■25話■
「見た目には分かりませんねぇ」
「こうやるとマーキングできるよ」
そうしてレンセルが操作すると、壁面に長方形の墨が入った。
「んじゃあさっそく、この線に合わせて出入り口と寝室を作るか」
「わーい!やっとですね。今のじゃ見た目にはほとんど元と違いがなかったですから、ピンときませんでしたが、次はちょっとドキドキしますよ!」
「この部屋と同じぐらいでいいかな?」
「そうですね、とりあえず」
「よーし、じゃやってみるかな」
メニュー画面まで戻り、部屋の作成画面に切り替える。
まず指先で4か所ぽちっと触れ、平面の四角形描く。それをさっきの墨だししたドア予定地にリンクさせ僅かに内側に縮小させた。その四角形を図形ごと僅かにスライドさせる。
そうすることで、出入り口の設計図ができあがった。
向こう側の面と同じ奥行きにこの部屋と同じ面積の四角形を描き、さっきと同じ要領でスライドさせた。そのスライドした距離に比例して左下に表示される消費MPはみるみる内に増加していく。
「ものすごいMP消費量です」
画面を下からのぞいていたレンセルがうなった。
「消費MP312…。たしか前に来てくれたダークエルフのお姉ちゃんでも最大MP120って言ってたっけ」
「えー、でもレンセルさんの部屋ってそんなに小さいんですか?」
「んーん、ここと同じぐらいだよ。ある程度スコップとつるはしで空間を確保しておいたんです。
設計した空間とその予定地がかけ離れているほど消費するMPが増大するんだって」
「えー、じゃあ結局予め掘らないとだめなんですねぇ。すごく便利なアイテムだと思いましたが、世の中甘くありませんねぇ」
しかし、ロリコーンはそのまま実行した。
ロリコーンは魔力が一気に消耗し、その奔流が作成キットを媒介し魔法となって放射されるのを感じた。
強力な魔法の波動を一行は感じた。近くから徐々に石や土が光の粉になり消失していき、闇で先が見えない部屋が出来たかと思えば、フッと明りが灯り、新しい部屋が出現した。
「うわあ!すごーい!!部屋が一瞬でできた!!しかも壁になんか彫刻が入っててカッコイイし、明りがついてる。どうなってるんですかあれ?」
ペルシーがその光景に感動し、次いでロリコーンに捲し立てた。
レンセルは感嘆を漏らした。
「さすが魔王さまの配下です!ロリコーン兄ちゃんの魔力すごい!!」
「そ、そうかな?あ、そういえば、この明りのギミックかってに付けたけどよかったのか?」
「はい!それぐらいなら問題ありません。あとから取り付けるのは面倒だったんで、むしろ付けておいて助かりました。言うの忘れていました。すみません」
「ああ、断らずかってに実行したからね。こっちこそ」
「それにしてもダンジョン製作キットってすごいアイテムですねぇ」
「たしかにすごいですけど、このアイテムは魔法のスペルのようなものって聞きました。呪文を唱えたり魔法陣を書いたりする代わりにこのアイテムで設計しますから、顕現するものは全て使用者の力だそうです。理論上はこのアイテムがなくても同じ事が出来るとダークエルフのおねえさんは言ってましたよ」
「たしかに、魔法を使った時と同じ感覚がしたな。このアイテムに魔力を吸い取られるというよりは、自分で魔法を発動したような感じがした」
「うへぇ、ロリコーンさん、ロリコンですけどすごいんですね」
「そういえば、このアイテムでもMPがどれぐらいあるのか調べられるよ?」
「おー、マジですか。私の調べてみたいです!どうやるんですか?」
「設定画面まで戻ってオプションアイコンをイメージします」
設定画面に新しいアイコンが現れた。