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戦の終結




「ちっ……思った以上にひどいな」



「まさに獣の所行ね。むかつくわ……いつか根絶やしにしてやる」



「それは力がついてからだ。今は別に優先すべきことがある」



今優先すべきこと、それは人命の救出と復興作業だ。


孫策が各自に指示を飛ばしていく。俺はその指示を仰ぎ、即座に俺の側近である張楊と趙雲にその内容を伝える。その内容は人命救出。


また俺を補助、案内するという意味で呂布にもついてきてもらっている。


指示されたという感覚はなかった。ただ単に自分の意志で目の前にいる人を救う。それだけしか考えていなかった。









「まずは倒壊した建物の下から。まだ残っている人がいるかもしれん」



「御意。主もあまり無理をなさらずに」



「あぁ、またお前らに心配をかけて泣かれるのは嫌だな。な、張楊?」



「う……あれは飛鳥様が……」



「そうだな。ホントに悪かったと思ってるよ」



右手を伸ばし、頭をワシャワシャと撫でる。女性の大半は俺より身長は小さいためにちょうど頭が手を置きやすい位置にある。


撫でられる方からすれば嫌がらないのかと言われると自信は持てないけど、特に嫌がるそぶりはないし別にいやなわけではないと思う。……自信はないけどな。


―――撫でてるとふと左側から視線を感じる。


その視線は趙雲と呂布。その眼差しは興味心身というか羨ましいものを見るっていうか……


二人揃って上目遣いで見られると何か妙な感じが……


もしかして撫でてほしいのか、そう勝手に解釈した俺は両手を伸ばして二人の頭をなでる。ちなみに左肩は動かせないけど腕を上げるだけで手は頭に届くため、さほど痛みという心配はない。



「ん……主……」



「………」



少し恥ずかしがりながらも目を細めると趙雲と、無表情ながらも顔を赤らめる呂布。


正直触り心地は三人とも良い。むしろもっとやっても悪くないんだろうけど……このままやってると収拾つかなくなりそうだし、また後でってことでいいか。



「あうっ……」



「ふむ……」



「………」



手を離すとなんだか納得がいかない的な表情を見せる三人。……おいなんだその名残惜しそうな表情は。何かこっちが申し訳なくなるじゃないか。



「また後でな。……今はこっちが最優先だ」




目の前に倒壊している建物がある。その建物のがれきを右手でどけていく。生き埋め状態になっている人間がまだいるかもしれない。そんな事を思いながら一つ一つ、軽くはないがれきをどける。


その横で同じように張楊、趙雲、そして呂布も作業を始める。この戦いが意味のないものだともっと早くに気が付いていれば、黄巾党の残党による被害をここまで受けなかったかもしれない。


