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海に降る雨  作者: 美斑 寧子
本編
94/152

94.ミリアムの生還

 目覚めの瞬間、まず初めにミリアムを襲ったのは『眩しさ』だった。次いで五感に強く強く訴えかけたのは『だるさ』。続いてなにか暖かく柔らかいものが自分の右手を握っているのを感じて、本能的に視線を向けた。

 そして、そこに大好きな親友、リンの微笑みを見つけてただただ嬉しくなって、すっかり安堵したのだった。

 なので、


「ミリアム?」


とリンに呼びかけられた時、しごく当たり前に、


『なあに?リン?』


と答えようとして、自分の声が喉の奥で、声にならないまま掠れた音として口からこぼれた時に、ようやく


(あれ……?)


と違和感を感じたのである。しかも自分は寝ているらしい。


(いつのまに……?さっきブランコに乗ったところだったはず……)


ミリアムはますます混乱した。ギラギラ光るなにかに向かおうとしたところを、妙ちきりんなモヤに妨害され、むりやり灰色のブランコに乗せられた所までは覚えているのだが、その後のことがまったく思い出せない。

 気付いたら、眩しい光の下、こうして寝転がらされ、体はだるく気分も良くないが、リンが手を握ってくれていた、と。そういう状況なのである。

 一方、そんな混乱中のミリアムを優しく見遣りながら、リンはナースコールのボタンを押した。すると、1分もしないうちに担当のナースが現れ、主治医が呼ばれ、ありとあらゆることがトントン拍子に進んだ。

 担当医であるドラグーン医師は、ミリアムの意識が戻り、そこになんの混濁もなくしっかりしているのを確認して、心の底からホッとした表情を見せた。


(これで俺の首も繋がったな)


そんな事を考えている。


「保護者のディスカストスさんは?」


聴診器を外しながら聞かれ、リンは一瞬本当の事(大酒を飲んで未だ起きないこと)を言うか言うまいか迷ったが、結局


「お疲れのご様子でしたので、まだお休みなんだと思います」


と言うに留めた。

 そして、病院のスタッフが一通りの処置を終え、ミリアムの病室を出る頃には、新たに点滴に加えられた鎮痛剤の効果もあって、ミリアムは再び微睡みの中に沈み、リンはそんなミリアムの寝顔を見ながら、アクセルと昨夜の出来事をぼんやりと思い返していたのだった。


少し短いですが、キリがよいので、今日はここまで。

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