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第21話:撤収、その道程とその後。

【21】


 翌朝、日が昇り切る前に「社の里」からこちらに向かっていた戦士たちの一隊が到着した。総勢十五名の彼らは荷物を担き一昼夜をぶっ通しで行軍してきたのだった。彼らは到着するや否や、古風で素朴な傷薬等を使い怪我人に手当てを施し始めた。そして敵の再襲撃を警戒し、猿を操っていた陣羽織の男を拘束し、巨大猿を見分し、死んだ者たちの埋葬を行い、鍛冶の里の者たちに残った財産や道具などの荷物をまとめさせた。それらの指示と実際の手配の全て行ってくれた。俺もそれを手伝おうとしたが、情けないことに一昨日からの無理がたたったのか、まだろくに立ち上がることも出来ないありさまだった。


 戦士たちは若衆組次席のヴァーリが取り仕切っていた。ヴァーリとは「戦士の館」で何度も話した仲だったので、俺は知り得た情報をすぐに伝達することができた。彼はバルドルとは同年代たが、バルドルとは対照的に物腰が柔らかな男で、バルドルが豪快なカリスマなら、ヴァーリは実質的な世話役という立場に立っている男だった。実務の裏方苦労人という立ち位置だろうか。俺から見て、バルドルとヴァーリはお互いの長所と短所を補いながら若衆を運営しているように感じた。

 立ち上がるのに苦労していた俺にヴァーリは言った。


「大丈夫です、我らで全てやりますから、継手殿は1日休んでいてください。ただ明朝には社へ向かおうと思います、我らが『漂泊者』殿にも荷物を背負っていただきたいのですが、お願いできますか?」


 現在の俺の体調では、どう考えたとしても彼の心遣いを受ける以外に役に立つ部分を見つけられそうに無かった。そしてヒトガタの背中に荷物を括り付けるために、背負子しょいこのような木々の組み合わせを作れれば、結構な生活用品を積載できるだろうこと、その固定方法についていくつかの助言をした。そのうえで提案をした。


「もし歩くことが困難な者がいたら彼らも運ぶことができると思う。板を敷いた横に寝かせる寝台のようなものを用意してくれれば、二~三名程度を胸元に抱えることが可能だ。揺れがそれなりにあるし、高さがあるので怖がる者もいるかもしれないが、足の悪い者や重傷の者を連れて戻る際の助けにならないか?」

「分かりました、手配します」 


 ヴァーリは爽やかな笑顔を浮かべた後、同行していた戦士や、協力を申し出てくれた「鍛冶の里」の若者たちに指示を飛ばした。手際が鮮やかだ。どこかで見たようだと記憶を探ると、高校時代での文化祭で辣腕を振るっていたクラスメートを思い出した。運動部に所属していて声が良くとおり、指示が的確で準備にリーダシップを発揮していた彼は、彼はなんという名だったか。


☆☆☆☆☆


 荷物をまとめる作業はやや難航したようだった。当然だろう、生まれ故郷を捨てるように去ることになる。幾人かはそれに対し反対もしはしたが、この被害と状況では他に選択肢はなかった。戦火が収まっているならばともかく、放っておけば近いうちにまた襲撃を受けるだろう。現に「鍛冶の里」の戦士たちは全滅しており、ゲヴンもその戦いで命を落としていることを昨夜のうちに聞いていた。遺体は見つからなかった。


 戦士たちは里の手前で柵を作り攻め手を防ごうとしたらしい。しかし里の戦士の数は十名程度で、有志の若者たちを集めても五十名ほどの集団でしかなかった。そこにあの巨大猿を従えた軍勢が攻めかかったのだ。あっという間に柵はなぎ倒され、戦士と、戦士見習いと、勇敢な若者たちは命を落とした。


 拘束した陣羽織の男は、やはり予測したとおり今回の軍勢、遠征先遣隊の隊長であったようだ。

 エッダと名乗ったこの男は「こく」という名で呼ばれているクニに所属し、今回は総勢四百名の兵を要し、猿人えんじんと呼んだ巨大猿4匹を秘術によって従え、行く先々の里を襲い続けていたのだそうだ。鍛冶の里に来る前は隣接する「合わさる川の里」「谷の狩人里」などで呼ばれる百~二百戸ほどの集落群を次々と攻め落とし、収奪を終え、捕虜を本国へ送ったのち、この周辺において頼りとされていた「鍛冶の里」に矛先を向けたのだった。


 俺は思うようにならぬ身体を廃材で支えケヴンの家に向かった。焼けて倒壊した母屋と作業場が目に入る。俺は母屋で一度黙祷をした後、作業場に足を向け、焼け残った金床を探し当てた。俺はそこに皮鞘から抜いた「剣鉈の剣」を置いた。


