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一泡吹かせる




汜水関での勝利を収めた俺達は、呉の全メンバーと合流していた。


ちなみにそこで新しく時雨隊に入隊した趙雲の紹介をしたんだけど、割と皆フレンドリーなことで快く受け入れてくれた。


後は華雄の事について。


一応保護という形でとらえたがこの後どうするのかは決まっていない。孫呉で引き取るのか劉備達が引き取るのか、それとも自由に過ごせば良いと解放するのか。


どんなケースでも処断するという選択はないみたいだ。





「お疲れ様、飛鳥」



「ん、あぁ」



「聞いたわよ。華雄相手に一対一でやりあったのね」



「そうだな」



「あ~あ。私も戦いたかったなぁ~」



「そういうな。別に俺は戦いたいから戦ったわけでもないしな」






戦いたくて戦ったわけじゃないのは事実だ。そもそも俺自身は戦闘狂ではない。あくまで一般的な戦闘思考だ。


でも一応本物の武将と戦ってみて得たことは多い。そこら辺にいるような雑兵とは比べ物にならないくらいに強いということ。後は些細なことが勝敗を分けるということか。


命をかけた本気のぶつかり合いというのを直に感じることが出来たと思う。




「孫策さーん!」




バタバタと息を切らしながら走ってくる姿が一つ。


嬉しそうな顔を浮かべながら劉備が走ってきた。直視していると走るごとに揺れる二つの双丘が目に入ってしまうため、若干目線を逸らす。




「孫策さん、ご協力ありがとうございました!」



「いえいえ、……どう? これで私の事信じてくれたかしら?」



「はいっ♪」



「ちょ、桃香様! そのように素直に信じてしまってよろしいのですかっ!?」



「あ、愛紗も落ち着いて!」



「あら。ひどい言い方するのね、関羽は。……私を信用できないっていうのかしら?」



「……信用する、しないの問題では無いでしょう。英雄に真の友人などいません。……いるのは利用しようとする輩のみ」





……それはちょっと違うんじゃないか?


少なくとも俺が知っている限りでは違う、孫策と周瑜の関係を見ていれば自然とそう思う。


この二人の関係を見ていても、周瑜が孫策を利用しようとしているなんて素振りはない。




「……その考え方は違うんじゃないか? 関羽」



「何っ!」



「……お前が劉備に仕えているのは利用するためなのか?」



「なっ、そんなことはない!」



「ならそういうことだ。全ての人間が同じ事を考えているわけじゃない」



「………」




押し黙る関羽、その視線はやはり厳しい。


……俺別に悪いこと言ってないよな? 人を信じすぎるのもあれだけど、先入観だけで人を判断するのはどうなのかって言っただけであって……


って何か関羽だけじゃなくて全員俺の方見てないか?



「ふふ♪ 飛鳥も言うようになったわね?」



「まぁ……そうかもな」



「なんにせよ、共通の敵がいる以上手を握ることは可能でしょ?」



「共通の敵、ですか?」



「そう、私達が勢力を伸ばしていく上で、一番の強敵となる者」



「人を揃え、資金を揃え、天の時を待っている北方の巨人の事だ」




呉と蜀の最大の敵となりうる存在。近い将来北方の領土を支配し魏を建国する絶対的王者、曹操のことを言っている。


史実は曹操は天下統一をする前に亡くなってしまう。でもここは史実であって史実じゃない別世界、この先どんな展開になるのかなんて誰も分からない。



「えーっと……袁紹さん?」



「はい?」



我ながら情けないと思いつつも、思わずそんな声が漏れてしまう。


……いや、まぁあれだよな。確かに袁家は名門だし資金も兵力も充実している。当主があれじゃなければの話だけど。



「わお! 可愛らしいボケだこと」



「えっ、違うんですか!?」



どうやら本気で気が付いてないらしい。かなり天然なんだなこの子。



「と、桃香! 北方の巨人は曹操だぞ!」



「ええっ!? 曹操さんなの!?」



盛大にボケをかましてくれているわけで。頭自体が悪いわけではないと思うんだけどなこの子。頭悪かったら義勇軍からここまでのし上がれないだろうし。


少し言い方が悪かったかもしれない。そう思いたい。


いずれにせよ近い将来、必ず曹操は動き出すだろう。


冗談は抜きにしても味方は多い方がいい。





「……いずれにしても曹操は間違いなく俺達の前に立ちふさがってくる。その時に急に慌てるよりも今のうちに手を取り合っておいた方がいいんじゃないかっていうのが、俺達の総意。で、いいか?」



