーあ……骨が折れるぜ、全く。





「周瑜、なんて言うかな……」











俺はぽつりと、一言つぶやくことしか出来なかった。

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