 ケヴン、あれから俺はこの剣をいくつかの作業に使ったんだ。運ぶ木材の枝を切り落としたり、くいの先を尖らせる加工作業に使った程度だが、重さも切れ味も耐久性も申し分なく、驚くほど頼りになったよ。何しろどのように扱ってもその期待を裏切らないんだ。ケヴン、あなたにこのことを伝え、数多くの同等品を作ってもらいたかった。里の若衆たちに持たせてやりたかった。きっと建築や開墾、農作業の効率があがり、生活が豊かになることに繋がったろう。

 俺はこれを里の成人儀式で渡す品として提案したかった。自身の尊敬する父や兄が持っているモノ、労働に汗する大人たちが所有しているモノを、少年が大人になる時に受領する。そして生涯にわたって研いで大事に使い続けるんだ。ちょっとすてきな提案だと思わないか? どうだろうケヴン、この提案を貴方は喜んでくれただだろうか、協力してくれただろうか。


 焼けた作業場の真ん中で、焦げた木々の香りに浸されながら、俺は心に映るケヴンに語りかけ続けた。


 ケヴン、俺は誓うよ。もう2度と里を戦火にはさらさない、貴方が守ろうとした里の住人たちを殺させはしない。いまはここを一時去らねばならないけれど、果国の攻め手を排し、果国を打ち破ったら、里の皆をここに戻して見せる。どうかそれまで待っていてくれるかい?


 剣鉈は鈍く太陽の光を照り返すだけだった。


☆☆☆☆☆


 社の里へと向かう道のりは重いものとなった。生まれ故郷を去る際、多くの者のすすり泣く声を聴いた、年老いた者ほど歩みは遅く、疲れ果て、絶望しているように見えた。故郷を見下ろす峠にたどりつくと、彼らはそこから動こうとしなくなった。悲嘆にくれたうめき声が聞こえてきた。

 俺は言った。


「いまは皆をこの地に戻すことは適わない、が、約束する。やつらの勢力をこの地から追い払い、きっと戻って来られるようにしてみせる。だから今は耐えてくれ、同胞にして家族である社の里に向かってくれ、そこでは皆が無事にたどり着くことを心待ちにしている仲間がいる、さあ急ぎ先に進むのだ」


 根拠もなく、手段もなく、無責任な発言であることは充分に承知はしていた。しかし俺の役割とは「明確に感じ取れる明日」を語ることのように思えた。そのためならどのような泥も血も罵声も浴びようと決めた。

 うなだれたまま、僅かな希望に縋るように彼らは歩み始めた。彼らの丸めた背中を、俺は一生忘れることはできないだろう。


 それから一泊二日の行程だった。歩みの遅くなる高齢者と幼い子供を交代でヒトガタに乗せ、斜度のきつい荒れ道などでは分乗させて進んだ。要所要所ではヒトガタの腕力で「鍛冶の里」への通り道を塞ぎもした。もし果国の遠征先遣隊に再結集する余力が残っていたとしても、大きく塞いだ道があれば苦労をするだろうし、後続となる大規模軍勢の移動時には大きな障害となるだろう。

 理想的なのは「社の里」の反撃だと気が付かれていないのが一番いい。奴らを壊滅させるとき、俺は不用意な発言をしはしなかったはずだ、先遣隊の生き残りがいたとしても「ヨトゥン」なるものと勘違いしてくれたなら、より一層、時間が稼げるはずだ。

 過度の期待は禁物ではあるが、とにかく今は時間が欲しかった。彼らをゆっくり休ませ、社の里で準備を整える時間が欲しい。俺は焦りを感じながらも、この封鎖作業が役に立つことを信じ、岩や木々を積み重ねた。


 移動中と移動直後で合計3名の老人が亡くなった。朝になると息をしていなかった者や、高齢ゆえに僅かな発熱の後に急激な体調変化をおこした者たちだった。俺に粥を持ってきてくれた、あの足を患っていた老人も亡くなった。老人は過酷な状況とその移動中にも関わらず穏やかな顔をしていた。俺は老人の遺体をそのまま社まで運ぶことにした。

 捕虜のエッダも死亡した。敵国についていくつか情報を聞き出してはいたが、社にてより詳しい情報を求めるために搬送を準備していたが、出発の朝に毒を飲んだようだった。隈取の顔が苦悶の表情のように見えた。


 そのようにして「鍛冶の里」から社に戻ると、既に要所の「見張り台」仮設は終了しており狼煙のろし要員の配置も済んでいた。また「海岸の里」、そこに住む者たちは「海社うみやしろの里」と呼んでいたが、彼らの代表者との合議も終了しており、協力して警戒体制を取ることが決まったのだと婆さんから報告を受けた。


