3月〇日 デートにて その③
理、壊れます。高橋、なんかわからない何かに気づきそうになったりならなかったり。デート編、長くなってすいません。一応〆ですww
(やばい!!それはだめだ!!)
理から少し離れたところでついさっき不審者としてつれていかれた高橋がその様子を眺めていた。この男、「友達の初デートが心配で……」みたいなことを言った後、単なるデートを涙ちょちょぎれるラブストーリーに捏造した挙句、警備員の公式な許可を得て堂々とストーキングに勤しんでいるわけだ。高橋、最低。
「……なんだろう?今ものすごく誰かに非難された気が……」
※高橋には作者の声は聞こえません。
「……っとそれよりも、理!!」
高橋の視線の先には、持っていた服を元の場所に置いてきたヒカリの姿があった。
「……え?」
理の間の抜けた声がする。
「だから、やっぱり買うのやめるって言ったの。よく見たらお金ちょっと足んなかったし……理くん?」
がっくりと地面にうなだれる理。
あれだけ悩んで買わなかったのだ、そりゃ……いや、よく考えなくても勝手に悩んでたのは理で、ヒカリはそこまででもなかった。
理、お前の負けだ。
「僕の……葛藤は……一体……」
しかしそんな理の独り言など気にせず、ヒカリは歩き出す。理も反論する気も起きずトボトボとついて行った。……ストーカーも約一名。
お店から出たとき警備員の人が理にやたら優しかったのは気のせいではないだろう。
初デートということもあり、緊張からかヒカリも少し疲れていたようで、近くの喫茶店に理を誘って入る。高橋もそのあと店に入り、離れた席に座った。
「いらっしゃいませ!ご注文はお決まりですか?」
店員が尋ねる。
その瞬間理は再び高橋との特訓を思い出す。
「いいか理!喫茶店ではメニューなんか見ずにぱっと頼むことでちょっとかっこよく見えるんだよ」
「ほう」
「特にカタカナのやつなんてすらすら注文できたらかっこいいぜ!?」
「たとえば?」
「それはな……」
理の目が見開かれる。
「キャラメルマキアートください!!!」
あまりの大声で店員はおろか高橋を含む客全員が飲んでいたものを噴き出したりこぼしたりしていた。しかしその原因を作った本人はものすごく満足そうだった。
「アホか!何でそんなでかい声出すんだよ怪しいだろが!」
……高橋よ、警備員に連れて行かれた挙句騙して逃げたやつが言える台詞じゃないだろうストーカー予備校卒業生め。
「……なんか誰かにものすごく不本意な呼び方をされたような……」
※高橋には作者の声は聞こえません。聞こえませんったら。
隣にいたヒカリも唖然としていたがすぐに自分の注文をする。
「私はフェラペチーノください」
「フェラペチーノ!!?」
理が素っ頓狂な声をあげる。
(いやいやいや落ち着け僕!!ヒカリちゃんだぞ!?地上に舞い降りた天使ともいえるほど清楚なヒカリちゃんだぞ!?そんな彼女が下ネタなんていうわけがない!!しかもこんな公衆の面前で!!そうだ、きっとこれは聞き間違いなんだ!!そうだ、そうにちがいない!!くそ!!こんなときに作者に地の文任せていなければ読者の皆さんに下ネタかどうかを聞くのに!!)
面白そうなので作者は教えません。
いやー、馬鹿ですね(笑)
「え!?あ、理くんも飲みたかった?」
「飲むぅ!!?」
(え、何これ!?誘ってんの!?イヤ、もしかしたらのみものかもしんないし!!え、でも誘ってるならチャンスだし!!)
「は、はいっ!!飲みます!!」
その後テーブルに運ばれてきた飲み物がフェラペチーノの正体だと知った瞬間理は気が抜けたように力なくうなだれてしまい、その後のデートは理の具合を心配したヒカリが諦めて、後日改めてデートをする約束をすることで解散となった。
ヒカリを見送った理の隣にいつの間にか高橋が立っていた。
「高橋……」
「言うな理。また今度卍解……じゃなくて、挽回できるさ。」
夕日をバックに理はリベンジを固く誓ったのだった。
だんだん高橋に私の存在が気づかれるんじゃないかとびくびくしております。
高橋「なんか俺のことを誰かかしゃべっているような……」
理「き、気のせいじゃないか!?」