■20話■
階段を下りた先はそのまま大理石が埋め込まれた通路になっており、オークが2人楽にすれ違える程度の幅で、地面に埋まるタイルのいくつかが緑色に光る光源になっていた。
強い臭気が漂っているが地下9階で覆う瘴気のように漂う匂いよりはずいぶんましだった。
「さっきに比べたらだいぶましです」
「まぁ、そのうちなれるだろう」
「それより、ここにはどういう施設があるのじゃ?9階はオークの生活する空間であろうが、ここはあまり生活感が漂ってこぬからのう」
「ここはコア、この迷宮を維持する魔法回路の中心部です。迷宮に発生する陰の気を集めて魔力に変換してアイテムを精製したり、罠や光源の動力にしています」
あと、といって階段のガンゼルは元来た階段を方に視線を向ける。
「我々の生活環境を整えたりします」
「陰の気ってそんなことができるのか!」
「陰の気は歪みじゃ、魔法とは世界の理を曲げることで行っておる。ならば、陰の気は、術者のいない魔法なのじゃ。術者の意思によって顕現された魔法は洗練されすぎて魔力を取り出すのはむずかしい、短い時間で効果を発揮してしまうからのう。じゃが、陰の気は混沌としており迷宮内であればその場でとどまり続ける、魔力への変換も魔法のような発動までの刹那にする必要はないから、大して高度な細工が必要ということはない」
「魔王様の仰るとおりです。もしよければ魔力に変換する部屋にご案内しますが」
「そうじゃのう、知識としてはあるのじゃが、この目でも見てみたいのう」
「わかりました。では」
そういって、通路の奥へ一行を促す。
9階と違いどの部屋も扉で区切られている。そして、どん詰まりから階段までの中央付近にある扉の前でとまると、何か呪文を唱えた。
「こちらです」