 直後において、イズナは怪我人の受け入れで忙しく立ち回り、イトゥンは戦士の館に隣接する「集会所」に身を寄せることとなった避難者の収容手配に動き回ってくれた。なにしろ100名を超える者の共同生活場を一度に組み上げるのだ、混乱や要求が数多く発生する、それを根気よく調整し、解消してゆく者が必要だ。実務のヴァーリと社のカリスマであるイトゥンがそれに携わった。そして俺とバルドルは新たな準備を模索し始めた。


 果国に潜入するべきだ。


☆☆☆☆☆


 今回の失敗は「敵のことを知らなかった」ことから起きた。そして地理・地形・勢力図についても情報が不足していた。急ぎ周辺の地理と勢力図に関する「地図」作りが必要だ。


 俺とバルドルは、猟師、漁師、交易担当など、里から出たことのある村人を呼び集め、周辺情報について出来うる限り詳しい地図を作成した。縮尺はいい加減であり「大雑把な配置の概念図」のような地図ではあるが、それを作り上げ、里の要職者同士の共通認識として明確にした。対策を練るためにはどうしても必要なものだ。俺のかつての荷物にあったノートと筆記具が作業効率を高めてくれた。そしてこの世界にも紙があったのは幸いした、質の悪い「ざら紙」のようなものではあるが複製を作れる。染料と竹筆で描いた大地図を皆で囲み対策を考えた。


 集まった者は、社から「大巫女ユーミル婆さん」「巫女イズナ」「姫巫女イトゥン」、戦士の館から「戦士長バルドル」「次席ヴァーリ」「補佐ヴィーダル」、社の里から「里の男長おとこおさエイル」「里の女長おんなおさロヴン」、海社の里から「里長さとおさヴァール」「海社の巫女フレイ」だ。


 ヴィーダルは壮年の男性で四十歳をいくらか超えたあたり。かつて戦士だったが膝を悪くして現役を引退した者だと聞いている。しかし若手の指導や補佐役、お目付け役としていまでも戦士の館運営に携わっている。バルドルにしてみれば唯一の大先輩といったところか。


 社の里長には男性と女性で一人ずついる。それぞれの立場から物申す人物という訳だ。エイルもロヴンも丸々といった印象の顔と姿の老人で、笑顔がよく似合っていた。なんだか夫婦か兄妹のようだと思ったら、従姉弟だという。


 海社の里の里長は一人で現役漁師のヴァールだった。男盛りの三十半ばあたり、赤黒く磯焼けした肌、はちきれんばかりの腕の筋肉をもつ海の男で、身長が俺とそう変わらないのに驚いた。にかっと笑う顔が豪快でなかなかに怖い。初めて挨拶をしたときは大きな掌でばんばんと俺の背中を叩き「そうかそうかお前さんが今代の継手殿か、いやぁいい体だ。で、漁師にならんか? 儂には貰い手を探している娘があと3人残っている、どれでもいいぞ、ん? 全部か?」と言われて唖然とした。なぜかイトゥンにぺしぺしと叩かれていた、仲いいな。「姫巫女殿はいつまでたってもちびっこいのぅ」とも発言してげしげしと蹴られてもいた、本当に仲がいいな。


 海社の里では別社べつやしろがあり、そこの巫女がフレイだった。別社の伝統においては「海社の里」の娘が選ばれて巫女となり、別宮社を祀る祭事を司るらしい。「十九歳になった」と自己紹介をした彼女は海女でもあり、ヴァール同様に背が高くよく日焼けをした身体をしていた。身長はバルドルとほぼ同じか少し高いぐらいだろうか、つまり百六十センチはある、この周辺ではかなり珍しい。日焼けはヴァールのような圧倒的な赤黒さではなく、年頃の娘特有の肌張りを保った日焼けだった。立派で張りのある胸と尻、濡れたような黒髪と漆黒の瞳を持ち、視線や雰囲気が潤んだように見えるので修行の足りない俺のような男は妙に居心地が悪くなる。自分より背が高い男が珍しいのか、それとも俺の顔が奇妙なのか、それとも癖なのか、じっと見つめて話す仕草がなお悪い、本当に落ち着かない。「19歳になった」と豊かな胸を張り、重ねて自己紹介していた。なんだろう、何かの呪文なんだろうか。


 それだけの者が集まり、情報を整理して、それで明確になったのは、里の周囲のことについて「あまりによく分かっていない」という事実だった。普通に生活する者は里を出る必要も時間も手段も無く、出る必要性があったとしても「隣の里」か「隣の隣」までなのだ。この素朴な半自給自足・物々交換の生活様式では、遠くに足を延ばす行為自体がとても重労働であり珍しい行為となる。よってそれを行うものは必然的に「流れ者」「漂泊者」と呼ばれる特異な文化と風習を持つ者か、訳ありの「罪人とがびと」に限られる。

