飛鳥の休日1
――――…
「暇だな……」
自室にこもりながら、外を眺める。
今日は珍しく、俺は仕事がない。働かせすぎるのもあれだと考えたのか、今日は特に何もしなくていいと周瑜に言われた。
とはいうものの、いきなり何もしなくてもいいと言われてもこっちも何もするわけではないわけで……
何かすることが見つかるわけではなく、俺はただ外を見ているだけ。
景色を見るのは嫌いではないが、正直飽きる。
「……外で時間を潰すか」
―――…
「これは御遣い様。今日はお一人で?」
「あぁ、お前らか。どうだ? 訓練の調子は?」
館の庭では、俺の任された部隊が訓練を行っていた。孫策を館に連れ戻した後、そのまま俺と周瑜で部隊の編成を決めた。
……当然、何回か脱走を図ろうとする孫策を、周瑜が監視をしながらだったのは言うまでもない。
そんな感じで、俺もちょくちょく自ら訓練に参加したり、指導を行ったりはしている。
「は、順調です。御遣い様のお陰で武官たちの士気も高く、訓練の効率は非常にいいと思います」
「そうか、それは何よりだ……後はこまめに休憩を挟むようにな。一番大切なのは自分の体だ。壊しては元も子もない」
「もったいなきお言葉! 御遣い様も今日はゆっくりと休んでください!」
「あぁ、そうさせてもらうよ」
部隊と別れ、俺は庭を抜けて館の外へと出る。
さて、どこへ行こうか。
―――刹那、どこへ行こうか考えている俺の肩が叩かれる。
俺はそれにつられて振り向く。
ムニッ
振りむいた俺の頬に、人差し指が当てられる。
どこぞの小中学生がよくやるあれだ。たまにひどいと痛い思いをすることもあったりする訳だが……
別に痛いわけでは無いのだが、ムニムニと何度もつつかれると、流石に馬鹿にされている気分になる。
俺はその行動をしている人物の名前を呼ぶ。
「孫策……何してる?」
「ふふ♪ どこいくの飛鳥?」
そこにいたのは案の定、孫策だった。
いつもの笑顔を崩さないまま、ニコニコと俺に語りかけてくる。
……ちょっと待て、まさかまた仕事をすっぽかしてきたわけじゃないだろうな?
「失礼ねー。今日はしっかりと終わらせてきたわよ?」
「人の心を読むな」
「あら、そんなこと考えていたの?」
「………」
自分で墓穴を掘ってしまったことに軽く後悔する。
孫策の勘の的中率は異常だ。戦闘勘は優れているというのは知っていたものの、戦闘勘以外にまですぐれてしまったら、こちらとしては考えていることが丸分かりの状態になってしまうわけだ。
……あくまで勘だから、そんなに何回も当たられたら困るわけだけど。
「今日一日休みをもらってな。少し散歩にでも出かけようと思ってたところだ」
「なら丁度良かったわ♪ 私に付き合いなさい♪」
「……待て、今俺の話を聞いてなかったか?」
「聞いてたから言ってるんじゃない♪」
確信犯だ……絶対確信犯だ。
孫策に付き合ってしまったら、俺の休みは完全になくなってしまうのは必須。
というか、休みの意味がなくなる気がする。
「大丈夫よ、私が満足させてあげるから♪」
「……はぁ、分かった。分かりました理解しました。付き合いますよ孫策様」
「ふふ♪ よろしい」
――――こうして俺は孫策に付き合わされることとなった。
……さようなら、俺の休み




