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海に降る雨  作者: 美斑 寧子
本編
71/152

71.アクセルの事情

きりの良い所で切ったので、今回少し短めです。悪しからず♪

その代わり、続きは明日アップします☆彡

 リンが無事ギースを脱出し、首都デリースへの夜行電車に乗った丁度その頃、アクセルはというと、お抱え運転手の運転する高級ラグジュアリーセダンの後部座席で、車の振動も手伝って、ぐっすり眠り込んでいた。

 というのも。

 実は、この3日間、ほとんどまともに寝ていないアクセルなのである。


*-*-*-*-*


 時は3日ほど前へと遡る。


 その日、いつものようにオフィスで忙殺されていたアクセルの所へ、グッドマンから緊急連絡が入った。

 間もなくアクセルのオフィスに入ってきたグッドマンは、珍しく、自分の後継者として、主に対外的な細々とした情報収集をやらせているジョン・マシューズを伴っていた。


「ジョン、報告を」


珍しく、冷たい表情をしたグッドマンに促されて、ジョンが気まずそうに言うには、今から3日後のタブロイドのトップ一面に、アクセルとリンの写真入り記事が載るという。


「……なんとしても止めなければ」


アクセルは一言だけ言った。眉間には深い皺が寄っている。頭の中は対応策のバリエーションがものすごい勢いで組み立てられている最中である。


「子飼いの記者には既に指示を出しましたが、今朝になって『どうにもできない』と泣き言を言ってきまして……申し訳ありません」


ジョンが蒼白な顔をして改めて頭を下げた。


「……こういった事情ですので、仕方がありません。お手間を取らせて恐縮ですが、あとは旦那様のネットワークを活用していただこう、と。そう考えた次第でございます」


グッドマンが無念そうにジョンの言葉を引き取って続けた。


 実はディスカストス侯爵家では、各タブロイド紙の編集部に出入りする、子飼いのフリーライターを抱えている。

 彼らは普段はごく普通に記者をやっているのだが、いざ、ディスカストス侯爵家についての記事が出るとの情報を得るとすぐに知らせるよう指示されているのである。いわば、プライベートなスパイのようなものだ。

 昔、先代のディスカストス侯爵夫妻が不慮の感染症で、二人揃って異国で儚くなった時、タブロイドは不幸で可愛らしく、多大な財産を相続した、アザリスで最も古い貴族の血族の末裔である2人の遺児をこぞって標的にしたのである。そして、国中の物見高い人々を満足させる為の『可哀想な貴族のみなしごたち』というステレオタイプなイメージを売る為に、過剰な取材合戦が幕を開けた。その結果、アクセルとミリアムの生活は、混乱と怒号、そして、神経をすり減らす追いかけっこの渦中へと放り込まれてしまったのだった。

 当時、ディスカストス兄妹(きょうだい)には、どこに行くにもパパラッチがついてまわり、何をしても、どぎついキャプションといい加減な推測と共に、紙面に載せられた。それは間違いなく興味本位の『同情』記事だった。一般階級の人々の中にある、貴族階級に属する人間に対する、燻る嫉妬を源にした一大ブームだったのである。家人に守られながらも続いたそんな日々のせいで、アクセルもミリアムもすっかり衰弱しきってしまった。

 そんな二人の状況を何とかしようと、当時ディスカストス侯爵家で働き始めたばかりだったジョン・マシューズをはじめとする何人かの家人とグッドマンが今の体制の基礎を作り上げ、無神経なマスコミから大切なディスカストス侯爵が残した後継者達を守ったのだった。

 それ以来、ジョン・マシューズは本業であるディスカストス侯爵家所有の屋敷管理の他に、こうしたプライベートのマスコミ対策の担当として働いてきた。

 特に、アクセルとリンの気持ちが通い合い、アクセルが頻繁にギースに通うようになったこの1年あまりは、ジョン・マシューズにとっていまだかつて無い、試練の日々だった。つまりは、それくらいタブロイド紙の動静を鋭く見張りながら、ほんの些細なサインも見逃さないよう、子飼いのライター達との連絡を密にしていたのだ。まさに、土日も祝日も祭日も関係のない日々であり、どんなときでも子飼いのライターから情報が入れば、元から金品を渡している他の複数のライター達を総動員して更なる情報を収集し、何らかの手段でもって、記事の掲載を阻止してきたのだった。


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