■4話■
「ホビット族の村へようこそ魔王様。私が村長のバグジードです」
「うむ。お前たちはわらわと敵対せぬものどもか?」
「もちろんでございます。300年前に現れた魔王様にはよくしていただいたと聞いています。
我々が力になれる事でございましたら、なんなりとお申し付けください」
「良い心がけじゃ、ではまず我らに食事を用意いたせ」
「はは、畏まりました」
そうして急遽ホビットの村で宴会が開かれることになった。
食器はホビットに合わせて小さいサイズだったが、その分、山盛りに載せて振舞ってくれた。
「でもよくフレアを魔王と見破ったな」
「ええ、この地域では有名ですので。フレア様の容姿は」
「フレアが有名?」
「はい。申し上げにくいのですが、我々もほんの少しですが人間と交流がございまして、
森で取れない食糧や道具を手に入れるために近くの村で物々交換しているのでございます。
それで、いろいろと噂を聞きまして」
「なるほど。まぁ、わらわと敵対しないのであれば構わぬ」
「そこで聞いた話によりますと、短い青色の髪に羊のような巻き角、
漆黒のローブに身を包んだかわいい少女の姿に化けた魔王は
若い男をたぶらかして精をすべて抜き乾物にして食うという話です」
「な、なんじゃその後半は」
「フレアはサキュバスだったのか。
俺も是非誑かしてくれ」
「やるか!それに化けるとはなんじゃ。この姿が正真正銘のわらわの正体じゃ」
「ええっ?!そうだったのでございますか?わたくしもてっきりその御姿は仮の姿だと。
本物は威厳の方だと」
「それはつまりわらわに威厳がないと申すのか?」
「めっそうもございません。ただ、かわいらしいと」
「それ以上申すな。わらわとて、好きでこの姿になったわけではない。
わらわが世界に顕現した時にあるべき陰の気が人間どもの手によって清浄化されておったのじゃ」
「それはひょっとして、前の魔王様がお創りになられた、迷宮をアベル王が閉鎖した関係ですか?」
「ふむ、この辺を統治しているのはアベル王と言うのか。
そうじゃ、迷宮こそ我ら魔に属する者達がこの世界を征服するための補給基地なのじゃ。
それなのに、尽く潰し追って。放っておけば陰の力で人間達にとっても貴重なアイテムが
勝手に生成されるのに。完全に潰すことは無いじゃろう」
「そういえば、最近この村によった人間の冒険者も似たようなことを言っておりました」
「そうであろう?迷宮は欲望と命の対価に富と栄光を与えるのじゃ。それでその冒険者とやらはどうしたのじゃ?」
「えーたしか、東のスダドカ国は無数の迷宮があるから、そっちへ行くと」
「なんと!そうか、全ての迷宮を潰したのはアベル王の統治するこの付近だけということか。
ならばわらわたちもそこへ向かうぞ。そこで力を蓄え捲土重来をはかるとしよう」
「それでしたら、わが村にもスダドカへの道に詳しい者がおります、その者を魔王様のお供にお付けしましょう」
「うむ、そなたの心遣い痛みいる。わらわが力を取り戻した暁にはそなたらを重く用いるであろう」
「ははっ」
そう言って村長は席をはずし、しばらくして2人のホビットを連れてきた。
「フレア、右の子にしてくれ!」
栗色の髪のかわいらしい少女だった。