そんな考え方がこのような事態を引き起こしてしまったと考えると無性に腹が立つ。


呂布も殺したくて人を殺めていたわけではない。何がこんな事態を引き起こしてしまうのか、やるせない気持ちが否めない。



「……どうやら、逃げ遅れた人はいないみたいだな」



「えぇ。ただやはり……」



「あいつらは、無抵抗の人間にも容赦しなかった……」



「………」




奴らは結局無抵抗の人間にも容赦しなかった。


 俺達がいるすぐ横には布がかぶされた親子の亡骸がある。それは親が子を庇うように亡くなっていたというもの。

自分の命は惜しくない。だから子供の命だけは助けてくれと、そう訴えたのだろう。


でも奴らはそんなことは聞かなかった。自分の良くだけ満たされればそれでいい、他のことなど知らない、どうでもいい。


………どうしても納得がいかなかった。


何故無抵抗の人間が理不尽にも殺されなければいけないのかと。



「いつか根絶やしにしないとな」



「はい。やはり本隊を潰したとはいえ、少数ながら各地に残党は残っています。それが集結するとなると……」



「まだ何も解決したことにはなっていませんね……」




結局、潰しても散らばられたら全滅させることは難しい。本腰を入れるなら大陸各地の整備を徹底させて黄巾党というものを弾圧していくしかない。


今はそれが出来ない。乱世を生きていく上で争いというものは避けることが出来ないものなのだから。




「よし、次の場所に移動しよう」



「はっ!」



「御意!」



「……(コクリ)」




なおも復興作業は続く。





――――――…





「……こっちはあらかた片付いたぞ」



「御苦労。少し休んでもいいぞ」



復興活動が一段落つき、俺は孫策と周瑜の下へ戻る。こちらはまだ終わっていないものの、順調に復興活動を行っていた。


その様子をじっと見つめたままの孫策と周瑜。


孫策のその表情は険しい。



「……戦争の爪痕。いつも弱い人間にしわ寄せが行くのよね。やるせないなぁ……」



「……必然てやつだろうな。守れるものも無限じゃない。神でもない限り、すべてを防ぐなんて無理だ」



「母様が死んだあともこんな感じになってね。その時の私は、民たちを守る力がなかった。……それがいま重なって見えるんだよね……」



「だがこれは孫策のせいじゃない。火を放ったのは黄巾党の残党だ……」



「それは分かってるけど。……でもあまり心楽しいものじゃないわよ、こういう光景は……」



「雪蓮、弱音など聞きたくないぞ」



「冥琳……」



「文台様の意志を継ぎ、天下を目指すと言ったのはどこの誰だ?」



「私……」



「ならば弱音を吐くな。……雪蓮の優しさは分かっている。だがそれが覇業の妨げになる場合もある」



「うん。分かってる」



「ならもう言わないで。……良いわね?」



「……うん」



どうもこういう空気は苦手だ。互いの信頼関係が成り立っているからこういうことが起きるんだろうけど……俺には合わないな。





「まぁ、あれだな。今は出来ることをやる、それだけだろ」



「そうね。今出来ることを精一杯やって……後事を蓮華に託さないと……」



「……随分と不吉な事を言うんだな」



「あら。心配してくれるの?」



「ハァ……当たり前だろ。……怒るぞ」



「ふふっ、ごめん」



さらっととんでもない事を言ってくれる。不吉なことは勘弁してほしいものだ。例えそれが冗談だったとしても、言って欲しくないというものはある。


ケラケラ笑っている孫策がそうなるところなど、見たくはない。



「もう! 怒んないの飛鳥」



「しぇ、雪蓮様! 冥琳様! 大変です!」



「どうした? 何かあったのか?」



「そ、それが! 井戸がブワーッてなってて、それで龍がドーンッって舞い上がってて、凄いのなんのって感じです!」



「……何それ?」



重苦しい会話の中、そんな雰囲気を一掃するかのようにかけてきたのは周泰。


とりあえず、何かものすごいことが起こっていると伝えたいんだろうが、会話の半分以上が何を言っているのかよく分からん。孫策も何言っての?みたいな顔してるし。


慌てすぎだ、もう少し落ち着いてだな……



「少し落ち着こうか。とりあえず深呼吸して」



「ふぁぁー! ふぅぅ~」



「もう一回」



「ふぁぁー! ふぅぅ~……」



「どうだ、落ち着いたか?」



「はい! おちちゅきました!」



盛大に噛んでくれた。何だろうこの小動物、凄く愛でたい願望があるのは多分嘘じゃないと思う。



「じゃ、もう一回報告して」



「はいっ! ええと……説明することを忘れてしまいました!」 



お、おう……どうやら落ち着かせすぎたみたいだ。盛大に忘れてくれた。俺がこんな性格じゃなかったら多分盛大に突っ込んでいることだろう。やらないけど。



「おいおい……」



「と、とにかく何か凄いんです! こちらに来てください!」




何やら盛大にテンぱっている周泰に先導され、そのブワーってなっているであろう現場へと向かった。


とにかくついてって現場を見てから判断しよう。




「ほらあそこ! 井戸から凄い光が放たれているのです!」



「なんだこの光は……?」





井戸からあふれてくるのは眩しいまでの光、確かに言うとおりではある。


……いや、ちょっと待てよ。井戸の中の光……


三国志……孫呉……




……なるほど、そういうことか。ちょっと時代は違うけど、場所も間違いない。


てことは極めてその可能性が高い。




「多分凄いものがある。引き上げてみな」



「飛鳥は何が入っているか知ってるの?」



「まぁな。さっそくだけど周泰、入ってもらえるか?」



「ええっ!? あ、あの……大丈夫なのでしょうか……?」



「身体に害はないよ。何なら、俺が行ってももいいけど」



そりゃいきなり行けって言われたらテンぱるよなって話。俺が行ってもいいけど、出来れば知らない人が言ってほしいっていう気持ちがある。



「いえ! 飛鳥様の手を煩わせるわけには! ……では、行きます!」



何か特攻してきます! 的な言い方だな。戦場に赴く兵士みたいな。


そんな感じで覚悟を決めて命綱を巻きながら井戸の中へと下って行く。そしてすぐに巾着袋のようなものを持って上がってきた。


……どうやら、俺の勘は当たっているみたいだな。



「井戸にこんなものがありました!」



「何これ? うっすら光を放っているみたいだけど」



「開けてみな」



「ん。よっと……。小さな……印鑑? 違う、これ……玉爾!?」



「何!?」



「ほら、これ……」



驚く周瑜に玉爾を見せる。


――――玉爾……始皇帝が作らせたと言われる皇帝である証ともいえるもの。



「どうしてこんな井戸の中に?」



「大方、反董卓連合の侵攻に乗じて持ち出したが、黄巾党達の乱入により逃げ切れないと悟り、ここに隠したか捨てた……そんなところだろう」



「天佑ね、これは……」



「ああ、この天佑、存分に利用させてもらおう。……明命!」



「はいっ!」



「幾人かの兵を洛陽の民に偽装させ、さりげなく情報を流せ。……孫策が天より玉爾を授かったとな」



「了解です!」



「この噂が広まれば、雪蓮の下に人や物が集まってくるだろう。……雪蓮、ここからは徳ある王として、演技してもらうわよ」



「うえぇ……めんどくさいなぁ、もう……」



「これは遊びじゃないぞ雪蓮。……これも孫呉のためだ」



「分かっているわよ。ただ……ちょっと本音を出してみただけ」



「……頼むわよ?」



「了解」





こうして玉爾を手に入れた俺達は、洛陽の復興支援に本腰を入れていく。


玉爾を手に入れた俺達の下には今まで以上に多くの人と物が集まってくることだろう。




――――表面上は意味のない戦いだったのかもしれない。


董卓たちの行方も分からないままだ。でも必ずどこかで生きていることだろう。もしかしたら会う時は近いのかもしれない。


『孫呉の復興』それだけを考えたら。


今回の戦いは内部事情的には大きな成果となったのだろう。


俺は反董卓連合という一連の出来事を経て多くのものを得て、多くのものを失った。


これからどうなるのかなんて予想できない。




――――ただ何があっても手が届く範囲のものは守ってみせる。


俺は再び、そう自分に誓った。

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