■17話■
「ほう、なかなか邪悪な気配が漂っておるな。魔力がいいぐあいに染み込んで気おる」
「おほめ頂き光栄でございますだ。この辺まで来る人間はあまりおりませんが、それなりに強い者どもですから、その死は良い陰の気をもたらしてくれますだ。そこそこ強い魔物も快適に過ごしていますだよ」
「ここの魔物どもはガンゼルの配下なのか?」
「配下は2割程度でございますだ。あとは適当に住みついたり繁殖したやつらでごぜえます。ですが、だいたいはわしの顔を知っているから襲ったりはしませんですだ」
辺りはあまり見通しは良くなく、所々が僅かに発光し近くにいけばかろうじて地形の様子が伺える程度の明るさだった。フレアは炎系の明かりを出す魔法を唱えて、オークは懐からランタンをとりだした。
天井も横幅もかなりせまい道をグネグネ進むと、時折大きな空間にでそこにはそこそこ強そうな魔物が何匹かじゃれついているのが見え、フレア達がそこへ入り込むと鋭い眼光を飛ばしてきたが、ガンゼルを視界にとらえるとすぐに大人しくなりまたじゃれあい始めた。
そういう1種族の縄張りのようなフロアをいくつか抜けると、唐突に悲鳴が轟いた。
「ここまで来れた人間がおったようですだ。よければ見学しにいきますだか?」
「面白そうじゃのう、ちょっと見てみようぞ」
そう言って少し来た道を戻り悲鳴のした方へ進んだ。
「ん、あいつもしかして」
「あれって冒険者のビッグさんじゃないですか?」
ロリコーンとペルシーはその人間がここに来る途中までいっしょだった冒険者のビッグだと気付いた。
「あ、あんたらか、俺はもう助からん、あんたらもあいつに見つかる前にすぐに引き返せ!!」
すでに下半身を食われ虫の息だったビッグだが、フレア達の存在に気付いた。
「くそっ、こんなところにこんな強いやつが…前来た時はこんな奴いなかったのに、ぐああああ」
そういってビッグは胸元まで齧られて絶命した。
「あ、ガンゼルさん。こんにちわー」
ビッグを飲み込んだ魔物は気さくに話しかけてきた。
「こやつはガイゼルの配下なのか?」
「ええ、そうですだ。普段は地下7階ぐらいに住処があるだが、腹が減るとここまで登ってくるんですだ。ハイドラのペプリープスだ。ペプリープス、こちら魔王様だで」
「ま、魔王様!これはこれは。このようなむさくるしいところへ御出で下さいまして。
何もないところですが、ごゆっくりおくつろぎください」
「うむ。くるしゅうない」
「魔王の威光って相変わらずすごいな」
「当然じゃ、しかしこやつの場合は、この迷宮の管理が行きとどいておるからじゃろうな。魔物なぞ本来は力が全てじゃ、今のわらわじゃ従わぬ者もおおいじゃろう」
「ところであの光は?」
「あれはあやつの魂じゃ」
「魂って目に見えるものなのか?」
「瘴気の濃いところでは見えるようになるのう。ここの地下2階程度じゃ多分見えないじゃろうな」
「へぇ、この魂は何処へいくんだ?」
「グリムリーパーがやっとるダンジョン協会の所ですだ」