■27話■
「うおっ?!なんじゃこれは」
「あ、おかえりなさい魔王様」
「おかえりー。どうだ、フレア用の魔王の玉座だ」
「その椅子はわらわのか?」
「そうだぞ、座ってみろ」
そう言われて、過剰装飾気味の背の高い椅子にフレアは腰かけた。
「ふむ。なかなかよ…」
「似合わないな」
「大きさがあっていませんね。椅子が大きいから魔王様が余計小さく見えます」
「本当の魔王ならそれなりだったと思うんだけどな」
「し、しかたないであろう?好んでこのような姿になったわけではない。
しかし、わらわはこの椅子は気に行ったぞ。たいぎであったな」
「まぁ、フレアが気にいったんならいいか」
「あ、魔王様寝室も出来たんですよ、今はカーテンを掛けて区切ってますが、そのうち扉を作って貰う予定です」
「ほう?どこじゃ?」
そういって、フレアは外へ出ようとする。
「フレアーそっちじゃない。こっちだ」
ロリコーンはそう言ってフレアを引きとめ、ペルシーはかかっていたカーテンを端にまとめる。
「む、そんな通路あったかのう?」
「ロリコーンさんが新しく作ったんですよ」
フレアもやはり、その部屋を見ていくらか驚いていた。
「こんな短時間でこのような空間をどうやって作ったのじゃ?石やら土もまったく見当たらんしのう」
「ダンジョン作成キットで造ったんですよ!ロリコーンさんの魔力で」
「な、なんと。あのダンジョン作成キットか。あれは、アイテムのグレードで神器に属するものじゃ。そうそうそこらへんにある物でもないのじゃがのう」
その時、扉をたたく音がした。
「入ってよいぞ」
「失礼します魔王さま」
そう言うと、ガンゼルが入ってきた。
「息子達が新しいフロアが出来たというので、見学に来ましただ。おー、なかなかさまになっていますだな。まさに魔王の間といった感じですだ。
それで、そっちが新しいフロアですだな」
そしてガンゼルはしばらく新しく出来た部屋を眺めた。
「この大きさを何も掘らないでいきなり造ったんですだか、さすがに魔王様の配下といったところだなあ」
「ほう、となるとかなりの魔力を消費したであろうな。これだけの質量を消したとなるとそれ相応の魔力が必要となる。さすがにわらわが召喚し転生させただけのことはある」
そういって、転生までの顛末を思い出しかけたがそのまま止まった。
「ところで、ダンジョン製作キットを使ったと聞いたが、ガンゼル、それをどうやって手に入れたのじゃ?」
「はい、ダンジョン協会でポイントをためて、そのポイントと交換してもらいました」
「なに?!すると、死神のセドリックからか?」
「ええ、結構ポイント貯まってまして。生活空間を少し広げようかと」
「ん?この迷宮もそれで造ったんじゃないのか?」
ふと疑問に思った事をロリコーンは尋ねてみた。
「我々が造れるはずありませんよ。ある程度の建築はできますが。
この迷宮は、大昔の魔王様に頂いたものです」
「なるほど、それでフレアに友好的なのか」
「それで、ダンジョン製作キットって結構手に入る物なのか?」
「ええ、適当に魂を治めていれば、わりとすぐ溜まる程度のポイントです」
「もしよければなのじゃが、わらわ達がここを出るときにしばらくそれを貸してくれぬかのう?」
「ええ、かまいませんよ。どうせ私たちは使えるほどの魔力はありませんし、使うときには魔力を持った人を呼ばなければなりません。そして、しばらく迷宮を拡張する予定はありませんから」
「ほ、たすかる」
「もしかして、これで迷宮造るのか?」
「うむ、といってももう少し魔力を貯めて魔力容量を延ばさんと大して使えぬであろうがな」
「ところで、その魔力容量って魔力を貯めると増えるのか?」
「魔力容量ってさっきの最大MPのことですよね?」
「ふむ。普通の生き物は伸びぬ。
しかし、わらわは魔王じゃからのう。魔力さえあれば、それを本来あるべき姿へと変換することができるのじゃ」
「具体的にはどうすれば?」
「ふむ、まず最大MPまでMPが自然回復したらそのまま魔力を消費せず放っておく。そそうすればそのまま最大MPが徐々に増えるじゃろう」
「いま、どれぐらいなんだ?」
「ここは居心地がよいし、ずっと満タンじゃな。いまは最大MPも小さいからのう。すこしずつ最大MPは増えておるよ」
それを聞くと、ささっとペルシーが例の石版をフレアに渡した。ペルシーはフレアのMPも気になるらしかった。
「どれどれ…」
[・/56/56]と表示されていた。
「「しょぼっ!」」