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飛鳥の休日2





「おい、どこいくんだ?」




「特に決めてないわよ~?」




「そうかい……」





館の外へ繰り出したものの、どこへ行くのか全く決めてなかったらしく、俺たちはただぶらぶらと歩く。


偶にはこういうのも良いだろうけど、出ていくたびに目的がないのなら笑えない。



――――ふと左腕に人肌のぬくもりを感じる。目線を右下に下げると、笑顔の孫策が俺の腕に抱きついていた。






「何をしてる?」




「ふふ♪」











照れを隠しながら、俺は孫策に尋ねる。それを笑顔で誤魔化された。




―――ッ!




否が応でも孫策を意識してしまう。俺でもはっきりと分かる、顔の表面の温度が徐々にではあるが確実に熱くなっていることを。


多分孫策のことだ、今の俺を見ながらニヤニヤしてることだろう。



 少なくともこっちの世界に来てから今日まで、俺の中で孫策の存在が大きくなっているのは確か、平常心を装っていてもここまで接近されたら恥ずかしくなってしまう。






「あら? 飛鳥赤くなってる?」





「う、うるさい」





「照れなくてもいいわよ、男の子っぽくていいじゃない♪」





「くっ……」








―――何も言い返せない。


俺……こんな性格だったっけか?


孫策といるといつもペースを握られてしまう。これはちょっと勝てそうにない。






「ね、いつになったら呼んでくれるの?」





「……何をだ?」





「決まってるじゃない。私の真名を、雪蓮って」





「またその話か……だから俺はまだお前たちに何一つ恩を返せてないんだよ。お前たちが良くても、俺自身が許せなくなっちまう」





「ぶー、ホントにその頑固なところは冥琳以上ね」








すぐにでも孫策の真名を呼んでやりたい……




俺自身の何が邪魔しているのか分からない。




孫策は俺を拾ってくれた……この世界に降り立って、行き場のない俺を……



だから俺は、俺が本気で命をかけて孫策を守るまで真名を呼ぶのはやめよう、そう決めた。



これは俺のただの我儘だ。この態度を失礼と呼ばれても仕方がない。斬り飛ばされても文句は言えない。




でも今はまだ……呼べない。




俺が殺し屋をやっていたことを言わないように、それ以上にこの件については言えない。





「ごめん孫策……」





「仕方ないわね。いつまででも待ってあげるから、貴方が納得してくれた時に呼んでくれたら良いわ。ずっと私達のそばにいてくれるんでしょ?」





「あぁ……絶対だ。約束する」






どんなことがあっても、孫家以外につく気は無い。


これだけは絶対だ。








「そ、ならいいわ♪」





そういうと俺に再び、笑顔を向けてくれる。


少し、心が痛む。




































―――それからどれくらい歩いただろうか。町から外れ、俺と孫策は水辺に行きついた。



緑が生い茂り、透明度の高い水が流れている。


驚いた、近くにこんな場所があったんだな。





「ふふ、ちょっとそこに腰かけましょ♪」




「そうだな」





ちょうど二人分座れる石に、隣合わせになって座る。


風が吹いてサラサラと孫策の髪が揺れる。





「最初から思ってたんだけど、飛鳥の首飾りって天の世界にいた時からつけてるの?」




「ん? ああ、これか。そうだな、物心ついた時からずーっとしてるよこれは」







 首からかけているネックレスを外し、孫策に見せる。


このネックレスは俺の初めての誕生日の時に両親から送られたものだ。


今は絶縁したが、このネックレスが俺と俺の下両親との関係をつなげる唯一のものとなっている。



例えどんな過去があろうとも、俺がここにこうしていられるのは、産んでくれた両親のおかげ。


だからこうして、つけている。





それを手渡された孫策は、ネックレスを手渡されると興味深げに観察し始める。




……あぁ、そういやこれもこっちじゃ無い様な作りだっけか。それに値段も破格だったし。


聞かされた時は幼かったからよく分からなかったけど、今考えてみると凄いものだよな、このネックレスって。





「色々詰まっているのね、この首飾り」




「分かるのか?」




「えぇ、この首飾りから伝わってくるもの♪」






返された首飾りを受け取り、俺は孫策に向かって微笑んでみる。


はたしてそれが微笑みになっていたのか分からないが、孫策は顔を少し赤らめる。





「も、もう! 急に微笑まないの! びっくりしたじゃない!」




「あー悪い……やっぱひきつってたか俺の顔?」





「そ、そういうのじゃないけど……その、初めて見る……から……」




「??」













……よく分からない。


俺はその場に立ちあがり、足場にある平べったい石を拾って、それを勢いよく水面めがけて投げる。


パシャンパシャンと、独特のリズムを刻みながら水を切っていく。十数回水面を跳ねたのち、水に沈む。




水切りはゲームが普及した今でこそ古典的な遊びとなっているが、昔はなかなかに流行っていたらしい。今でもやってる子はいるから、結構メジャーな遊びなんだろう。



再び石を手に持ち、それを振りかぶろうとすると……


























「すごーい! ね、どうやったの!?」







 さっきまで顔を赤くしてぼーっとしていた孫策だが、俺が水切りをしたのを見ると、嬉々とした表情で俺のもとへ歩み寄ってくる。






「水切りって言ってな、平べったい石を投げてどっちが回数多く切ることが出来るか競う遊びさ」





「面白そう! 私にも教えて教えて!」





「はいはい、まずは持ち方は―――」















持ち方レクチャーし、俺と孫策はその後しばらく、水きりに没頭することとなる。












――――二人で外で遊ぶのもたまにはありかなと思いつつ、一日が終わった。

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