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冀州へ




―――荊州に攻め込んできた黄巾党は孫策たちの活躍によって撃退されたわけだが……



それはほんの序章、中国全土にわたってその反乱は拡大していった。



一つの反乱が無駄な争いを呼び、それはまた別の反乱をおこす。悪循環がなしたそれは、罪もない無実な人々の命を次々と奪っていく。


事態を重く見た漢王朝は軍を形成し、黄巾党と対決することとなったのだが……


圧倒的な多さ、そして漢王朝が衰退していたことによる軍の弱体化により、黄巾党は各地で勝利を挙げ、各々の規模を大きく膨らませていった。



しかしそんな中、各地で諸侯たちが大きな権力を持ち、活躍をし始める。


許昌に本拠点を置く曹操をはじめ、河北を抑える袁紹、幽州の公孫賛、義勇軍を結成した劉備が頭角を現し始める。



諸侯たちの活躍により、黄巾党は徐々に衰退していく。




史実どうりに行くなら、この後漢王朝は滅亡し、三国時代になる。


これを見る限り、元の歴史から外れているといったことはないようだ。



そしてもう一つ、劉備軍に天の御遣いが降り立ったとの情報が入ってきた。



……これに関しては俺にもよく分からない。そもそもそれがどういう人物なのか、俺と同じように現代から来たのか、それとも……



ただ、現れた状況に関しては、俺と非常によく似ていたとのこと。



そしてこの世のものとは思えない素材の服を着ていた、と考えると少なからず現世近いところから来たのではないか、とも考えられる。






















――――そんなある日、袁術の使者が孫策を訪ねてきた。


その内容は黄巾党本隊と決戦し、撃破せよとのこと……





無茶苦茶だな……粗方、孫策をうまく利用しようとしているつもりなんだろうが、あれで隠しているのか。


袁術の無能さが分かる。



ならばその無能さを、俺達が利用してやろう。


呉の独立に向けて、袁術にはその踏み台となってもらう。















出陣に向けての準備が整う。俺達が目指すは冀州。


そこでバラバラになってしまった旧臣達と合流する。


孫策の妹の孫権、甘寧、周泰と名だたる者たちと合流するとのこと。



ただ初戦に限っては俺達だけで戦うとのこと、孫権が人員を集めてから合流するため、少し遅れるとのことだ。



……いよいよ俺が部隊を率いる時が来ると考えると、どうも落ち着かない。


緊張しているとかではなく、ただ単に慣れていないだけだ。








――――そんなことを考えつつ、俺は支給された弁当を食べる。


随分と味気が薄い。正直な話うまいものでは無い。


実際保存料なんかもほとんどないし、塩も高級品だ。そう考えるとこれが限界かもしれない。




……そういえば、塩の作り方って何種類かあったよな。




――――なんて考えていると







「あーすか。ご飯はどう? 美味しい?」






俺の背中にべったりとくっつきながら、孫策が俺に声をかけてきた。


この感触は悪くはないけど、やっぱり恥ずかしいな。





「言い表しがたいな」




「ん? どういうこと?」




「少し薄いかなって思った。元々濃いものが多かったし、慣れてないだけだとは思う」




「へーそうなの? 結構塩を使ってるんだけどなぁ」




「それで、何か話があるんだろ?」




「分かる?」




「何となくな」





人付き合いがいい孫策だけど、顔に出てる。俺に話すことがあると。


多分悪い話ではない。



あらかた部隊を率いる話か、孫権達が合流するから頑張れとかそんな話じゃないかと思うんだが……。








「飛鳥を拾った時に約束したでしょ? 呉の武将を口説けって。もう少ししたら私の妹が合流するんだけどさ」




「ん、あぁ。孫権のことか」




「……あれ? 言ったっけ?」




「いや、俺が元々知ってたっていうか」




「ふーん。それでさ妹の事なんだけどね。ちょっと真面目でカタブツだけど、とても良い娘よ。可愛いし、おっぱいも大きいし、お尻の形も最高だし」




「……はぁ」





「で、私の後継者だから、貴方はどうにかしてでも、孫権を孕ますこと、約束よ?」






いきなりぶっ飛んだことを言ってきた。


まだ合ったこともない女の子を孕ませろなんて、どこの変質者か。


いくら妹とはいえ、孫策のお眼鏡にかなった人物、悪い人物ではないとは思うけど……


言うのが身体的特徴とはな……








―――――ちょっとからかってみたくなったな











「孫策じゃ駄目なのか?」





「え、私?」





「あぁ、別に孫呉に俺の血を入れるっていうなら、孫策が俺の子を産んでくれてもいいだろ?」





「―――ッ! も、もう! 何言ってるのよ急に」












 まさか俺の口からこんな言葉が出てくるとは思ってなかったに違いない。


いつもの余裕の表情はどこへやら、頬を赤くして、俺から視線をはずして手をもじもじとさせている。



俺のことで何か想像した顔だな、これは。



時折チラチラと俺の顔を見るが、俺がジッと孫策の顔を眺めているため、孫策は俺の顔を直視しようとはしない。







――――何かこれはこれで悪くない









良い感じに孫策をからかった後、俺はその場で食べ終わった弁当を持ち、立ち上がる。






「ま、そういうことだ」







ポンと孫策の肩に手を置き、俺はその場を去ろうとする。










「もう、バカ!」











顔を赤くして、照れながらも、孫策は俺の隣に来た。



拗ねながらも、俺の隣に来てくれるあたり、信頼してくれてるってことでいいのかもしれない。




















――――そして昼食は終わり、いよいよ出陣の時を迎える。

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