 それゆえに、伝聞の伝聞による「北の方では大きなクニが建ち、周辺の里を…」というものとなったのだ。だから誰も北の国なぞ見た者はいない。


 こう考えると、エッダの服毒を見逃したのはやはり痛かった。

 奴は言っていた「儂が従えた四百の兵は先遣隊にすぎん、本国には千を超え、万の兵士も動員する用意があるのだ。もちろん猿人も、巨人たるヨトゥンも多数おる。お前の操るヨトゥンよりも強いヨトゥンがな!」

 奴の大言壮語を鵜呑みにする気はない。俺が薙ぎ払った兵の数は二百人ほどだったと記憶している、死体の処理もその程度だった。となると、四百人というのはヤツの見栄か、そうなると万の兵士というのも眉唾だ。しかし俺の見落としや、もしくは遠征で減っていた人数があったとしたらどうだろう? 捕虜を搬送したとも言っていた訳なのだから当初は四百人の兵がいたのかもしれない。


 とにかく気になるのは、果国の人口や装備、兵士の種類に充足度はどのようなものなのか、どの程度の準備期間で遠征に入るのか、その際のルートはどうなのか、とうものだ。可能ならば国の主導者や遠征指揮者の情報、国としての成り立ちや社会構成、技術力なども知りたい。そこに圧倒的な文化格差と技術格差があったなら、その対抗手段はあるだろうか?

 最悪なのは、この里周辺だけが穏やかで原始的な文化集落圏であり、果国が先進的な科学技術国であった場合だ。だがそれはまずないだろう、「鍛冶の里」を収奪していた兵士の服装はこの里の者とそれほどの差がなかった。素朴な麻、綿、革の衣類を身に着け、石や青銅を使った槍と斧を装備していただけだった。里から見て常識外と言えるのは、あの巨大な猿「猿人えんじん」の存在とそれを操る技術だけだ。それ以外は「組織力」というところだろうか。


 とにかく斥候として誰かが北へ向かわねばならないだろう。同時に周辺のまだ襲われていない里との協力体制、同盟の組み上げも必要だ。

 同盟については婆さんが助言で「社の女官1名と戦士1名を使者とし、交易のある里や集落に呼びかけるのが良かろう」と発言をしてくれ、人員の手配を約束してくれた。戦士メンバーはバルドルが仕切る。そして問題の斥候だが――。


「俺が行こう」


と口を同時に開いたのは俺とバルドルだった。


「おオマエが里を離れてどうするんだ」


 ふたたび同時の発言とため息で、車座になって座っていた一同にあきれた空気が漂った。俺は片手を上げてその空気を振り払うと言った。


「戦士の要であるお前が軽々しく動いてどうする、里で皆をまとめておいてくれ」


 一同から頷く仕草が返ってくる。


「守りの要になる継手が出張っていってどうするんだ」


 バルドルがそう発すると、なぜか再び一同が頷いた。いやそうじゃないだろ、俺は言った。


「今まで誰も行ったことのない場所に行くんだ、ここは世慣れた者が行くべきだ」

「オマエのドコが世慣れているんだ」


 なぜかイズナとヴァーリがすごく頷いてる。お前らに俺の何が分かっていると言うのだ。バルドルが好機を得たとばかりに言い続ける。


「だいたいオマエの図体じゃでかすぎて悪目立ちすぎるだろ、発言も行動もドコかおかしいし。敵国へ行くんだぞ、すぐに騒動を巻き起こしてとっ捕まるのがオチだ」

「しかし敵国の分析をするんだぞ? 知識と心得がない者では何を観察すべきかも曖昧じゃないのか。移動手段の問題もある。ヒトガタならば走破性は高いうえに、いざという時の戦闘もこなせる。機会があれば相手の軍勢の妨害も…」

「ひとりで全部やろうとするな!」


 突然にバルドルが大声を出した。俺を見ずに床を見て叫んでいた。彼の肩から湯気があがっているように見えた。ぴりぴりした空気が漂いバルドルが本気で怒っているのが感じられた。バルドルの顔がこちらに向いた。


「――オマエが、オマエが勝手にさっさと鍛冶の里に向かった後、社と里でどれだけ混乱が起きたか、誰もオマエに知らせてないんだろうな。でもな、大変だったんだよ。どいつもこいつも浮き足立ってな、心配する者も大勢いてな、正直やってられなかったんだよ」


 じっと俺を射抜く瞳に怒りがあった。


「オマエが行ったからこそ里の者は助かった、それは確かだろうな。人の背丈の2~3倍の猿だと? 確かに俺たちが行っても略奪をしている奴らから里の者を救うことは出来なかったろう」


 膝の上でぎゅっと拳をにぎりしめてバルドルは言葉を重ねた。


「それでも、オレたちはオマエだけで行ってほしくは無かったよ――」


 俺はそこで初めて「鍛冶の里」への派遣戦士団をバルドルが指揮していなかった事実の重さに気が付いた。

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