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海に降る雨  作者: 美斑 寧子
本編
78/152

78.リンの手紙

拝啓 ディスカストス侯爵閣下


 こんばんは、閣下。私は今、ギースを離れる決意をしたところです。

 理由は、タブロイドに記事が載り、私のところにまで記者とカメラマンが押し掛けてきていて、早晩病院にもドクター・ヴァン・マーネンにも迷惑をかけることが想像できたから、です。


 幸い、色々な伝手を辿って新たな研修先を確保することができましたので、そちらであと1年程の期間、就業許可申請の為のサインをもらえるよう頑張りたいと思います。


 突然姿を消す、なんてことをして、閣下にはきっと多大な心配をおかけしている事と思います。本当にごめんなさい。


 でも、こうするのが一番良いと考えました。このままギースに居続けることも、ウィリアムズ・カレッジに戻ることも、ましてや閣下のところに身を寄せる事も、どう考えても私の選択肢の中には浮かびませんでした。

 きっと閣下は、私が今、どこにいるのか知りたいんじゃないかと思います。とても心配を掛けてしまっているでしょうね……。

 でも、居場所が分かったらきっと閣下は私に会いにいらっしゃるでしょう。そしてまたタブロイド紙が追っかけてきて。結局、同じ事の繰り返しになってしまうと思うと……どうしても居場所を連絡する気になれません。

 私も閣下に会いたい。でも、研修医生活が終わるまでの辛抱だと思って我慢しようと思います。

 一人前の医師になれるまであと一年弱。それだけあれば、きっと、私たちのゴシップも消えてしまうと思うし、閣下と私が別れたと思わせれば、私が閣下のお金で最後の申請書類のサインを買った、と言われずに済むでしょう。

 そうすれば、晴れて私たちは堂々と人前に出て、会ったり食事を共にしたりして楽しく過ごすことが出来るようになるに違いありません。そんな日が来るまで、今は研修医生活に集中し、新たな研修先で、サインをいただけるよう努力するつもりです。

 ですから、どうか閣下。私が今どこにいるのか、探さないでください。どこからどんなふうにタブロイド紙に知られてしまうかわかりませんから。


 直接お会いできないのはとても寂しいですが、今まで通り、メールのやりとりも写真のやりとりもできます。一年の辛抱だと思って我慢して、その分勉強に励みたいと思います。

 それでは、又、メールします。


愛を込めて。百万回のキスを送ります。


リン・バクスター

私事都合により、次回更新は3/30(土)0:00とさせていただきます。すみませんが、ご了承下さいませ~ m(-_-)m。

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