「ええ」



「ああ」



「うーん……どう思う? みんな」



「その通りかと思われます」



「俺も賛成かな」



「鈴々も賛成なのだー♪」



「……なら私に否はないよ。孫策さん。これからもよろしくお願いします!」



「うん、こちらこそよろしくね」




微笑みながら二人はがっちりと握手を交わす。


次はいよいよ虎牢関の戦い。汜水関を完全に制圧した連合軍は虎牢関へと出発することになる。







――――…








「一段階は終えたってところだな」



「ええ、今のところは順調に来てるわね」



汜水関を制圧後、すぐに虎牢関に向けて出発した。


しかし今回は少しばかり勝手が違い、俺達は連合軍の後曲に回され、先鋒を袁紹と曹操が取ることになったということ。


初戦の汜水関では劉備軍と孫策軍は大活躍をだったために焦りを感じているのだろうか。正直やろうとしていることが見え見えすぎて突っ込む気にもなれない。


とはいえ、後曲に回されたことによりさっきよりも負担が減ったのは確かだ。


それともう一つ。華雄は劉備のところで引き取ることが決まった。


どうやらあの後劉備から色々と言われたようで、色々と感銘を受けたそうな。


人柄の良い劉備のことだ、あの華雄のことも上手く配下に加えられることだろう。



「虎牢関か……」



「虎牢関にはあの天下の飛将軍、呂布がいるわ」



「今まで以上に厳しそうだな」




孫策を戦の天才とするならば呂布は天下無双の武を持つ者。呂布一人の力というものは膨大で、たった一人で戦況を覆せることが出来るほど。


まともに勝負してしまったらまず勝ち目はない。





「そういえば今袁術ってなにしてるんだ?」



「後ろから手を引いているんだろう」



「袁術ちゃんには大した損害なし、か。面白くないわね。……ね、何かいい考えある?」





言われてみればこの連合軍で袁術の名を聞かない。


聞かないってことは何もしていない、何も行動していないってこと。つまりは袁術の軍はまるっきりの無傷の状態にあるということだ。


孫策と周瑜の言葉を聞くに、この展開は全く面白くない。袁術はお山の大将ってことだから。


さらに言うなら無傷っていうのも問題がある。孫呉が独立する上で敵となるのは袁術だ。その袁術が全くの無傷っていうのは後々大きな障害になる可能性もある。


孫策が求めているのは、この戦いで袁術の部隊が消耗することだろう。


ましてや袁術は因縁の相手、無傷でかえそうなんて孫呉の誰も思ってはいない。





「無理やりにでも引っ張り出さないといけないってことはだ……多少泥臭くても、袁術軍を先鋒にする必要があるだろうな」




――――無理やりにでも引っ張り出さないといけないということはだ。




「つまり博打を打て……敗走するフリでもして強引に袁術を先鋒にまで押しだす必要があるってことか……」



「作戦っていうか無謀に近いですねぇ~。でも他に作戦も思いつきませんし……」



「じゃ、そうしましょ。少しでもあの子に損害を与えられるならそれしかないわ」




「………」



「どうしたの飛鳥?」



「いや、自分ながら苦肉の策だなって思ってな」




敵に背を向けて敗走するというのはそれなりのリスクが伴うもの。失敗した時の代償が大きいというのが第一の懸念点だった。


しかも成功する確率はそんなに高くない。戦場に絶対なんて言葉はない、そうだったとしても賭けという部分が大きいのが現状だ。





「だが時雨よ、お前の作戦が唯一成功する可能性のある作戦だ。やってみるしかないだろうな」



「そうだな」



「今回飛鳥はどうするの? さっき華雄と戦ったばかりだし後ろに下がってる?」



「いや、前に出るよ。俺が発案した作戦なんだし、発案者としての責任を取らないとな」



「その思考は見事だが、あまり無理はするなよ時雨。お前は変えが効かない存在なのだからな」



「へぇ。周瑜も心配してくれるのか」



「……当たり前だ」




照れながらも俺の事を心配してくれることが素直にうれしい。


特別体に異変があるわけではないし、異変がない以上俺だけが後ろに下がって観戦なんて出来るわけがない。


それに今回の作戦は天敵である袁術に一泡吹かせるための作戦、打撃を与えるにはうってつけの場所だ。呂布とまともにやり合うことになれば袁術の軍もただでは済まない。


……俺自身こっちに来てから日が浅いために何とも言えないけど、孫策達は相当なストレスがたまっているようだし。


なるようになるだけだ。



「方針も決まったわけだし、行くとしましょうか!」




そして次の戦いに向けて俺達は動き出す。

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