■29話■
「ところで、普通の魔法っていうの覚えたいんだけど」
「いきなり唐突ですねぇ」
「いや、だってやることないし、倉庫から借りてきた本も字が読めないし」
本棚を配置して、本を片っ端から持ってきたのはロリコーンなのだが、どれ一つ読めないでいた。
「あ、それでしたら私が教えてあげましょう!」
「ふむ、それもよいのじゃが、その前に魔法を覚えたほうがいいのう」
フレアも食いついてきた。
「そういえば、ロリコーンさんの魔法ってあれ両方ともオリジナルなんですよね?」
「そうじゃ、じゃがロリコーンの創った魔法は2つともどこか偏っているというか、使いどころの難しい魔法じゃったな」
「うーん、たしかにもう少し汎用性のある魔法を作るべきだったのかもしれないけど、そもそもその魔法を使った時点では創ったつもりは無かったし、なんというかフィーリングだったんで」
「ふむ、そういうものじゃ。じゃから、ノーヒントでおぬしに魔法を使うように促したのじゃな。
普通の魔法を教えるようなゆとりはあの時にはなかったからのう。
あの状況でなら危機を回避する魔法ができるかもと思ったのじゃ。
実際、それっぽい魔法になったからのう」
「でも、オリジナルが創れるってやっぱりすごいですね!そんなことができるなら、財宝出す魔法とか創れたりするんですか?」
「理屈では創れるじゃろう。じゃがまぁ無理じゃな。フィーリングに沿わないと魔法を創造するときに消費する魔力は尋常じゃなく上がって行く。そうじゃな、例えば凄まじい魔力を持っていることを大前提として、財宝に価値を見出しつつも取るに足らない物で好きなだけ手に入ると心底思っていれば創れるかもしれない」
「とるにたらない?」
「ふむ、つまり魔法で簡単に出すことが心のどこかで無理だろうなと感じてしまえば、その思いがそのまま無茶な魔力を要求する魔法になってしまうのじゃ。逆に大した事ないと思えば必要な魔力も大した事ないものになる。それでも大した事あるじゃろうが」
「財宝はともかく、美少女や美幼女を出す魔法はできないのか?」
「生物を創造するのは魔力だけではなく、生物に関する相当な知識が必要じゃぞ。人間の寿命では無理じゃろうな」
「まぁ、いいか、いまはフレアがいるし。予備にペルシーもいるしな」
「もう少し、歯に衣着せた言い方できないんですか?」
「わらわはおぬしのめかけか?まぁ、気にせぬ」
ふうとフレアは一息ついた。
「話を戻そうかのう。普通に存在する魔法、つまりコモン魔法をおぬしに教えようと思う」
「そうだった、それを覚えたかったんだ。なんかエロイやつ教えてくれ!!」
「そんなものは知らん。わらわが教えることのできる魔法は、わらわが使える3種類の攻撃魔法だけじゃ」
「生まれるときに必要なキャパシティをほとんど知識につぎ込んだって言ってたのに3つも使えるのか?」
「たったの3つじゃ。それも人間の魔法使いでも知っている者は多いような、な」
「ほうほう。それはどんな?」
「火炎系、氷結系、電撃系の魔法じゃな」
「おー、基本的な魔法っぽい!もっと詳しく」
「火炎系は、ファイアライン。弱い人間なら1撃で焼き殺せるのう。じゃが詠唱に時間がかかる。役立たせるには連携が不可欠じゃのう。消費MPは3じゃ」
「えー、人間殺せるぐらい強いのにそんなに消費MP少ないの?」
「弱い人間じゃ。ここへ来る途中でアベル国の兵士に使ったときはほとんどダメージを与えられなかったのう。まぁ、それはそやつが精鋭だったからじゃと思うが」
「氷結系は、アイスライン。すぐに発動できるが、せいぜい足止めが出来る程度じゃ。まぁ、使い方によっては便利じゃろうな。消費MPは4じゃ」
「私の村にも使い手が居ましたよ!動物の足を狙って動きを止めるのにすごく便利なんですよ!」
「魔法を使う相手にはあまり意味がない事がおおいが、魔法を使わない戦士みたいな相手なら距離をとったりするのに使うのう。何気に便利じゃ。
最後は、電撃系でサンダーライン。一直線上の敵に対して一度にダメージを与えられるのう、大した威力ではないが数秒怯ませることもできる。ダメージよりもこちらがメインじゃろうな。一直線上といえども広範囲に効果があるから、複数相手にするのに便利じゃのう。消費MPは5じゃ」
「どれも使い勝手よさそうだなぁ。MP消費量も少ないし」
「まぁ、おぬしほどMPがあり余っておればそう思うであろうな、わらわもこんな状況でなければそう思ったであろう」
「よし、とりあえずファイアラインを覚えたい」
一端書きためます。